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物語12
しおりを挟む朝に、散歩に出かけた。早速大田さんに会い、ポチに事を相談してみた。
「ウチのポチは最近劇が無くて、とても心配しているんです」と言うと
「犬も人間と同じくデリケートな動物だから、早めに医者に見せた方が良いけど。保険がきかないから治療費は高いよね。そうだ僕の大学の後輩で新庄進という医学部の学生が居るから相談してみよう」と言うことで次の休日に、その友達の所にお邪魔することにした。
友達はまだ就職をしていなく、大学院に進み、薬学の方を研究しているそうだ。
大田さんが進んで大学の研究室に入り、私とポチは後から続いた。
「よう、久しぶりだな」と新庄さんが言うと。大田さんも挨拶し、続いてすぐポチに事を相談してくれた。
新庄さんは私からポチの症状を聞くと
「うーん?俺は人間の薬学だから、詳しい事は解らないけど、たぶんてんかんかも知れない」と言われとても驚いた。てんかんという病気は人間なら知っていたが犬でも掛かるんだと言われるととても驚いた。
「で、どう治療すれば良いんですか?」私は驚いて聞いてみた。
「僕は医者じゃ無いから、はっきりしたことは言えないけど、専門的検査を受け、ちゃんと治療すれば回復します。ただはっきり言って、相当お金借りますよ」
私絶句してしまった。ウチには預金など無い。その時大田さんが言った。
「金賭けなくても快復出来るんではないか?」
「気長に治療する方法はあるよ。重積発作や群発発作の場合を除いてはてんかん発作で死に至ることはなく、治療すれば完治はしませんが改善される病気なので、飼い主は長い目でてんかん発作とうまく付き合っていくことが大切です。その場合いろいろ諸注意があるので、やはり一度医師の診断を受け、在宅で治療法を検討した方が良いですね。でも人間のてんかんのように、口の中に物を詰めてはいけませんよ」
私はもう近くの動物病院行くことにした。大田さんにも礼を言いその研究所を後にしたが、すぐ大田さんが追いかけてきて薬を持ってきて、私をねぎらってくれた。
「大丈夫だよ、新庄も言っていたけど、死ぬことは無いって言っていたじゃ無いか。元気を出して。この薬は人間用なんだけど、犬でも効くそうだし分量も調節してあるそうだ」と慰めてくれたが、私はいつの間にか目から涙が溢れていた。
「泣かないで、ポチは絶対に良くなるから」とそれからも大田さんは慰めてくれ、ポチと私を家まで送ってくれた。
私はすぐ家に入り、大田さんに手伝って貰い、薬を飲ませ適当な大きさの段ボール箱を用意して、そこに毛布にくるんでそこに寝かせた。ポチはそのまま動かなく寝たようだった。
「有り難うあなたのお陰でポチを少し休ませてから、病院に連れて行くわ」と礼を言うと
「動物病院ならマル子のかかりつけの先生が親切だし、優秀な先生だからそこが良いよ、ここからも近いし」と掛かり付けの病院を紹介してくれた。
「うん、明日にでも行ってみるわ。今日は有り難う、今お茶入れるから飲んでいって」と大田さんを茶の間の招きお茶を入れたが、あたしはポチがとても心配だった。
「でも明日って君バイトじゃなかったの?」と言われ、一瞬にして現実に引き戻された。あたしが行かなければ店は遣っていけない。どうしよう?どうしよう?どうしよう?とても困った。
すると大田さんが「僕は明日休みだから、君の代わりにポチを病院に連れて行って上げるよ」と言ってくれた。でもまだ散歩で少しだけ顔見知りに成った人に、そんな心配を賭けて申し訳ないと思った。
「いえ、そこまで心配して貰うのはご迷惑ですから」と言った物の他に方法はない。
「だって君、君が居ないと店が大変でしょ。僕は明日暇だし、マル子も一緒ならポチも元気になるよ」と言って呉れた。
大変ご迷惑をかけると思ったが、大田さんの申し出を受けなければ成らなかった。
朝8時に大田さんにポチを預け、「すみません、よろしくお願いいたします。」と挨拶をして病院へ送り出した。
あたしはその足ですぐ、バイト先に行ったが一日中ポチが心配で、店でもミスの連続だった。
周りの後輩が心配して
「先輩何か心配事でもあるんですか」と聞かれたが、まさかペットが病気だなんて言えない、とにかく必死で働き、時間になるとすぐ家に飛んで帰った。
玄関を入ると、部屋にはポチが箱の中で寝ていた。
私が帰ったのが解るようで、頭を持ち上げてしっぽを振っている。
「ポチ今日病院はどうだったの?」と声をかけた時に電話が鳴った。
「もしもし、横井ですが?」大田さんからの電話だった。
「良かった、帰っているころかと思って電話したんだ」
「それでお医者さんはなんと言っていましたか?」
「それがどうも複数の病気を併発しているようで、すぐには良くならないらしい。とにかく一つ一つ治療をしようということになり。当面ストレスを軽減させようと、テーブルの上に薬を置いておいたから、エサと混ぜて食べさせるようにと言われた。少し時間は掛かるけど良くなると言っていたよ」私はそれを聞いてそっと胸をなで下ろした。
