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2話 後輩系彼女ができた
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少女が落ち着いてから、近くのベンチに座ってようやく俺たちは名乗った。
「俺は宮地正輝。君は?」
「リディア・キューライスです」
「珍しい名前だな」
「当然です。私はこの世界とは違う世界から来たのですから」
「へー。異世界ってやつ?」
「はいそうです」
「へー……えっ?」
聞き流したが、絶対に流してはいけないことだった。
異世界といえばまず思いつくのはライトノベルだ。さしずめそれに影響された中学生だろうか。
ならばと、俺はさらに意地悪を重ねた。
「異世界人なら証拠見せてよ、魔法を使うとかさ」
リディアは目を見開いた。また涙目になるかと思ったが、リディアは立ち上がって腕を前に伸ばした。
「[ホワイトパルス]」
「うおっ!」
リディアの手先が白く輝いた。秋の夜に、光が一つ。魔法のようなコントラストだ。
仕掛けは見つからない。マジシャンというわけではなさそうだ。
「もっとできますよ。[ホワイトサイクロン]」
突如、風が吹き荒れリディアの前に集まった。
渦を巻き、球体になった白い風は忍者漫画の大技のようだった。
流石にこれは仕掛けでは無理だ。頬をつねる。夢じゃない。
「分かったよ、リディアが異世界人なのは理解した」
「魔法が使えるくらいで分かるんですか?」
「こっちの世界に魔法なんてないんだよ」
「え、どうやって生活しているんですか」
「科学だ」
深掘りされたら困るな。俺は勉強が得意ではない。
「よく分かりませんが、とにかく信じてもらえてよかったです」
安堵したリディアに対して、俺は高揚していた。
いま俺が持っているこれは、どうやら本当に願いが叶う聖杯らしい。リディアが異世界人と証明できた時点で、それが確定された。
「なぁ、なんで大事な聖杯を落としたんだ?」
聖杯を見せびらかして問うた。その扱いに、リディアは眉をひそめる。
「私たちの世界では聖杯を求めて戦争をしていたんです。敵に渡りそうになったので、私の上司が私ごとこの世界に飛ばしました。その時落としちゃったんです」
「なるほどドジっ子か」
「真面目に聞いています?」
あたふた聖杯を落とすリディアを想像したら前半部分が気にならなくなった。
ふと、気になることができた。
「なぁ、リディアも聖杯が欲しいなら願い事があるのか?」
「いえ、とんでもない! 私は聖杯をみだりに使わないように管理する聖杯協会の一員ですから」
「聖杯協会」
曰く、100年前に聖杯が出現した時は邪神が大暴れしたらしい。
その戦禍は異世界中に広がり、最終的に邪神が聖杯を勝ち取った。そこから半世紀にわたって、恐怖政治が続いたとのことだ。
「そこで次回の聖杯出現時に聖杯を管理することを決めたのが、私たち聖杯協会なんです」
リディアはグッと握った拳を胸に当て、誇りを顕示するように顔を上げた。
なるほどな、この聖杯がどんなものかはよくわかった。だが、利用しない手はない。
「悪いけど聖杯使わせてもらうわ。今ここで」
「え、ちょ、えっ?」
リディアは激しく狼狽えた。
「話聞いてましたか!? 私たちは聖杯をみだりに使わぬよう管理しているんですよ」
「俺は知らないよそんなこと。彼女が欲しい。叶わぬ夢だと思ってたけど、聖杯があれば叶えてくれるんだろ?」
「それは、まぁ、そうですけど」
「じゃあ理想の彼女を聖杯に願おう。可愛くて、優しくて、慈愛の心に満ちた天使のような彼女が欲しい」
「恋人が欲しいために聖杯の力を使うのですか!?」
リディアは度し難いものを見るような目になった。やめろ、興奮するだろ。
「そうでもしないと俺に恋人なんてできないもん!」
「そもそも聖杯はあなたのものではありません! あなたに使う権利はありません」
