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物語2
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しかし毎日の苦労も、家に帰るとポチが居てくれる。私が帰ると喜んで尾っぽがちぎれるほど降り、私の顔がベチョベチョになるほど舐め回す。そんな時は思わず可愛くなり抱きしめる。
そして天気の良い朝には散歩に出るが、最近ポチに様子がおかしい。
私が帰ると喜んで小屋から出てくるにだが、以前のような元気は無く、以前など散歩など喜んで、我先に私を引っ張って元気よく先に歩いたのに、最近はあまり元気が無い?
どうしたのか心配になり病院に連れて行こうかと思ったが。ちょうど顔見知りになった大田さんが後輩に薬学部の人がいるというので相談することにした。
「家のポチが最近元気が無くて、どうしちゃったのかしら?お宅のマル子ちゃんは元気ですか?」
「うん家のマル子は家の中で飼っているので、たまにストレスが溜まり、元気が無かったり、食事をしなくなったりします」それを聞いて私はもっと詳しく話を聞きたかった。
「それでどうして直したんですか?」
「うん、散歩が一番良いストレス解消法だね。今日も元気で散歩しているよ。君のポチはどうかしたの?」
「なんか最近元気が無くて、ご飯もあまり食べないんです」
「下痢なんかしてない?またお宅の側で道路工事なんかしてない?」
「あー最近道路をが拡張されるみたいで、一日中うるさいんです」
「それだよ」
大田さんが言うには環境の変化や睡眠不足で、動物たちもストレスが溜まるらしい。ストレスが溜まると様々な症状を起こすと言う。だからいつも以上に可愛がって上げたり、ストレスを解消すれば元気になると言うことだった。
私はいつも散歩をするが、大田さんと話しをする時はベンチに腰掛け話しをする。ポチはマル子ちゃんと遊んだりするが、しばらくすると二人とも話が合わないようで、そっぽを向いてしまう。
犬同士でも相性があるのだろうか?
その日はもうバイトの時間だったので別れたが、大田さんならポチの事も相談できると少し安心した。
物語3
バイト先のお店は家から、自転車で十分の所に有るとあるラーメンチェーンのお店だ。
街道沿いにあるお店なので、車で来る人やご近所の職場から来る人々で、昼時には列を作るくらい繁盛していた。
まだ新人の頃は、店や駐車場も毎日掃除して綺麗にする。街道沿いなので車で来た人も気持ち良く駐車出来る為だ。駐車場の隣は交番が有り、おまわりさんがいつも居た。目が合うといつもニッコリ笑い、防犯のため愛想を振りまいていた。
店には客が沢山入った。特に昼の食事時などは、猫の手も借りたいくらい忙しい。
やはり値段の安さと、注文から品出しまでの早さ、味などが人気の秘訣だ。
この店の駐車場は狭いので、皆さん街道に車を止める。それで良く亀有警察から「お店の駐車スペースを広げて下さい」と注意されていた。でも社長にはその考えは無いようだし、第一に駐車場にする土地が無い。物理的にも困った問題だった。
お店はカウンタ席が二十席、四人掛けのテーブルが五つ有り、南向きの窓からは日の光が気持ち良く差し込む、夏など暑い位だ。だから夏の冷房は強く効かせていた。
店の入口を入るとすぐ右にレジが有り、店を行き来出来るように左右に通路が有り、その前にカウンター席が並んで居る。
カウンタ席の向かいにスタッフ用の通路が有り、スタッフが移動して接客する。その通路を壁一枚隔てて調理場が有る。その壁には二つの大きな窓が有り、料理はそこから出されるようになっていた。
調理場はガス台と流し台が反対に設置され、真ん中の通路を調理スタッフが移動する。
