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20話 アニメショップで武器を買う

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「アニメショップ寄ってもいいか?」

「あの雰囲気のあとでよくアニメショップに行けますね!」

 リディアの抗議ももっともだ。

 普通、こんないい雰囲気ならさっさと家に帰ってキスの一つでもするべきだろう。

 リディアは拗ねたように口を尖らせた。

「そんなに欲しいグッズでもあるのですか?」

「まぁそうだな、俺にとっての戦いの道具だ」

「アニメショップに武器なんてあるのですか?」

 言い得て妙だ。俺にとって、武器になる可能性があるものを探している。

 大須商店街には夕陽が差し込んでおり、あと数十分で日が沈むだろう。夜になるとおかしな人も現れる。自衛も大事だ。だから……

「リディアは夜ご飯を買ってきてくれるか?」

 俺はリディアに2000円を渡した。リディアは目を丸くしている。

「わ、私が買ってくるのですか?」

「あぁ、思えばずっと俺が買ってきたコンビニ飯ばっかりだったからな。今日はリディアの好きなものを買ってくれ」

「……わかりました。何を選んでも文句言わないでくださいよ!」

「そんなに心狭くないって」

 心外だ。

「あ、リディアが料理してくれたら嬉しいなぁ」

「あの家、フライパンも何もないじゃないですか」

 そういえばそうだった。自炊なんてどうせしないからと、調理器具類はほとんど買っていないんだった。

 リディアみたいな可愛い彼女ができると予想できていたら用意していたのにな。実に惜しい。

「夜ご飯を買ったらこの招き猫広場に集合で。大丈夫か、迷子にならないか?」

「ば、バカにしないでください!」

 リディアに手を振って分かれたが、彼女は舌を突き出してきた。可愛い。

 さて、と足をアニメショップに向かわせる。

 一昔前まで、アニメショップは男社会だった。しかし最近では女性客も目に見えて増えてきた。それどころか、棚の半分を女性向け作品で埋まるショップもザラにある。

 しかしこの灰色ビル、その地下3階にあるショップは、とても女性が立ち寄るようなところではなかった。相変わらずグッズも男性向け作品ばかりである。

 有名アニメや最新アニメのグッズは取り扱っていない。少し流行遅れの、そしてコアなグッズを取り扱っている店だ。

 例えばこの火のエフェクトがプラスチックで作られ、まとわりついている黒い鞭。これは、とある作品でヒロインが主人公を奴隷にするために使っていた鞭だ。アニメ化されたのは8年ほど前だろうか。

 こんなものを欲しがるのは熱心すぎるファンか、コスプレイヤーくらいだろう。

 だがこんなディープな店にこそ、俺の欲するものがある可能性を信じているのだ。

 店を物色して5分。お目当てのものを見つけた。

「……よし、買えるな」

 かなりの高値も覚悟していたが、6500円で今後のための武器になるかもしれないなら安いものだ。

 俺はそれを買い上げ、リュックサックの中に入れた。

 できればこれを使う時が来ない時を祈りながら。
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