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つまりこれはありがとうのパーティーなんだね

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 キティは再びパーティーに参加中。つまりキティはパリピ。

「ジーク、結局これは何のパーティーなの?」
「300年程前にこの国を救ってくれた人に感謝する催しだ。本人はもういないが……」
「ジークの知ってる人だったの?」
「俺の従妹だ。つまりリンドヴルムの娘だな」
「そうなんだ」

 ジークの膝に座っているので、ちょこんと体重をかける。

「キティは気にしなくてもいい。食べ物でも取ってこい」
「うん」

 ジークの言った通りに食べ物を取ってくることにする。


 私はジークの膝からピョンとおりた。


 私が会場をテコテコ歩いていると、周りの人達がギョッとするのが分かる。それもそうだろう、私の両腕には猫の散歩紐のように紐が回っていて、その紐の先をジークが持っている。迷子、誘拐防止らしい。
 この散歩紐はよくできたもので、伸縮自在な上に対象者以外の物体はすり抜ける。つまりはパーティ会場でも邪魔にならない逸品なのだ。
 ジークが開発局に特注したらしい。


 私はお皿に好きなものを盛ってジークの所に戻った。


「キティ、おいしいか?」
「うん、むぐむぐ……」

 ジークの膝の上でご飯を食べていると、周囲が徐々に青白い顔になってきてる気がする。
 レオンが近付いてきてコッソリと言う。

「魔王様、ご衣装に食べカスが……」
「うむ、キティはかわいいだろう」
「……」

 レオンはこりゃダメだって顔して下がっていった。

 一応ジークに落ちちゃった食べカスを払っておく。

「キティは優しい子だな」

 ……なんかいたたまれない。


 私がひとしきり満足すると、ジークが珍しく少し躊躇いがちに話を切り出した。

「……キティ、一つ頼みがある」
「なに?」






***






 扉を静かに開けると、椅子に座って窓から月を見ているリンドヴルムがいた。

「…………リンちゃん」
「君はいつから僕をリンちゃんって呼ぶようになったんだい?」

 リンドヴルムが振り向いてキティに視線を向けた。

「リンちゃんがしんみりしてるので慰めてこいとジークに言われました」
「直球だねぇ」


 リンドヴルムは力なく笑う。

「……」
「……!」

 暫しの無言の後、リンドヴルムがキティを手招きして近くへ呼んだ。

 キティが素直に寄っていくと、膝の上に抱き上げられた。
 無言でキティのお腹にリンドヴルムが手を回す。


「君は……」
「キティちゃん」
「……キティちゃんはシルヴィアの小さい頃によく似ている気がするよ。もう、何百年も前のことだから記憶も曖昧だけどね」

 キティの頭を撫でながら、リンドヴルムは語る。

「シルヴィアがこうして感謝されているのはどうしてか、キティは知ってる?」
「……ううん、知らない」

 少し迷ってキティがそう答えるとリンドヴルムは薄く微笑んだ。

「シルヴィアはね、代償魔法で自分を対価にこの国を救ったんだよ」

 キティは黙ってリンドヴルムの話を聞いた。

「僕とジークハルトの二人が偶然留守にしていたタイミングで邪竜がここを襲ったんだ。その邪竜自体はシルヴィアがすぐに倒した。でもね、その竜が魔力を食らいつくすという厄介な呪いを死ぬ瞬間にばら撒いたんだ」

 ピクンとキティが反応した。
 そんなキティをリンドヴルムが優しく撫でる。

「そうだね。魔力がなくなったら魔族は死んでしまう。シルヴィアは急速に広がっていった呪いから皆を守るために自ら犠牲になったんだ」

 そう語るリンドヴルムの声音には、誇らしさと悲しみ、そして後悔が混ざっていた。



「……おっと」

 キティが向きを変えてギュッとリンドヴルムに抱きついた。

「慰めてくれてるのかな? 君はいい子だね」
「……しょうがないから、初めて会った時に襲われたの許してあげる」
「あ、まだ根に持ってたんだ」
「む」
「ごめんごめん」

 ふふっとリンドヴルムが笑う。


「そろそろジークハルトがそわそわし始めている頃だろう。もう部屋へお帰り」
「リンちゃんは元気でた?」
「キティちゃんがかわいいから元気になったよ。ジークハルトにもそう伝えてくれるかい?」
「わかった」









 キティはリンドヴルムに送られて部屋まで帰ってきた。

「じゃあねキティちゃん、また明日」
「うん、おやすみなさい」

 リンドヴルムからジークハルトにキティが受け渡された。キティは抱っこされたまま送られてきたのだ。


 パタンと扉が閉まりリンドヴルムの姿が見えなくなる。


「叔父上と仲良くなったみたいだな」
「うん」
「俺の頼みを聞いてくれてありがとう。叔父上も普段のこの時期よりは元気そうだ」

 チュッとキティの額にジークハルトがキスを落とした。

「どういたしまして……」
「ふっ、もう眠そうだな。早く着替えて寝よう」
「ん……」


 目がトロンとしてきたキティを見てジークハルトの顔が緩む。






 キティをベッドに寝かせて、ジークハルトは掛布団の上からキティのお腹を撫でて寝かしつけていた。

「……」

 ジークハルトは掛布団をめくってキティのお腹の上に何ものっていないことを確認した。……明らかにポッコリしている。


「……食べ過ぎだ……」

 このままではキティが食べごろスタイルになってしまう、とジークハルトは再びダイエットをさせることを決意した。






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