調理場には二カ所に客室との出入り口が有り、そこを同じ靴では行ったり来たり出来無い。衛生上の問題だが、現実にはしっかりとは守られてはいなかった。
電話機は調理場側の壁に付けられ、多少大きな声で話しても、客席には聞こえないように工夫されていた。
この店で良く出るのは味噌ラーメン。太めの麺が程良く茹でられ、具はもやしとわかめだけだが、スープが麺に遭っているので人気のラーメンだった。
餃子は、(言ってはいけないが)冷凍食品であまり美味しくないのだが、ラーメンとセットで頼むと三個百円なので、一緒に注文する客が多かった。セットでも六〇〇円+一〇〇円で合わせて七〇〇円とお得価格だ。
この他カレーライスが六〇〇円中瓶ビールが三五〇円と、お手頃価格で商売をして居た。
お店では現在私がバイトのチーフ役になっているので、誰よりも早く出て店の出店準備を行わなければならなかった。私がもたついていると、店のスタッフがうまく働けない。それにアルバイトの出勤も、管理しなければならない。
若い娘達は、八人居て、順番に休日を取る。店には最低でも、五人の手が必要だった。
でも勝手な子は、自分都合で平気で休む。
この店では一応勤務シフトが決められては居るが、一週間前に連絡帳に(**ですが。*月*日お休みさせて下さい)と書いておけば私がそれを見て、店で働く娘達を指示してホール係や調理スタッフなどを決め、店が上手く営業できるように開店前に指示出来た。
それを急に休まれたのでは、その子が担当していた仕事を、私が変わって遣るしかない。
普段でさえ忙しい身なのに、余計な仕事まで遣るのは大変だ。
当然電話で、声が大きくなる事があった。
「ちょっとあんた、仕事をどう思って居るの?いくらバイトでも遊び半分でやられては、こっちが困るんだけど。休むのなら休むで決まり通り、ちゃんと前から連絡帳に書いて置いてよ!」
きっと急に彼氏とデートの、約束でも入ったのだろう。
「いい、今日来なかったら、当分の間お休みなしで余分に仕事して貰うからね」
全く店のアルバイトを小遣い稼ぎで、仕事とは思ってないのだから困る。結局その子はしばらくして辞めていった。
もっともアルバイトを雇う側にも、社員としての身分保障をしないし、働いただけの時給だけしかお給与を払わないし、社会保険も年金も無しだから仕方ないと言えば仕方ないが。
でも足らなくなった人手は、また新しいバイトを募集しなければならない。旨く応募があると良いのだが?
故人曰く「泣きっ面に蜂」とはよく言った物だ。そんな忙しいときに限って
「あのー、今日体調が悪くてお休みさせて下さい」といつもサボる横山妙子から連絡が有った。
その娘は付き合っている彼に呼び出されると、すぐ逢いたくなり仕事など放っといて、デートに行く子だ。もう以前からなので、見え見えだ。だから私も、つい大きな声になり
「ちょっと!あんたこの忙しいのに、良くそんな見え見えの言い訳できるわね。側の彼氏に言って、『今日休んだら、今月の給与払わないってチーフが怒っている』と、絶対に今日は来てよ!止めるならその次ぎに考えて。いいわね!」
「えー?だってーーー彼がーー?」
「お前、彼とのデートは、次の休みの日にして!良いわね。絶対に来いよ。来なかったら、火あぶりにしてやるぞ」と無理矢理引っ張り出した。
確かに若い頃は恋も大切なことは、この年になり十分解る。でも仕事をおろそかにするのは問題だ。休みたい時は一週間前まで連絡帳に書いておけば、いつでも休める体制が出来ている。
確かに逢いたい時には逢いたいとは思うが?「今日は休む」と、いきなり言われても困る。
まったくどいつもこいつも、言いたい放題、やりたい放題だ。いくら穏やかな私でも、つい大きな声に成る。
お店の開店は午前十一時だが、早い客は私達の迷惑も考えずに、開店時間より前に来る客が居る。そんな客ははっきり言って、とても迷惑だ。
