1 / 17
プロローグ
しおりを挟む
朝の憂鬱から逃げ出して飛び乗った電車は、異世界に繋がっているような異質さだった。
ひとりも乗客がいない。
ホームには自分ひとりしかいなかったのか……。
そんなことはない。毎日通勤客や学生で電車もホームもごった返しているはずだ。
なぜ自分がここに居るのか、どうやって誰も居ない電車に乗ったのか、乗車時のことをまったく思い出せず、ゾッとした。
慌ただしく通学鞄をまさぐると、スマホが床に落ちた。7月4日7時14分。待受画面が現在の時刻を映し出す。
『北見 朱音 16歳』
鞄の内ポケットから、自分の名前が印字された通学定期券を発見してほっとひと息つく。
ちゃんと定期券がある。改札を通って電車に乗った……はずだ。
すぐに不安になる。改札を通過する動作なんて毎度のこと過ぎて覚えていない。
ふとスマホを見ると、時刻は7時14分で止まったまま。しかも、圏外になっている。状況を確認しようにも電波がなければ調べようがない。
人の気配が無い車両は静まり返り、走行音が耳障りなほどに響いていた。普段はただの背景でしかなかった騒音が、鼓動を急かすようにカタタタン、カタタタンと徐々に早くなる。
突如、車両の窓が大きな音を立てガタガタッと震えた。びくっと肩を震わせ、音がする方に振り向く。隣の車線を走る車両とすれ違うところだった。
早くて目で追えない。
それでも、すれ違う車両にたったひとりの人影が見えて、目を細めた。年齢、性別、体格まではわからない。後ろ姿が見えた気がした。
首を捻らずにはいられない。
朝の通勤、通学ラッシュなのにすれ違う電車の乗車客はたったひとり……。
心細さが限界に達した時、コツコツと足音が近づいてきて、背筋に冷たい感覚が走る。
ひとりも乗客がいない。
ホームには自分ひとりしかいなかったのか……。
そんなことはない。毎日通勤客や学生で電車もホームもごった返しているはずだ。
なぜ自分がここに居るのか、どうやって誰も居ない電車に乗ったのか、乗車時のことをまったく思い出せず、ゾッとした。
慌ただしく通学鞄をまさぐると、スマホが床に落ちた。7月4日7時14分。待受画面が現在の時刻を映し出す。
『北見 朱音 16歳』
鞄の内ポケットから、自分の名前が印字された通学定期券を発見してほっとひと息つく。
ちゃんと定期券がある。改札を通って電車に乗った……はずだ。
すぐに不安になる。改札を通過する動作なんて毎度のこと過ぎて覚えていない。
ふとスマホを見ると、時刻は7時14分で止まったまま。しかも、圏外になっている。状況を確認しようにも電波がなければ調べようがない。
人の気配が無い車両は静まり返り、走行音が耳障りなほどに響いていた。普段はただの背景でしかなかった騒音が、鼓動を急かすようにカタタタン、カタタタンと徐々に早くなる。
突如、車両の窓が大きな音を立てガタガタッと震えた。びくっと肩を震わせ、音がする方に振り向く。隣の車線を走る車両とすれ違うところだった。
早くて目で追えない。
それでも、すれ違う車両にたったひとりの人影が見えて、目を細めた。年齢、性別、体格まではわからない。後ろ姿が見えた気がした。
首を捻らずにはいられない。
朝の通勤、通学ラッシュなのにすれ違う電車の乗車客はたったひとり……。
心細さが限界に達した時、コツコツと足音が近づいてきて、背筋に冷たい感覚が走る。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
忘れさせ屋~あなたが忘れたい事は何ですか~
鳳天狼しま
ライト文芸
あなたは忘れたいことはありますか?
それはだれから言われた言葉ですか
それとも自分で言ってしまったなにかですか
その悩み、忘れる方法があるとしたら……?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
いえろ〜の極短編集
いえろ~
ライト文芸
私、いえろ~が書いた極短編集です。
☆極短編・・・造語です。一話完結かつ字数がかなり少なめ(現在目安1000字前後)の物語。ショートショートって言うのかもしれないけどそんなの知らないです(開き直り)
ー ストーブ ー
ストーブを消した五分後、いつもつけ直してしまう女の子のお話。
ー 大空 ー
色々思い悩んでいる学生は、大空を見てこう思ったのだそうだ。
ー ルーズリーフ ー
私が弟を泣かせてしまった次の日、弟はこれを差し出してきた。
ー Ideal - Idea ー
僕は、理想の自分になるために、とにかく走った。
ー 限られた時間の中で ー
私は、声を大にして言いたい。
ー 僕を見て ー
とにかく、目の前にいる、僕だけを見てよ。
ー この世も悲観したものじゃない ー
ただ殻に閉じこもってた、僕に訪れた幸運のお話。
海神の唄-[R]emember me-
青葉かなん
ライト文芸
壊れてしまったのは世界か、それとも僕か。
夢か現か、世界にノイズが走り現実と記憶がブレて見えてしまう孝雄は自分の中で何かが変わってしまった事に気づいた。
仲間達の声が二重に聞こえる、愛しい人の表情が違って重なる、世界の姿がブレて見えてしまう。
まるで夢の中の出来事が、現実世界へと浸食していく感覚に囚われる。
現実と幻想の区別が付かなくなる日常、狂気が内側から浸食していくのは――きっと世界がそう語り掛けてくるから。
第二次世界恐慌、第三次世界大戦の始まりだった。
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
旦那様、離縁の申し出承りますわ
ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」
大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。
領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。
旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。
その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。
離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに!
*女性軽視の言葉が一部あります(すみません)
月の声が聴きたくて ~恋心下暗し~
沢鴨ゆうま
ライト文芸
「タク、この前の続き聴かせてよ、月のやつ」
主人公の女子高生、早貴に対して親友以上の気持ちを持つ千代。
早貴を意識し始めた幼馴染の多駆郎。
この二つの恋が三人に関わるキャラ達を巻き込む。
気持ちをぶつけ合い、喜びも悲しみも経験として乗り越えてゆく。
登場人物それぞれの生き様をご覧ください。
そして、そんな中にも少しのロマンで味付けは忘れていません。
トキメキを求めている方々にお届けします。
ツイッターにて、作品紹介PVを公開しております。
よろしくお願い致します。
(小説家になろう、カクヨム、ノベルアッププラスへも投稿中)
※この作品は全てフィクションです。それを前提にお読みくださいませ。
© 2019 沢鴨ゆうま All Rights Reserved.
転載、複製、自作発言、webへのアップロードを一切禁止します
タグ: 女子高生 年上 大学生 学園 高校 高校生 中学生 キス 学校 姉妹 姉弟 鈍感
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる