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行動は規格外のようです。
しおりを挟む「ここが根城ってやつだね」
イブとソルは森の中にある廃れた屋敷の前に立っていた。
貴族の別荘か何かだったのを偶然見つけて住み着いたのだろう。外壁には蔦が絡み付いていて大分汚れている。
辺りはもう既に真っ暗なので室内の明かりがよく見える。おそらくそこに人が居るのだろう。
村長の話によるとここに住み着いているのは十数人の男達で全員が標準以上の神力を持っているらしい。
「イブ、いいか、こっそり侵入してサクッと駆逐するぞ」
「うん、わかった」
イブは神妙な顔で頷いた。
バンッ!!
「たのもーーーーーーーーーー!!!!!」
「お前は何がわかったの!?」
イブは正面の扉を思いっきり開くと屋敷中に聞こえるような大声で叫んだ。
イブはソルに向けてえへへ、と笑った。
「一回言って見たかったの!」
「くっ、可愛いから怒れない!」
「罪な女だね」
「大罪だな」
正面玄関から入るとそこには広いスペースがあった。
屋敷内のあちこちから野太い声が発されドタバタと走ってこちらに向かって来る音がする。
「イブ、そこで突っ立って見てろよ」
「は~い」
イブはひらひらと手を振ってこたえる。
男達はソルとイブの姿を認めると一目散に殴り掛かってくる。
「オルァァァァァァァ!」
「血気盛んだな」
殴り掛かって来た男の拳を躱し肘で鳩尾に一発。その男の体を後ろから迫って来たもう一人に向けて投げ飛ばす。
椅子を武器にしてきた奴は椅子ごと蹴り飛ばし壁に激突させる。
離れた所から神力を使って物を飛ばす奴も居るが、ソルの動きは全く鈍らない。
窓から射し込む月明かりがソルを照らし、ソルが次々に男達を薙ぎ倒していく光景は、まるで一つの演舞のようであった。
「この程度はソルの敵じゃないよねぇ」
イブは蚊帳の外から独り呟く。
イブは言いつけを守り、ただ突っ立ってソルの独壇場を眺めていた。
闘いと言うよりは一方的な殲滅と言った方が正しいそれを。
すると、イブの方向に飛ばされた男が起き上がり、イブに向けて拳を振るおうとした。
神力を纏って淡く光る拳がイブに降り下ろされる---。
「ぐあっっっ!!」
だが次の瞬間、苦悶の声を上げたのは拳を振るったはずの男だった。
「なっ!?」
男は今起こったことが理解できない、というような表情を浮かべている。
確かに男は少女に拳を放ったのだ。しかし、それは少女の周りの"何か"に反発を受けて自分に衝撃が返ってきた。
少女は一体どれ程の神力を纏っているのだろうか。
「むだむだぁ~、神力を纏った攻撃は私には効かないよ。相性が悪すぎて反発するからね」
「!?」
人間が持っている神力はすべて主神ユイスから与えられたものなのでそこに相性の悪さは存在しない。
つまり、少女が持っている神力は他の神から与えられた――――。
ドサッ!
そこまで考えて男の意識は暗転した。
ソルが気絶させたのだ。
「イブ、無事か?」
その言葉が耳に届く頃にはソルが近くに来てイブを抱き締めていた。
「私が無事じゃなかったらこいつら国一つくらい落とせると思う」
「まあそうなんだが……」
イブが辺りを見回すと男達は全員地に沈んでいた。
「イブが俺以外に触られるのを想像すると吐き気がする」
「じゃあもうちょっと人を飛ばす方向を考えてくれるかな」
「ごめんなさい。久々の闘いに夢中になってました」
ソルはイブを抱き締めたままイブの後頭部を撫でる。
「ふふふっ」
元々怒ってはいなかったが撫でる手つきが心地良かったのでイブは少しサービスをしてやる気になった。
ソルに微笑みを浮かべて一言。
「じゃあ村まで抱っこして運んでくれたら許す」
ソルは盛大に鼻血を吹いた。
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