でも、開店前に来た客にもニッコリと「いらっしゃいませ!」と、素早く客の注文を取り、急いで調理場に入り注文のラーメンを作る。
そんな客で中には、箸を付けないで帰る人が居る。何のために来たのか解らない?でもしっかりと金だけは取る。きっとアルバイトの作ったラーメンなんか、食べられないのかも知れない。
私達は特に調理の勉強をさせられた訳では無い。キッチンタイマーで決まった時間だけ麺をゆでる。それでも注文が有り忙しい。そんな時は狭い調理場の通路を居たり来たり、大わらわになってしまう。だからお互いに後ろを通るときは声を掛け合いぶつからない様にしていた。
私たちアルバイトにはラーメンの味など分からない。でもそれで客が列を作るだけ流行っているのだから、私としては言う事は無い。なまじ暇で首になるよりは良い方だ。今首になったら、すごく困る。
金町の同じような店でもアルバイトが働いているが、中には本格的なレストランや中華料理に店も有り、皆それぞれはやっている。
要は客の選択次第だ。客が満足すれば問題は無い。なまじ暇で首になれば、本当に飲み屋のホステスになることも、考えなければならない。ただ三十路の女のホステスなんて、本当に地元の場末の飲み屋くらいしか勤め口は無いだろう。
でもこの先のことを考えると、ふと不安になる。いつまでこの仕事を続けられるのだろうか?あと何年勤められるだろう。もし首になったら、どうやって生活していけば良いのだろう。本当に風俗か?
ホステスなら風俗よりはまだましだが、三十路のホステスなんて聞いたことが無い。
そう心配になるのから、今のところこの店で必死に頑張るしか無い。
スープは夜のバイトか社長が作る。だからアルバイトでも決まった味は出せる。スープは出来ているし、タレも既製品がある。
麺が茹で上がるとドンブリに入れ、タレを決まった量を入れ。スープを入れる。
後は具を乗せれば完成だ。大事なのは注文から品出しまでの時間だ。客を待たせると店の人気に影響する。素早い対応が肝心だった。
ただ注文の有ったラーメンを作り素早く客に出す。それで客が文句も言わず料金を払っていくのだからそれで良い。あたし達は、普通に仕事が出来れば問題はない。
たまに調理場のスタッフで、不手際があり、積み上げられているドンブリを、ひっくり返し大きな外を立てることが有る、そんな時は
「お騒がせして申し訳ありません。」と慌てて客に頭を下げ、ドジを踏んだスタッフを叱る。
「ちょっとあんた何しているのよ。壊した食器代はしっかりと弁償して貰うからね」と言いつつ、全部払わせるのも可愛そうなので、一つ分の食器代だけ、貰う様にしていた。
人を使うのってとても大変だ。なかなか思い通り動いてくれない。会社に勤めているときは、そんなこと感じていなかった。
ブラジャー盗難?
お店の従業員用のロッカーは、個人毎には割り当てられていない。複数の人たちで使う様に、鍵も掛けていない。そんなロッカーで事件は起きた。
アルバイトの娘のロッカーから下着が無くなり、警察まで巻き込んで大騒ぎになった。
有る午後からのバイトの娘が、お気に入りのお店で見付けた、可愛らしいブラを出社前に買ったと言う。
「見たとたん気に入り、ちょっと高かったんですが。思い切って買ったんです。黄色の地に紺の刺繍のしてある、メーカー品の高いブラでした。あたしバイトがあるし、勤めが終わったら家に持った帰ろうと、此処のロッカーに入れて置いたんです」
買った店の紙袋に入れたまま、バイトが終わったら家に持って帰ろうと、ロッカーにしまって置いたらしいのだが、それが無くなっていた。
ブラジャーは女性の下着の中でも値段が高く、一流メーカ品では安い物でも五千円はする。良い物になると一万を超える物まである。私もそう言った物を着けていたから、バイトの娘の欲しがる気持ちも解る。
