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【ハートのネックレス】

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 最初自分たちが泊まっていた2階の部屋に、昨晩、モトカノが泊まっていたはずだ。
 そしてその夜、自分と拓真は何度も抱き合った。
 海翔は立ち上がる。
「拓真が戻ってきたら、また来ます。暇なんで、部屋に居ます」
 戻った部屋は、昨日寝た1階の部屋ではなく2階の部屋だ。
 モトカノの由真と拓真はどんな話をしたのだろうか。
 駅まで送っていくうちに、やっぱりモトサヤに戻ろう、なんて・・・
 そこまで考えて海翔はやめる。
 2階の部屋に由真が一晩居た形跡はなかった。
 胸がざわついた。
 なんとなく嫌なものを見たような気持ちになった。
 部屋は何も変わりないのに、どうしてだろう。
 海翔は部屋を見回し、歩き回る。
 そしてクローゼットの手前で立ち止まった。
 拓真の荷物を閉まっているクローゼットの扉が、半開きになっている。
 躊躇いもせず、海翔は扉を開ける。
 拓真のバックがあった。サイドのポケットからきらりと光るチェーンが見えた。
 海翔はそれに手を伸ばす。
 小さなハートのチャームの付いたネックレスだった。
 それが拓真のバックのポケットの中に、しかもチェーンが見える状態で入っていたのだ。 由真から拓真へのメッセージに違いなかった。
 海翔はそれを手のひらで握り、クローゼットを閉める。
 そして自分の荷物を置いてある方の部屋に異動して、窓際のソファに座った。
 そっと手を開くと、小さなハートが陽光を受けて輝いた。
「むかつく女」
 これをプレゼントしてくれた頃に戻ろうよ。
 由真が拓真にそう囁いているように思った。
 海翔は険しい顔をして、じっと外を見つめた。 
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