テーブルの上には薬の袋と領収書が置かれて合った。
「それでこの薬はどのようにして上げれば良いんですか?」
「ポチの食事は日に二回?」
「うん、朝と晩です。足らない時は昼でも上げるけど」
「その朝と晩にエサに混ぜて上げれば良いそうだよ。そうするとすぐに少し元気になるから、散歩をさせると良いらしい。また朝会えるね」私はそのことを聞いて涙が出るくらい嬉しかった。
「でも有り難う、あなたのお陰で助かったわ、そうだ治療費は?」あたしはポチに具合のことで気を取られ、治療費に事を忘れていた。
「そのテーブルに領主書を置いておいたけど、少し高いので分割で払って貰っても良いよ。それに来週にはまた病院に行かなければならないし。治療費もバカに出来ないよ」
領主書を見てびっくりした。治療と薬代で二八三五〇円と書いてあった。とてもすぐには払えない。でも他人の大田さんに借りておく訳にも行かず、サラ金にでもと思った。その時電話で「治療費と薬代が高いからって、サラ金なんかに手を出したらダメだよ」と念を押された。
「でもそれではあなたに悪いわ」
「俺は別に使い道のない金だし、君にあげると言う訳でもないさ、貸しておくだけ、いずれはきちんと帰して貰うからね」私は大田さんの気持ちに甘える以外方法がなかった。
きちんと礼を言い「じゃあポチの具合を見ていけたらまた公園で、あーお金はお給与日まで待って下さい。すみません」なんだか大田さんに申し訳ない気がした。
今度合ったら、きちんとお礼をしなければならない。
そして大田さんの犬を可愛がる気持ちが、私と同じだと思った。きっとマル子ちゃんも幸せなんだろう。
えー自殺?
翌朝また散歩に出た。ポチの具合は昨日の薬のお陰か、少し元気になり、歩くことが出来た。いつものような力はないが、ちゃんと自分で歩き、あたしを引っ張る。
今日も良い天気だ、公園のベンチに腰掛けて、日の光に目を細めている人が居た。
ポチが急に吠えだしたかと思ったら、急に私を勢い良く引っ張る。私はどうしたのかと思いポチの後について走った
「ポチ、どうしたの?なんでそんなに早く走るの?」そう言っている走っていたら、見てしまった。
ベンチに腰掛けているのでは無く、ベンチの背もたれの後ろ側に、人が倒れていた。(えー?病人?)でも時間はまだ早く、朝の水元公園の風は冷たい。そんなところで寝ている人など、居ないはず。
(え?自殺者)水元公園は、知る人ぞ知る自殺の名所だ。私はその光景に驚き、何も出来ずに佇んでしまった。
ポチは人を呼ぶように、大きく吠えて居いる。その時
「どうしたの?」と太田さんが声を掛けてくれた。あたしは太田さんの顔と倒れている人を、交互に見て話しも出来無かった。それだけ驚いてただ何も出来ず、佇んでしまっていた。
太田さんは倒れている人の側に駆け寄り、声を掛けたり身体を揺すっていたが、その人は動かない。
すぐ携帯で一一〇番し
「水元公園で人が倒れています。すぐ救急車をお願いします」太田さんの行動はテキパキとし、倒れていた人を続けて介抱した。私に向かい
「大丈夫まだ生きている。すぐ救急車が来るから、安心して」と私を安心させようとして声を掛けてくれた。
まもなくパトカーと救急車が来て、救急隊員がその人に応急手当をし「大丈夫です、まだ生きている。だから心配は入りません」と言ってその人を運んでいった。
私と太田さんは警官に事情を聞かれたが、私はまだとても怖くガクガクと震えていた。
おまわりさんが
「あの人はどういう状況で発見されたんですか?」と聞かれたが頭が混乱して上手く答えられない。
「あ、あの、さ、散歩中に・・・」私はとても怖く振るえていたので、声が出せない。その時太田さんが
「大丈夫だよ、もう病院に行ったから」と優しく言ってくれた。少し安心して、続けて言えた。
「ポチが鳴いて走って行ったんです。あたしは吊られて行ったら、ベンチに後ろ側に人が寝ていたように見えたのですが?」やっとそれだけ言えた。太田さんは
「ポチが吠える声が聞こえました。いつもあんなに吠えないのに、吠える声が人を呼んで居るように聞こえたので、家の子と一緒に駆け寄ったら、あの人が倒れていたので、まず声かけしました。でも反応が無いので脈を取ったら脈は有ったので、すぐ警察に電話しました」これで警察も私と太田さの連絡先をメモし帰って行った。
「横井さん、驚いちゃったね」と優しく私を慰めるように言ってくれた。その頃には私も落ち着きを取り戻していたので、冷静に判断できるようになっていた。
「とても驚いちゃった。あたし初めて見たから、足が震えて何も出来なかった」
「普通そうだよね、横井さんは逃げ出さないだけ良いんじゃ無い。それにポチも褒めてあげなくちゃね。ポチが吠えなかったら僕は気づかずに、通り過ぎるところだった。」とポチの頭を撫でてくれた。
ポチも太田さんには慣れたみたいで、嬉しそうにしっぽを振っていた。
でも考えると、太田さんの緊急救命処置が上手だったので、あの人も助かったのでは無いかと感心した。男性って、いつもあんな風に冷静に対応できるのかしら?