でも、それをいくら店が終わってから持って帰るつもりでも、多数の人が使うロッカーにおいて置くなんて、盗まれる方にも問題はある。事件が起きるのは、当たり前のことだと思った。
事件が起きた時に、すぐ隣の交番に届けた。そしたら社長が慌てて
「すみません、誰かの忘れ物だと思って」と名乗り出た。
そう犯人は社長だった。
社長は誰かの忘れ物と言い訳していたが、ロッカーの中に忘れる娘なんて居る訳もない。
実はこの社長若い女の子が好きで仕方なく、だからその下着を売っているお店の紙袋を見て、スケベ根性で中身に興味があったのだろう。
それでつい手が出たのだろう。全くこの社長のスケベにも困った物だ。
その時の奥様の言い分が面白かった。
「何故あたしのブラでは不満なの?警察に捕まる位なら、あたしのブラで我慢しなさい。あたしも女よ!」と社長を怒鳴りつけていた。
でも、これには思わず噴き出してしまうところだったのだが、でも笑えない。笑いを必死にこらえるのが苦しかった。
警察も被害者の娘が
「あたしも悪かったし、あまり大事にされては困る」と被害届も出さなかったので、警察問題にはならなかった。
結局そのブラ代五千八百円を社長が負担することで、問題は解決したのだが、まったくこの社長の、若い子好きにも困った物だ。
でも複数の人が使う処に、いくら家に持って帰るつもりで短時間だったとは言え、そんなところに、下着などを入れて置く娘も悪いのだが。
だいたい普通、バイト先のみんなで使うロッカーに、そんな物入れて置くか?
そして社長も社長だ、従業員のロッカーの中身を、探るのは行き過ぎだ。
いくら若い娘が何を持っているか興味があるのと言っても、、多数の従業員が使うでロッカーで、カギが掛かってないと言っても中を覗くのは許されない!
このオヤジ、とてもスケベなこと甚だしく、良く店の女の子のお尻を触る。
触られた娘は客も居るし、黙って社長の手を払いのけるだけだ。
特に大事にも成らないので、社長は触りたい放題だった。その内きっと痴漢やセクハラで、訴えられるから!
事件以来社長はロッカーの中を、覗かない様になったのだろうか?
私は当然ロッカーの中に下着など入れないし、財布だって入れない。世の中油断出来ない。
そして天気の良い朝には散歩に出るが、最近ポチに様子がおかしい。
私が帰ると喜んで小屋から出てくるにだが、以前のような元気は無く、以前など散歩など喜んで、我先に私を引っ張って元気よく先に歩いたのに、最近はあまり元気が無い?
どうしたのか心配になり病院に連れて行こうかと思ったが。ちょうど顔見知りになった大田さんが後輩に薬学部の人がいるというので相談することにした。
「家のポチが最近元気が無くて、どうしちゃったのかしら?お宅のマル子ちゃんは元気ですか?」
「うん家のマル子は家の中で飼っているので、たまにストレスが溜まり、元気が無かったり、食事をしなくなったりします」それを聞いて私はもっと詳しく話を聞きたかった。
「それでどうして直したんですか?」
「うん、散歩が一番良いストレス解消法だね。今日も元気で散歩しているよ。君のポチはどうかしたの?」
「なんか最近元気が無くて、ご飯もあまり食べないんです」
「下痢なんかしてない?またお宅の側で道路工事なんかしてない?」
「あー最近道路をが拡張されるみたいで、一日中うるさいんです」
「それだよ」
大田さんが言うには環境の変化や睡眠不足で、動物たちもストレスが溜まるらしい。ストレスが溜まると様々な症状を起こすと言う。だからいつも以上に可愛がって上げたり、ストレスを解消すれば元気になると言うことだった。
私はいつも散歩をするが、大田さんと話しをする時はベンチに腰掛け話しをする。ポチはマル子ちゃんと遊んだりするが、しばらくすると二人とも話が合わないようで、そっぽを向いてしまう。
犬同士でも相性があるのだろうか?