「残念だったな、この国では落とし物を届け出した場合、一部の権利が届けた者に与えられる。さらに一定期間落とし主が現れなかった場合、それをもらえる権利があるのだ」
「え、え?」
「そしてリディアは異世界人。当然身分証明などできない」
「あの、それは……」
「つまり俺がこれを警察に届ければ、遅かれ早かれ俺のものになるのだよ」
「さ、最低です! 宮地さんは最低な人です!」
「ははは、やめてくれ興奮する」
「返してください。それは私たちの世界のものです」
「あ、おいちょっと」
ふにゅ。
リディアが俺に引っ付いて、聖杯を奪おうとした拍子に彼女の胸が当たった。
俺の、手のひらに。
柔らかいその感触は、服の上からでもはっきりわかった。
見た目だと小さいが、触ると確かにある。ライトノベルの貧乳女子の描写は、間違いではなかったのだ。
「あ、あわわ……」
「い、意外とその服って薄いんだな」
「最低です! 最低最悪の男です!」
「今のは事故だって!」
リディアは再び涙目になって、俺の上に馬乗りになった。
見上げるリディアも美しい。月光が金髪を照らし、より輝いて見える。
「異世界人に危害を加えたくはありませんでしたが仕方ありません。実力行使です」
「いいのか? そんなことしたらすぐにでも聖杯を使うぞ。これは人質だぞ」
「ぐぬぬ……」
リディアは下唇を噛んでいた。愛らしい小動物のようにしか見えない。
数秒後、リディアは観念したかのように両手を上げた。
「私の負けです」
「お、おう」
勝負をしていたつもりはなかったんだけどな。
「あといつまで馬乗りしているつもりだ? エロいぞ」
リディアは赤面した。
再びリディアが落ち着くのを待った。よく泣く女の子だ。
といっても、見た感じ中学生くらい。見知らぬ土地でイジられたら泣いてしまうのも無理はないかもしれない。
「それで、負けを認めたリディアさんはどうするんだ?」
「わた、わわ、私が……」
「落ち着けよ。そんなに言いたくないことなのか?」
「私が、聖杯に代わり願いを叶えます」
その言葉に、俺は面食らった。
言っている意味がわからない。リディアが俺の願いを叶えてくれる? そんな魔法があるのなら、聖杯など奪い合いにならないはずだ。
「なぜフェニックスがシルバーブレットを食らうような顔をしているんですか」
「異世界流の鳩に豆鉄砲か?」
「軽口はもう結構です!」
リディアは顔を赤くして叫んだ。もう俺に会話の主導権を握らせないつもりだろう。どんだけウブなんだよ。
そして俺の瞳をジッと見つめた。かくいう俺も異性経験はないので、不意なことにドキッとしてしまう。
「私が、あなたの彼女になります。そうすれば聖杯は不要でしょう?」
「リディアが、俺の彼女に!?」
「改めて言わないでください。屈辱的です」
「いや、中学生は無理だわ」
「ちゅーがくせい?」
あぁ、異世界人に日本の学校制度は伝わらないか。
あとカタコトの「ちゅーがくせい」っていいな。萌える。
「13歳くらいだろ。そんな年端もいかない少女は無理だ」
俺の性癖には当てはまるが、実際に手を出すには犯罪すぎる。
俺がそう言うと、リディアは顔を真っ赤にした。照れているわけではない。憤怒しているようだ。
「私は、こう見えても、17ですが!?」
「えっ、一個下!?」
またリディアは涙目だ。本当に、俺は失言ばっかりのようだ。
「本当に最低です。こんな人の彼女になるだなんて」
「悪かったって。幼く……いや若く見えるからさ。だってリディア肌綺麗だし可愛いし」
その言葉を聞いたリディアは急に顔を背けた。
リディアは耳を真っ赤にして「可愛い、可愛いですか」と繰り返すロボットになった。言われ慣れていないようだ。
三度落ち着いたリディアは咳払いをして、真面目な表情を作った。俺も、流石にもう軽口を叩いたりしない。
「いかがですか? 私が宮地さん……いえ、正輝さんの彼女になります。その代わり聖杯は使わないでください」
不意な名前呼びに心臓が跳ねる。それはズルってやつだ。