なぜかその事件以来、太田さんを(頼もしい人・信頼できる人)と思えるようになった。
ところで大田さんはポチに病状を聞いてた。
「ポチはその後元気みたいだね、あんな風に大きな吠え声が出せる。後は医者も言っていたけど合併症とかフィラリアに注意が必要だね。蚊取り線香も専用の奴が売っているよ」
あたしはその前にお金のことを、お礼を言わなければならなかった。
「昨日はポチがとてもお世話になりすみませんでした。お金までお借りすることになって申し訳ないです」大田さんはニコニコ笑いながら
「ああお金ね、利息は高いよ一日一〇〇〇円にして帰して貰おうかな?」
「えーそんな高利!」とても驚いた。その後大田さんは大きな声で笑い
「へー横井さんて案外可愛いな。利息なんて冗談に決まっているじゃないか、それより驚いた君の顔は目がまん丸くなってとても可愛い」など言っている。こんな時に冗談なんて言う人有るかしら?あたしは逆に腹が立ってきた。
私の表情が変わったので、彼は慌てて言い訳じみたことを言った。
「冗談だよ、本当に、だから気にしないで、もし君の気に障ったなら許して。この通り」と言ってペコリペコリと頭を下げた。以前言っていたあだ名の通り米つきバッタだった。あたしはその姿を見て、つい吹き出してしまった。
だって本当に米つきバッタのようだったのだ。
「あははは、大田さん本当にあだ名みたい。本当に米つきバッタだよ」とあたしが笑っていると「やはりそう思う、でも君の機嫌が直って良かった。でも君は面白い人だね、怒ったり笑ったり。でも驚いた君の顔を思い出すととても可愛い」
「あーまた人のことを・・・」この辺で釘を刺した方が良いかなと思った
でもその前にもう仕事の時間になってしまった。
ポチが人の事を引っ張るので時間が解る。最後に挨拶して家に帰ろうとした。
「じゃあまた明日」
「なんか明日雨みたいだよ。雨の時は散歩しないんだ」
「じゃあその次に晴れた時にまた」と言って帰ろうとしたときに大田さんは言った。
「いつも休みの日は何しているの?良かったらマル子と四人で、此処で一日ノンビリしないか?こんな公園でデートなんて可笑しいかな?」えーデート?私はもうここ数年男性とデートなどしたこともない。確かに犬の散歩で少しだけ話しをするようは成った。
少しドキドキしながら、単なる散歩の延長と思ったが、軽い女とも思われたくないし
「ええと、どうしようかな?」
「なにか予定でも?」
「そうじゃなくて部屋の掃除とか洗濯など有るから」など言い訳じみたことを言った。私は久々の誘いでドキドキしながら、それでも言った
「話しなら毎日出来るし、少しだけ時間を取れば・・・」
「じゃあ初デートはそう言うことで、携帯の番号交換してくれないか?」
「御免なさい、あたし携帯持ってないの」
「へー、今時携帯がないなんて珍しいね」と驚いていた。
「じゃあまたsんぽの時にでも」と大田さんが言うので
「じゃあまた」と言って別れ、家に帰りポチに薬を飲ませ仕事に出かけた。
ただ私の心の中は、期待と不安が入り交じり、とても普段通りの一日の始まりではなかった。
私はまだ彼のことは何も知らない。近くに住んでいるらしいことは解って居たが、どこに誰と住んでいるなどは知らなかった。
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