その日はもうバイトの時間だったので別れたが、大田さんならポチの事も相談できると少し安心した。
物語3
バイト先のお店は家から、自転車で十分の所に有るとあるラーメンチェーンのお店だ。
街道沿いにあるお店なので、車で来る人やご近所の職場から来る人々で、昼時には列を作るくらい繁盛していた。
まだ新人の頃は、店や駐車場も毎日掃除して綺麗にする。街道沿いなので車で来た人も気持ち良く駐車出来る為だ。駐車場の隣は交番が有り、おまわりさんがいつも居た。目が合うといつもニッコリ笑い、防犯のため愛想を振りまいていた。
店には客が沢山入った。特に昼の食事時などは、猫の手も借りたいくらい忙しい。
やはり値段の安さと、注文から品出しまでの早さ、味などが人気の秘訣だ。
この店の駐車場は狭いので、皆さん街道に車を止める。それで良く亀有警察から「お店の駐車スペースを広げて下さい」と注意されていた。でも社長にはその考えは無いようだし、第一に駐車場にする土地が無い。物理的にも困った問題だった。
お店はカウンタ席が二十席、四人掛けのテーブルが五つ有り、南向きの窓からは日の光が気持ち良く差し込む、夏など暑い位だ。だから夏の冷房は強く効かせていた。
店の入口を入るとすぐ右にレジが有り、店を行き来出来るように左右に通路が有り、その前にカウンター席が並んで居る。
カウンタ席の向かいにスタッフ用の通路が有り、スタッフが移動して接客する。その通路を壁一枚隔てて調理場が有る。その壁には二つの大きな窓が有り、料理はそこから出されるようになっていた。
調理場はガス台と流し台が反対に設置され、真ん中の通路を調理スタッフが移動する。
調理場には二カ所に客室との出入り口が有り、そこを同じ靴では行ったり来たり出来無い。衛生上の問題だが、現実にはしっかりとは守られてはいなかった。
電話機は調理場側の壁に付けられ、多少大きな声で話しても、客席には聞こえないように工夫されていた。
この店で良く出るのは味噌ラーメン。太めの麺が程良く茹でられ、具はもやしとわかめだけだが、スープが麺に遭っているので人気のラーメンだった。
餃子は、(言ってはいけないが)冷凍食品であまり美味しくないのだが、ラーメンとセットで頼むと三個百円なので、一緒に注文する客が多かった。セットでも六〇〇円+一〇〇円で合わせて七〇〇円とお得価格だ。
この他カレーライスが六〇〇円中瓶ビールが三五〇円と、お手頃価格で商売をして居た。
お店では現在私がバイトのチーフ役になっているので、誰よりも早く出て店の出店準備を行わなければならなかった。私がもたついていると、店のスタッフがうまく働けない。それにアルバイトの出勤も、管理しなければならない。
若い娘達は、八人居て、順番に休日を取る。店には最低でも、五人の手が必要だった。
でも勝手な子は、自分都合で平気で休む。
この店では一応勤務シフトが決められては居るが、一週間前に連絡帳に(**ですが。*月*日お休みさせて下さい)と書いておけば私がそれを見て、店で働く娘達を指示してホール係や調理スタッフなどを決め、店が上手く営業できるように開店前に指示出来た。
それを急に休まれたのでは、その子が担当していた仕事を、私が変わって遣るしかない。
普段でさえ忙しい身なのに、余計な仕事まで遣るのは大変だ。
当然電話で、声が大きくなる事があった。
「ちょっとあんた、仕事をどう思って居るの?いくらバイトでも遊び半分でやられては、こっちが困るんだけど。休むのなら休むで決まり通り、ちゃんと前から連絡帳に書いて置いてよ!」
きっと急に彼氏とデートの、約束でも入ったのだろう。
「いい、今日来なかったら、当分の間お休みなしで余分に仕事して貰うからね」
全く店のアルバイトを小遣い稼ぎで、仕事とは思ってないのだから困る。結局その子はしばらくして辞めていった。
もっともアルバイトを雇う側にも、社員としての身分保障をしないし、働いただけの時給だけしかお給与を払わないし、社会保険も年金も無しだから仕方ないと言えば仕方ないが。
でも足らなくなった人手は、また新しいバイトを募集しなければならない。旨く応募があると良いのだが?
