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7月2日 17時27分
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スケッチブックを抱え、わたしは電車に揺られていた。
太陽が地平線に近づいても蒸し暑く、虫の音はおさまる気配もない。
いつもと同じ電車に乗って、家に帰る。その繰り返しだけど、今日は少し何かが違っていた。
わたしの気持ちは澄んだ朝の空気のように清々しかった。絡み付いていた糸がほどけ、息苦しさがなくなった気がする。
その感覚とは別に、妙な違和感があった。
すべて身に覚えがあるのだ。
通学路の見慣れた景色ではない。まるで夢に見たことが現実になったように、ここ数日の出来事には既視感があった。
夢の続きを思い出そうと思考を巡らすと、パッと脳裏に不気味な顔が浮かぶ。
目深に帽子を被った鉄道員の姿だ。頭の中でその人が尋ねてきた。
『 今度はうまくいきそうですか?』
ドキンと心臓が跳ねる。とっさに息を飲んだ。
その人は頭の中でさらに話し続けた。
『初めて見た景色、その時感じた気持ちを忘れなければ、いつだって始まりに帰って来れます』
……思い出した。
わたしは一度死んだ。
そして、気づいた。
わたしはもう一度、あの日々をやり直しているのだと。
自覚したら、怖いくらいに思い出されてくる。
夜、父との会話。翌朝の交通事故。
今度は絵を諦めず描き続けられる人生になるかはわからない。
同じ顛末にならないように、わたしは自分の未来を変えたい。
すべてはわたし次第なんだ!
絶対に、絵を描く未来、いつも通りやってくるなにげない明日に巡り合いたい。
明日で人生終わり?
そうじゃない。これで終わるわけにはいかないんだ……!
太陽が地平線に近づいても蒸し暑く、虫の音はおさまる気配もない。
いつもと同じ電車に乗って、家に帰る。その繰り返しだけど、今日は少し何かが違っていた。
わたしの気持ちは澄んだ朝の空気のように清々しかった。絡み付いていた糸がほどけ、息苦しさがなくなった気がする。
その感覚とは別に、妙な違和感があった。
すべて身に覚えがあるのだ。
通学路の見慣れた景色ではない。まるで夢に見たことが現実になったように、ここ数日の出来事には既視感があった。
夢の続きを思い出そうと思考を巡らすと、パッと脳裏に不気味な顔が浮かぶ。
目深に帽子を被った鉄道員の姿だ。頭の中でその人が尋ねてきた。
『 今度はうまくいきそうですか?』
ドキンと心臓が跳ねる。とっさに息を飲んだ。
その人は頭の中でさらに話し続けた。
『初めて見た景色、その時感じた気持ちを忘れなければ、いつだって始まりに帰って来れます』
……思い出した。
わたしは一度死んだ。
そして、気づいた。
わたしはもう一度、あの日々をやり直しているのだと。
自覚したら、怖いくらいに思い出されてくる。
夜、父との会話。翌朝の交通事故。
今度は絵を諦めず描き続けられる人生になるかはわからない。
同じ顛末にならないように、わたしは自分の未来を変えたい。
すべてはわたし次第なんだ!
絶対に、絵を描く未来、いつも通りやってくるなにげない明日に巡り合いたい。
明日で人生終わり?
そうじゃない。これで終わるわけにはいかないんだ……!
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