1 / 1
1
しおりを挟む
今日は高校の卒業式。
俺はこの最後の日にある決意をしていた。
3年間ずっと同じクラスだった渋谷連に告白をする。
卒業式の今日なら相手に迷惑をかけなくてすむと思ったから。
俺は3日後には地元を離れて1人暮らしをするから、もし振られても大丈夫。
まぁ、付き合えるなんて思ってないけど…
今日を逃せばきっとこの先チャンスなんて無いだろう。
当たって砕けてやるさ。木っ端微塵にな。
無事に式が終わり、今教室で担任が来るのを待っている状態だ。
話しかけるのは今しかない。
勇気を出せ!俺!
「渋谷、帰りに少し話せないかな?本当に少しで良いんだけど…」
「いいよ。じゃあ、非常口階段の所で話そうか」
「分かった。ありがとう」
よし。約束は出来た。
大丈夫。後は告白して振られるだけだ。
良いじゃないか。言えるだけで。
チャンスがあるだけで。
木っ端微塵に砕け散ってまた新しい出会いを探せば良いんだよ。
「みんな、本当に卒業おめでとう!」
担任からの挨拶が終わりみんなが好きに動き始める。
写真を撮ってたりアルバムにメッセージを書いてたり。
卒業式の打ち上げをしようなんて話も出ている。
俺は勿論不参加だ。
引越しの準備もあるし、振られた後ではとても楽しめないだろう。
この教室から見る景色も今日で終わり。
日差しが良くて睡魔と戦いながら授業を受けていたのが良い思い出だ。
特に社会な。
しばらくして教室の中が静かになってきた。
俺もそろそろ移動しようか。
木っ端微塵になる時間だ。
でも、考え方によっては最高かもよ?
だって高校生活最後の瞬間を好きな奴と過ごせるんだぜ?
それもわざわざ俺と話す為に時間を作ってくれるんだぜ?
最高じゃね?
なるべくポジティブに考えながら非常口階段まで来た。
渋谷はまだ来ていない。
階段に座ってこれからのシュミレーションをする。
長中と話すのは俺のメンタルが持たないから、すぐに要件を言おう。
一言だけ言って、振ってもらって、さよならをする。
スパッとシンプルに!
「ごめん、待った?」
「っ!だ、大丈夫…!」
すっっっっっっごくビックリしたけどな!
足音ぐらい派手に立てろよ!
集中しすぎてて気づかなかった…
「そ?なかなか撮り終わらなくてさ」
「あー、凄い頼まれてたもんな。お疲れさん」
「まぁ、今日で最後だしな」
そう。今日で最後なんだよ。
この気持ちともケジメをつける。
「あのさ、要件なんだけど…」
「うん。何?」
「俺さ、ずっとお前の事が好きだったんだ」
「…え?」
「男に告られて気持ち悪いのは分かってる。でもどうしても伝えたくて。…最後だから」
「………」
怖すぎて渋谷の顔が見れない!
どうしよ!どうする?
とりあえず全部話さないと!
「返事はいらないから!ただ俺の気持ちを伝えたかっただけなんだ。ごめんな?渋谷からすれば迷惑なだけなのに俺の自己満足に付き合わせてさ…」
「………」
「要件はこれだけなんだ。…えっと…じゃあそうゆう事で」
どうしていいか分からなくなって立ち上がり去ろうとしたらガシッと腕を掴まれた。
思いっきり体をビクッとさせて恐る恐る渋谷を見る。
「あの、離してくれる…?」
「………」
「あのー?渋谷?」
あまりにも黙ってるからますます不安になる。
俺としては、ちゃんと要件を言えたから目的達成なんだけど…
まだ木っ端微塵にはなってないけど。
決定打となる言葉を言われてないから。
いや、言わせないように避けたのもあるけど…
でもさ、ちゃんと聞かないとダメだよな…
ちゃんと渋谷から振ってもらって終わりにするんだ。
最初の予定通り。
「その、自分勝手でごめん。俺本当にお前が好きでさ。高校最後だし、会えるのも今日が最後じゃん?どうしても気持ちを伝えてスッキリしたくてさ…」
「………」
「俺、3日後には地元離れるんだ。だから偶然ばったり会う事はないと思うからその辺は安心して!」
話す予定には無かった事まで話してしまった…!
俺が引っ越す事なんてどうでも良いだろうが!
「だからさ、この事は忘れてくれたら!」
「…ふざけんなよ」
「え?」
やっと話たと思ったらふざけんなって言われたんだが…
ごもっともなんですけどね。
「告白したかと思ったら返事はいらないとか言うし」
「え?」
「気持ち伝えてスッキリ?お前だけスッキリしてんじゃねぇよ」
「ご、ごめんなさい…」
「それに引っ越す事なんて聞いてねぇよ!いつ決めたんたよ」
「それは大学受験を考えた時に…」
「そんな前かよ!俺には言えよ!ずっと同じ地元にいると思ってたのに」
「えっ?ご、ごめんなさい…?」
え?俺、すげー怒れれてる? 何で?