故人曰く「泣きっ面に蜂」とはよく言った物だ。そんな忙しいときに限って
「あのー、今日体調が悪くてお休みさせて下さい」といつもサボる横山妙子から連絡が有った。
その娘は付き合っている彼に呼び出されると、すぐ逢いたくなり仕事など放っといて、デートに行く子だ。もう以前からなので、見え見えだ。だから私も、つい大きな声になり
「ちょっと!あんたこの忙しいのに、良くそんな見え見えの言い訳できるわね。側の彼氏に言って、『今日休んだら、今月の給与払わないってチーフが怒っている』と、絶対に今日は来てよ!止めるならその次ぎに考えて。いいわね!」
「えー?だってーーー彼がーー?」
「お前、彼とのデートは、次の休みの日にして!良いわね。絶対に来いよ。来なかったら、火あぶりにしてやるぞ」と無理矢理引っ張り出した。
確かに若い頃は恋も大切なことは、この年になり十分解る。でも仕事をおろそかにするのは問題だ。休みたい時は一週間前まで連絡帳に書いておけば、いつでも休める体制が出来ている。
確かに逢いたい時には逢いたいとは思うが?「今日は休む」と、いきなり言われても困る。
まったくどいつもこいつも、言いたい放題、やりたい放題だ。いくら穏やかな私でも、つい大きな声に成る。
お店の開店は午前十一時だが、早い客は私達の迷惑も考えずに、開店時間より前に来る客が居る。そんな客ははっきり言って、とても迷惑だ。
でも、開店前に来た客にもニッコリと「いらっしゃいませ!」と、素早く客の注文を取り、急いで調理場に入り注文のラーメンを作る。
そんな客で中には、箸を付けないで帰る人が居る。何のために来たのか解らない?でもしっかりと金だけは取る。きっとアルバイトの作ったラーメンなんか、食べられないのかも知れない。
私達は特に調理の勉強をさせられた訳では無い。キッチンタイマーで決まった時間だけ麺をゆでる。それでも注文が有り忙しい。そんな時は狭い調理場の通路を居たり来たり、大わらわになってしまう。だからお互いに後ろを通るときは声を掛け合いぶつからない様にしていた。
私たちアルバイトにはラーメンの味など分からない。でもそれで客が列を作るだけ流行っているのだから、私としては言う事は無い。なまじ暇で首になるよりは良い方だ。今首になったら、すごく困る。
金町の同じような店でもアルバイトが働いているが、中には本格的なレストランや中華料理に店も有り、皆それぞれはやっている。
要は客の選択次第だ。客が満足すれば問題は無い。なまじ暇で首になれば、本当に飲み屋のホステスになることも、考えなければならない。ただ三十路の女のホステスなんて、本当に地元の場末の飲み屋くらいしか勤め口は無いだろう。
でもこの先のことを考えると、ふと不安になる。いつまでこの仕事を続けられるのだろうか?あと何年勤められるだろう。もし首になったら、どうやって生活していけば良いのだろう。本当に風俗か?
ホステスなら風俗よりはまだましだが、三十路のホステスなんて聞いたことが無い。
そう心配になるのから、今のところこの店で必死に頑張るしか無い。
スープは夜のバイトか社長が作る。だからアルバイトでも決まった味は出せる。スープは出来ているし、タレも既製品がある。
麺が茹で上がるとドンブリに入れ、タレを決まった量を入れ。スープを入れる。
後は具を乗せれば完成だ。大事なのは注文から品出しまでの時間だ。客を待たせると店の人気に影響する。素早い対応が肝心だった。
ただ注文の有ったラーメンを作り素早く客に出す。それで客が文句も言わず料金を払っていくのだからそれで良い。あたし達は、普通に仕事が出来れば問題はない。
たまに調理場のスタッフで、不手際があり、積み上げられているドンブリを、ひっくり返し大きな外を立てることが有る、そんな時は
「お騒がせして申し訳ありません。」と慌てて客に頭を下げ、ドジを踏んだスタッフを叱る。
「ちょっとあんた何しているのよ。壊した食器代はしっかりと弁償して貰うからね」と言いつつ、全部払わせるのも可愛そうなので、一つ分の食器代だけ、貰う様にしていた。
人を使うのってとても大変だ。なかなか思い通り動いてくれない。会社に勤めているときは、そんなこと感じていなかった。
ブラジャー盗難?
お店の従業員用のロッカーは、個人毎には割り当てられていない。複数の人たちで使う様に、鍵も掛けていない。そんなロッカーで事件は起きた。
アルバイトの娘のロッカーから下着が無くなり、警察まで巻き込んで大騒ぎになった。
有る午後からのバイトの娘が、お気に入りのお店で見付けた、可愛らしいブラを出社前に買ったと言う。
「見たとたん気に入り、ちょっと高かったんですが。思い切って買ったんです。黄色の地に紺の刺繍のしてある、メーカー品の高いブラでした。あたしバイトがあるし、勤めが終わったら家に持った帰ろうと、此処のロッカーに入れて置いたんです」
買った店の紙袋に入れたまま、バイトが終わったら家に持って帰ろうと、ロッカーにしまって置いたらしいのだが、それが無くなっていた。
ブラジャーは女性の下着の中でも値段が高く、一流メーカ品では安い物でも五千円はする。良い物になると一万を超える物まである。私もそう言った物を着けていたから、バイトの娘の欲しがる気持ちも解る。
でも、それをいくら店が終わってから持って帰るつもりでも、多数の人が使うロッカーにおいて置くなんて、盗まれる方にも問題はある。事件が起きるのは、当たり前のことだと思った。
事件が起きた時に、すぐ隣の交番に届けた。そしたら社長が慌てて
「すみません、誰かの忘れ物だと思って」と名乗り出た。
そう犯人は社長だった。
社長は誰かの忘れ物と言い訳していたが、ロッカーの中に忘れる娘なんて居る訳もない。
実はこの社長若い女の子が好きで仕方なく、だからその下着を売っているお店の紙袋を見て、スケベ根性で中身に興味があったのだろう。
それでつい手が出たのだろう。全くこの社長のスケベにも困った物だ。
その時の奥様の言い分が面白かった。
「何故あたしのブラでは不満なの?警察に捕まる位なら、あたしのブラで我慢しなさい。あたしも女よ!」と社長を怒鳴りつけていた。
でも、これには思わず噴き出してしまうところだったのだが、でも笑えない。笑いを必死にこらえるのが苦しかった。
警察も被害者の娘が
「あたしも悪かったし、あまり大事にされては困る」と被害届も出さなかったので、警察問題にはならなかった。
結局そのブラ代五千八百円を社長が負担することで、問題は解決したのだが、まったくこの社長の、若い子好きにも困った物だ。
でも複数の人が使う処に、いくら家に持って帰るつもりで短時間だったとは言え、そんなところに、下着などを入れて置く娘も悪いのだが。
だいたい普通、バイト先のみんなで使うロッカーに、そんな物入れて置くか?
そして社長も社長だ、従業員のロッカーの中身を、探るのは行き過ぎだ。
いくら若い娘が何を持っているか興味があるのと言っても、、多数の従業員が使うでロッカーで、カギが掛かってないと言っても中を覗くのは許されない!
このオヤジ、とてもスケベなこと甚だしく、良く店の女の子のお尻を触る。
触られた娘は客も居るし、黙って社長の手を払いのけるだけだ。
特に大事にも成らないので、社長は触りたい放題だった。その内きっと痴漢やセクハラで、訴えられるから!
事件以来社長はロッカーの中を、覗かない様になったのだろうか?
私は当然ロッカーの中に下着など入れないし、財布だって入れない。世の中油断出来ない。
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