「彼女になるってのは口だけで、聖杯を返してもらったらすぐ異世界に帰る気じゃないだろうな」
「ご安心を。私みたいな若輩者に、世界転移魔法は使えません」
「そうか。でもしばらくは俺が預かるぞ。家に金庫があるからそこで保管する。それでいいか?」
「分かりました。不埒なことに使われるよりマシです」
「再確認だが、リディアは俺の彼女になってくれるんだな?」
「はい。屈辱ですが」
今にも踊り出したい気分だ。
自然と口角が上がる。散々だって今日のバイトなんて吹き飛んでしまうほどに嬉しい。
「な、なぜそんなに嬉しそうなのですか。好きでもない女性と付き合うのですよ?」
「おいおい勘違いするなよリディア。俺はお前のこと超タイプだ」
「嘘は結構です」
「嘘じゃない。超可愛いと思っているし聖杯抜きで彼女にしたい」
「ふ、ふん。彼女のご機嫌取りは上手なようですね」
「本心なんだがなぁ」
「も、もう結構ですから!」
リディアは両手で自分の顔を隠した。
分かりやすく照れているな。なんだか可愛くって、つい軽口を叩きたくなってしまう。
ついにできた彼女がリディアのような美少女か。こんなに幸せなことがあるだろうか。いやない。
どうせなら、リディアに惚れられるくらい素晴らしい彼氏になろう。そんでもって聖杯抜きでラブラブだ。
浮かれている気持ちが落ち着いてきたら、ふととあることが気になった。
「そういえばリディアは泊まるアテはあるのか?」
「正輝さんの家に泊まるのではないのですか?」
「……まじ?」
「ダメ、でしたか?」
リディアが上目遣いでスカイブルーの瞳を向けてくる。それもまたズルだ。
付き合ってその日から同棲だと? 段階をすっ飛ばしすぎだ。
しかしリディアは異世界人。俺以外にアテはないだろう。ならば仕方がない。緊急事態だからな。
「ま、まぁいいぞ。遠慮なく泊まってくれ」
「はい。あ、変なことはしないでくださいね」
「……しないよ」
「何ですか今の間は!」
その変なことを想像してしまったからだ、なんて言ったらまたウブなリディアは泣いてしまいそうだから口をつぐむ。
「じゃあ、うち来る?」
リディアはこくりと頷いた。
「俺は宮地正輝。君は?」
「リディア・キューライスです」
「珍しい名前だな」
「当然です。私はこの世界とは違う世界から来たのですから」
「へー。異世界ってやつ?」
「はいそうです」
「へー……えっ?」
聞き流したが、絶対に流してはいけないことだった。
異世界といえばまず思いつくのはライトノベルだ。さしずめそれに影響された中学生だろうか。
ならばと、俺はさらに意地悪を重ねた。
「異世界人なら証拠見せてよ、魔法を使うとかさ」
リディアは目を見開いた。また涙目になるかと思ったが、リディアは立ち上がって腕を前に伸ばした。
「[ホワイトパルス]」
「うおっ!」
リディアの手先が白く輝いた。秋の夜に、光が一つ。魔法のようなコントラストだ。
仕掛けは見つからない。マジシャンというわけではなさそうだ。
「もっとできますよ。[ホワイトサイクロン]」
突如、風が吹き荒れリディアの前に集まった。
渦を巻き、球体になった白い風は忍者漫画の大技のようだった。
流石にこれは仕掛けでは無理だ。頬をつねる。夢じゃない。
「分かったよ、リディアが異世界人なのは理解した」
「魔法が使えるくらいで分かるんですか?」
「こっちの世界に魔法なんてないんだよ」
「え、どうやって生活しているんですか」
「科学だ」
深掘りされたら困るな。俺は勉強が得意ではない。
「よく分かりませんが、とにかく信じてもらえてよかったです」
安堵したリディアに対して、俺は高揚していた。
いま俺が持っているこれは、どうやら本当に願いが叶う聖杯らしい。リディアが異世界人と証明できた時点で、それが確定された。
「なぁ、なんで大事な聖杯を落としたんだ?」
聖杯を見せびらかして問うた。その扱いに、リディアは眉をひそめる。
「私たちの世界では聖杯を求めて戦争をしていたんです。敵に渡りそうになったので、私の上司が私ごとこの世界に飛ばしました。その時落としちゃったんです」
「なるほどドジっ子か」
「真面目に聞いています?」
あたふた聖杯を落とすリディアを想像したら前半部分が気にならなくなった。
ふと、気になることができた。
「なぁ、リディアも聖杯が欲しいなら願い事があるのか?」
「いえ、とんでもない! 私は聖杯をみだりに使わないように管理する聖杯協会の一員ですから」
「聖杯協会」
曰く、100年前に聖杯が出現した時は邪神が大暴れしたらしい。
その戦禍は異世界中に広がり、最終的に邪神が聖杯を勝ち取った。そこから半世紀にわたって、恐怖政治が続いたとのことだ。
「そこで次回の聖杯出現時に聖杯を管理することを決めたのが、私たち聖杯協会なんです」
リディアはグッと握った拳を胸に当て、誇りを顕示するように顔を上げた。
なるほどな、この聖杯がどんなものかはよくわかった。だが、利用しない手はない。
「悪いけど聖杯使わせてもらうわ。今ここで」
「え、ちょ、えっ?」
リディアは激しく狼狽えた。
「話聞いてましたか!? 私たちは聖杯をみだりに使わぬよう管理しているんですよ」
「俺は知らないよそんなこと。彼女が欲しい。叶わぬ夢だと思ってたけど、聖杯があれば叶えてくれるんだろ?」
「それは、まぁ、そうですけど」
「じゃあ理想の彼女を聖杯に願おう。可愛くて、優しくて、慈愛の心に満ちた天使のような彼女が欲しい」
「恋人が欲しいために聖杯の力を使うのですか!?」
リディアは度し難いものを見るような目になった。やめろ、興奮するだろ。
「そうでもしないと俺に恋人なんてできないもん!」
「そもそも聖杯はあなたのものではありません! あなたに使う権利はありません」
「残念だったな、この国では落とし物を届け出した場合、一部の権利が届けた者に与えられる。さらに一定期間落とし主が現れなかった場合、それをもらえる権利があるのだ」
「え、え?」
「そしてリディアは異世界人。当然身分証明などできない」
「あの、それは……」
「つまり俺がこれを警察に届ければ、遅かれ早かれ俺のものになるのだよ」
「さ、最低です! 宮地さんは最低な人です!」
「ははは、やめてくれ興奮する」
「返してください。それは私たちの世界のものです」
「あ、おいちょっと」
ふにゅ。
リディアが俺に引っ付いて、聖杯を奪おうとした拍子に彼女の胸が当たった。
俺の、手のひらに。
柔らかいその感触は、服の上からでもはっきりわかった。
見た目だと小さいが、触ると確かにある。ライトノベルの貧乳女子の描写は、間違いではなかったのだ。
「あ、あわわ……」
「い、意外とその服って薄いんだな」
「最低です! 最低最悪の男です!」
「今のは事故だって!」
リディアは再び涙目になって、俺の上に馬乗りになった。
見上げるリディアも美しい。月光が金髪を照らし、より輝いて見える。
「異世界人に危害を加えたくはありませんでしたが仕方ありません。実力行使です」
「いいのか? そんなことしたらすぐにでも聖杯を使うぞ。これは人質だぞ」
「ぐぬぬ……」
リディアは下唇を噛んでいた。愛らしい小動物のようにしか見えない。
数秒後、リディアは観念したかのように両手を上げた。
「私の負けです」
「お、おう」
勝負をしていたつもりはなかったんだけどな。
「あといつまで馬乗りしているつもりだ? エロいぞ」
リディアは赤面した。
再びリディアが落ち着くのを待った。よく泣く女の子だ。
といっても、見た感じ中学生くらい。見知らぬ土地でイジられたら泣いてしまうのも無理はないかもしれない。
「それで、負けを認めたリディアさんはどうするんだ?」
「わた、わわ、私が……」
「落ち着けよ。そんなに言いたくないことなのか?」
「私が、聖杯に代わり願いを叶えます」
その言葉に、俺は面食らった。
言っている意味がわからない。リディアが俺の願いを叶えてくれる? そんな魔法があるのなら、聖杯など奪い合いにならないはずだ。
「なぜフェニックスがシルバーブレットを食らうような顔をしているんですか」