「俺はっ!…俺は…」
「渋谷…?」
「俺もお前が好きだよ」
「…え?」
聞き間違いかな?
今好きって聞こえたんだけど…
「1年の頃からずっとお前が好きだったんだ。俺も今日告白しようか考えたんだけど色々考えたら無理だってなって、出来れば連絡先を交換出来れば上出来と思ってた」
「………」
「お前から話があるって言われてどれだけ嬉しかったか。まさか告白だとは思わなかったけど…」
「えっと…」
お互いに見つめ合って、顔が赤くなってるのが分かるのに目線を外す事が出来なくて。
俺夢でも見てるのか?
好きだった渋谷に告白されてこうして見つめ合っちゃってさ。
でも掴まれてる腕からは確かに熱が伝わってて。
「俺はお前が好きだ。俺と付き合ってくれ」
木っ端微塵に振られるんだと思ってたのに…
気持ちを伝えられたらそれで十分だと…
「本当に…?俺と付き合ってくれるの?」
信じられなくて聞き返してしまった。
「俺はお前と付き合いたい。お前は?お前は告白だけして本当に満足?」
「…っ付き合いたい!お前と…渋谷と付き合いたいよ…」
「うん。今日から恋人同士な」
「…うん!」
まだ実感はないけど。
でも夢じゃなくて現実なのが熱で伝わるから。
好きな人と付き合える事が出来て最高に幸せだ。
告白して良かった!
「とりあえずこれからの事話し合うか」
「これからの事?」
「そう。大学が違うのと引越しの事とか色々な」
「あ…そうだね。じゃあ俺ん家来る?ここじゃ落ち着いて話せないし」
「じゃあ行こうか。…早く2人っきりになりたいし」
「ん?最後なんて言った?」
「何でもないよ」
「そうか?」
木っ端微塵になる予定でしたが、付き合える事になりました。
俺今すげー幸せです!
end
俺はこの最後の日にある決意をしていた。
3年間ずっと同じクラスだった渋谷連に告白をする。
卒業式の今日なら相手に迷惑をかけなくてすむと思ったから。
俺は3日後には地元を離れて1人暮らしをするから、もし振られても大丈夫。
まぁ、付き合えるなんて思ってないけど…
今日を逃せばきっとこの先チャンスなんて無いだろう。
当たって砕けてやるさ。木っ端微塵にな。
無事に式が終わり、今教室で担任が来るのを待っている状態だ。
話しかけるのは今しかない。
勇気を出せ!俺!
「渋谷、帰りに少し話せないかな?本当に少しで良いんだけど…」
「いいよ。じゃあ、非常口階段の所で話そうか」
「分かった。ありがとう」
よし。約束は出来た。
大丈夫。後は告白して振られるだけだ。
良いじゃないか。言えるだけで。
チャンスがあるだけで。
木っ端微塵に砕け散ってまた新しい出会いを探せば良いんだよ。
「みんな、本当に卒業おめでとう!」
担任からの挨拶が終わりみんなが好きに動き始める。
写真を撮ってたりアルバムにメッセージを書いてたり。
卒業式の打ち上げをしようなんて話も出ている。
俺は勿論不参加だ。
引越しの準備もあるし、振られた後ではとても楽しめないだろう。
この教室から見る景色も今日で終わり。
日差しが良くて睡魔と戦いながら授業を受けていたのが良い思い出だ。
特に社会な。
しばらくして教室の中が静かになってきた。
俺もそろそろ移動しようか。
木っ端微塵になる時間だ。
でも、考え方によっては最高かもよ?
だって高校生活最後の瞬間を好きな奴と過ごせるんだぜ?
それもわざわざ俺と話す為に時間を作ってくれるんだぜ?
最高じゃね?
なるべくポジティブに考えながら非常口階段まで来た。
渋谷はまだ来ていない。
階段に座ってこれからのシュミレーションをする。
長中と話すのは俺のメンタルが持たないから、すぐに要件を言おう。
一言だけ言って、振ってもらって、さよならをする。
スパッとシンプルに!
「ごめん、待った?」
「っ!だ、大丈夫…!」
すっっっっっっごくビックリしたけどな!
足音ぐらい派手に立てろよ!
集中しすぎてて気づかなかった…
「そ?なかなか撮り終わらなくてさ」
「あー、凄い頼まれてたもんな。お疲れさん」
「まぁ、今日で最後だしな」
そう。今日で最後なんだよ。
この気持ちともケジメをつける。
「あのさ、要件なんだけど…」
「うん。何?」
「俺さ、ずっとお前の事が好きだったんだ」
「…え?」
「男に告られて気持ち悪いのは分かってる。でもどうしても伝えたくて。…最後だから」
「………」
怖すぎて渋谷の顔が見れない!
どうしよ!どうする?
とりあえず全部話さないと!
