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第十話「溜息と、ヨウセイ」

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 ……五年の、ブランク。
 少し呆れもするが、私は、数日でリハビリを達成した。

 しかしその間に確信した。
 以前は少年兵の姿であったが、今回は少女だ。

 そのため男女故の格差───筋力低下が顕著に見られる。
 以前の様なパワープレーは不可能になるだろう。

 確かに魔法による身体強化も可能だが……。
 恐らくこの体ではその反動に耐え切れないだろう。

 そもそも、排泄をすることもままならない。元は私も男性だ。
 しかし、少女とはいえ女性───。

 体の年齢は約十七歳。
 ハニートラップも視野に入れるべきか。

 ……まぁ、いい。殺しに耐えうる体なら私は大歓迎である。

 バックを背負い、フードを被って外へ出る。
 手を振って去ろうとする私の背中を、医者が止めた。

「次に、私に世話にならんでくれよ。───私も、その時は死んでるだろうからね」
「了解しました。……その時は、葬式に参列致しますよ」
「……そうか。楽しみにしておくよ」
「───では」

 会釈して私は去る事にした。
 明るい日差しが目に刺さる。

 目に悪いなどと考えながら、私は復讐に向かうことにした。
 ───その後ろで、医者達が会話を重ねる。

「……アカネ君」
「理解しています。ドクター」
「なら話は早い。行くと良い」
「了解」

 その声が私に届くことは無い。
 少し話をしているのかな?程度である。



 ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢



 渡されたバックには、十二分の食料が詰め込まれていた。
 以前とは違う高待遇。

 ……多少なりとも、感情移入でもしてくれたのだろうか。
 そんな事を思いながら、私はまもなく、街を抜けた。

 時代の移り変わりには驚いた。
 帝国兵の武装も変わっていた。
 しかし帝国兵を見て湧く憎悪の濃さは、未だ変わる事は無い。

 歩く。
 道を馬車が駆け抜けていく。

 歩く。
 一つ夜が明けていく。

 歩く。
 森へ入っていく。

 歩く。
 苔に塗れた帝国荷馬車を、発見する。

「やはり回収はされて居ない。───しかし」

 私は歩みよる。
 その違和感を感じ、そのまま荷馬車に乗り込んだ。

 そして。
 どこからか、笑いが吹き出て来た。

「ハハ。──────やはり、決起したか」

 そこには、積まれていた銃が殆ど消えていた。
 五年前には、山程積んであった筈なのに。

「バレるのが怖いのですかね?少しだけ残していらっしゃる」

 屈んで銃を手に取り、埃をはたき落とす。
 依然として使える様だ。ここは流石に帝国製か。

 ───しかし、盗んだ犯人の居場所が分からない。
 誰なのかは見当が付くが、私は場所を知りたいのだ。

 どうするべきか、盗んだ犯人の場所を、知る方法───。
 あ。

 不意に考えついた方法に、異常に大きな溜息が出る。
 仕方ない。今は猫の手も借りたい状況だ。

「あの騒音を呼ぶしか無いか───ふむ」

 一瞬項垂れ、その場に立ち尽くす。
 息を吸い込んで覚悟を決め、私はその名を呼んだ。

「───聞いているのでしょう。世界妖精……レネ」


明日は三本投稿ですかね。

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