「異世界流の鳩に豆鉄砲か?」
「軽口はもう結構です!」
リディアは顔を赤くして叫んだ。もう俺に会話の主導権を握らせないつもりだろう。どんだけウブなんだよ。
そして俺の瞳をジッと見つめた。かくいう俺も異性経験はないので、不意なことにドキッとしてしまう。
「私が、あなたの彼女になります。そうすれば聖杯は不要でしょう?」
「リディアが、俺の彼女に!?」
「改めて言わないでください。屈辱的です」
「いや、中学生は無理だわ」
「ちゅーがくせい?」
あぁ、異世界人に日本の学校制度は伝わらないか。
あとカタコトの「ちゅーがくせい」っていいな。萌える。
「13歳くらいだろ。そんな年端もいかない少女は無理だ」
俺の性癖には当てはまるが、実際に手を出すには犯罪すぎる。
俺がそう言うと、リディアは顔を真っ赤にした。照れているわけではない。憤怒しているようだ。
「私は、こう見えても、17ですが!?」
「えっ、一個下!?」
またリディアは涙目だ。本当に、俺は失言ばっかりのようだ。
「本当に最低です。こんな人の彼女になるだなんて」
「悪かったって。幼く……いや若く見えるからさ。だってリディア肌綺麗だし可愛いし」
その言葉を聞いたリディアは急に顔を背けた。
リディアは耳を真っ赤にして「可愛い、可愛いですか」と繰り返すロボットになった。言われ慣れていないようだ。
三度落ち着いたリディアは咳払いをして、真面目な表情を作った。俺も、流石にもう軽口を叩いたりしない。
「いかがですか? 私が宮地さん……いえ、正輝さんの彼女になります。その代わり聖杯は使わないでください」
不意な名前呼びに心臓が跳ねる。それはズルってやつだ。
「彼女になるってのは口だけで、聖杯を返してもらったらすぐ異世界に帰る気じゃないだろうな」
「ご安心を。私みたいな若輩者に、世界転移魔法は使えません」
「そうか。でもしばらくは俺が預かるぞ。家に金庫があるからそこで保管する。それでいいか?」
「分かりました。不埒なことに使われるよりマシです」
「再確認だが、リディアは俺の彼女になってくれるんだな?」
「はい。屈辱ですが」
今にも踊り出したい気分だ。
自然と口角が上がる。散々だって今日のバイトなんて吹き飛んでしまうほどに嬉しい。
「な、なぜそんなに嬉しそうなのですか。好きでもない女性と付き合うのですよ?」
「おいおい勘違いするなよリディア。俺はお前のこと超タイプだ」
「嘘は結構です」
「嘘じゃない。超可愛いと思っているし聖杯抜きで彼女にしたい」
「ふ、ふん。彼女のご機嫌取りは上手なようですね」
「本心なんだがなぁ」
「も、もう結構ですから!」
リディアは両手で自分の顔を隠した。
分かりやすく照れているな。なんだか可愛くって、つい軽口を叩きたくなってしまう。
ついにできた彼女がリディアのような美少女か。こんなに幸せなことがあるだろうか。いやない。
どうせなら、リディアに惚れられるくらい素晴らしい彼氏になろう。そんでもって聖杯抜きでラブラブだ。
浮かれている気持ちが落ち着いてきたら、ふととあることが気になった。
「そういえばリディアは泊まるアテはあるのか?」
「正輝さんの家に泊まるのではないのですか?」
「……まじ?」
「ダメ、でしたか?」
リディアが上目遣いでスカイブルーの瞳を向けてくる。それもまたズルだ。
付き合ってその日から同棲だと? 段階をすっ飛ばしすぎだ。
しかしリディアは異世界人。俺以外にアテはないだろう。ならば仕方がない。緊急事態だからな。
「ま、まぁいいぞ。遠慮なく泊まってくれ」
「はい。あ、変なことはしないでくださいね」
「……しないよ」
「何ですか今の間は!」
その変なことを想像してしまったからだ、なんて言ったらまたウブなリディアは泣いてしまいそうだから口をつぐむ。
「じゃあ、うち来る?」
リディアはこくりと頷いた。
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