「返事はいらないから!ただ俺の気持ちを伝えたかっただけなんだ。ごめんな?渋谷からすれば迷惑なだけなのに俺の自己満足に付き合わせてさ…」
「………」
「要件はこれだけなんだ。…えっと…じゃあそうゆう事で」
どうしていいか分からなくなって立ち上がり去ろうとしたらガシッと腕を掴まれた。
思いっきり体をビクッとさせて恐る恐る渋谷を見る。
「あの、離してくれる…?」
「………」
「あのー?渋谷?」
あまりにも黙ってるからますます不安になる。
俺としては、ちゃんと要件を言えたから目的達成なんだけど…
まだ木っ端微塵にはなってないけど。
決定打となる言葉を言われてないから。
いや、言わせないように避けたのもあるけど…
でもさ、ちゃんと聞かないとダメだよな…
ちゃんと渋谷から振ってもらって終わりにするんだ。
最初の予定通り。
「その、自分勝手でごめん。俺本当にお前が好きでさ。高校最後だし、会えるのも今日が最後じゃん?どうしても気持ちを伝えてスッキリしたくてさ…」
「………」
「俺、3日後には地元離れるんだ。だから偶然ばったり会う事はないと思うからその辺は安心して!」
話す予定には無かった事まで話してしまった…!
俺が引っ越す事なんてどうでも良いだろうが!
「だからさ、この事は忘れてくれたら!」
「…ふざけんなよ」
「え?」
やっと話たと思ったらふざけんなって言われたんだが…
ごもっともなんですけどね。
「告白したかと思ったら返事はいらないとか言うし」
「え?」
「気持ち伝えてスッキリ?お前だけスッキリしてんじゃねぇよ」
「ご、ごめんなさい…」
「それに引っ越す事なんて聞いてねぇよ!いつ決めたんたよ」
「それは大学受験を考えた時に…」
「そんな前かよ!俺には言えよ!ずっと同じ地元にいると思ってたのに」
「えっ?ご、ごめんなさい…?」
え?俺、すげー怒れれてる? 何で?
「俺はっ!…俺は…」
「渋谷…?」
「俺もお前が好きだよ」
「…え?」
聞き間違いかな?
今好きって聞こえたんだけど…
「1年の頃からずっとお前が好きだったんだ。俺も今日告白しようか考えたんだけど色々考えたら無理だってなって、出来れば連絡先を交換出来れば上出来と思ってた」
「………」
「お前から話があるって言われてどれだけ嬉しかったか。まさか告白だとは思わなかったけど…」
「えっと…」
お互いに見つめ合って、顔が赤くなってるのが分かるのに目線を外す事が出来なくて。
俺夢でも見てるのか?
好きだった渋谷に告白されてこうして見つめ合っちゃってさ。
でも掴まれてる腕からは確かに熱が伝わってて。
「俺はお前が好きだ。俺と付き合ってくれ」
木っ端微塵に振られるんだと思ってたのに…
気持ちを伝えられたらそれで十分だと…
「本当に…?俺と付き合ってくれるの?」
信じられなくて聞き返してしまった。
「俺はお前と付き合いたい。お前は?お前は告白だけして本当に満足?」
「…っ付き合いたい!お前と…渋谷と付き合いたいよ…」
「うん。今日から恋人同士な」
「…うん!」
まだ実感はないけど。
でも夢じゃなくて現実なのが熱で伝わるから。
好きな人と付き合える事が出来て最高に幸せだ。
告白して良かった!
「とりあえずこれからの事話し合うか」
「これからの事?」
「そう。大学が違うのと引越しの事とか色々な」
「あ…そうだね。じゃあ俺ん家来る?ここじゃ落ち着いて話せないし」
「じゃあ行こうか。…早く2人っきりになりたいし」
「ん?最後なんて言った?」
「何でもないよ」
「そうか?」
木っ端微塵になる予定でしたが、付き合える事になりました。
俺今すげー幸せです!
end
0
お気に入りに追加
5
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
咳が苦しくておしっこが言えなかった同居人
こじらせた処女
BL
過労が祟った菖(あやめ)は、風邪をひいてしまった。症状の中で咳が最もひどく、夜も寝苦しくて起きてしまうほど。
それなのに、元々がリモートワークだったこともあってか、休むことはせず、ベッドの上でパソコンを叩いていた。それに怒った同居人の楓(かえで)はその日一日有給を取り、菖を監視する。咳が止まらない菖にホットレモンを作ったり、背中をさすったりと献身的な世話のお陰で一度長い眠りにつくことができた。
しかし、1時間ほどで目を覚ましてしまう。それは水分をたくさんとったことによる尿意なのだが、咳のせいでなかなか言うことが出来ず、限界に近づいていき…?
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
ダンス練習中トイレを言い出せなかったアイドル
こじらせた処女
BL
とある2人組アイドルグループの鮎(アユ)(16)には悩みがあった。それは、グループの中のリーダーである玖宮(クミヤ)(19)と2人きりになるとうまく話せないこと。
若干の尿意を抱えてレッスン室に入ってしまったアユは、開始20分で我慢が苦しくなってしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる