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二章

シリルと師匠

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 シリルは床に正座して大人しくししょーのお説教を受けていた。意外に思ってたけど、後から聞いたら大人しくしてるのが一番お説教が終わるのが早いかららしい。
 会いに来るのが遅いこと、この前任務でやらかしたことなどを一頻り怒られると、お説教は終了した。

「―――あ、終わり?」
「……儂はまだまだ説教を続けてもいいが?」
「それはお断りするよ。いろいろごめんなさい師匠~」

 さらっと謝って正座を解くシリル。怒られ慣れてるね。

「シロちゃんお待たせ~。お菓子の時間にしよっか。お茶は僕が入れてきてあげるね~」
「ありがとう」

 シリルは勝手知ったる様子で工房の中にあるキッチンに向かった。
 そして取り残されたししょーと私。

「ちびっこ……シロや、あいつはお前に優しいか?」
「とっても優しいよ。シロのお兄ちゃんだもん。……爆弾魔だけど」
「そうかそうか」

 目尻を下げるししょー。

「シロのおかげであいつは随分人間らしくなった。ここに初めて来た時は感情のない人形のようなやつだったからな。そんな奴が爆弾の魅力に目覚めて変質的な爆弾魔になった時は奴弟子入りさせたことを激しく後悔したもんじゃよ。儂も弟子の中から犯罪者を出すのは嫌だからのう」

 ふぉっふぉっふぉっと笑うししょー。何しでかすか分かんない人にうっかり危険物渡しちゃったんだもん。そりゃ焦るよね。誰でも犯罪の片棒は担ぎたくないし。

「幸いまだ犯罪を犯したことはないが、ギリギリの行為はしばしばしてたからのう。その度にブレイク殿に頼まれて儂が叱ってるんじゃよ」
「パパに頼まれて?」
「ああ、自分が言うよりも儂から叱った方がシリルには効果があると言われてな。特殊部隊の発足当初は割としょっちゅう叱りつけに行っとったわ」

 ケラケラと笑うししょー。

「まあ、問題行動もお前さんが来てからは減っておったんじゃがな」
「そうなの」

 結構問題行動多い気がするけど。前はもっと多かったってことかな。


「おまたせ~。お茶入れてきてあげたよ~」
「ありがとうシリル」
「悪いな」

 シリルが机の上にお茶とお菓子を用意してくれたけど、私の座高じゃ届かない。すると、シリルが私をひょいっと抱き上げてししょーの膝の上に置いた。
 一気に机の上が見やすくなる。

「シロは師匠の膝の上ね。思う存分こき使ってやって。おじいちゃんって呼んでやればそのオヤジなんでもしてくれると思うよ」
「おい……」
「おじいちゃんシロあれ食べたい」
「ん? どれじゃ?」

 おお……。
 おじいちゃんの目尻が一瞬で下がった。ほんとに子ども好きなんだね。シロも可愛がってくれる人は好きだよ。

 おじいちゃんが取ってくれたお菓子を私が夢中で食べてる間、二人はいろんな話に花を咲かせていた。なんだかんだ仲いいんだろうね。シリルも逃げずにちゃんとお説教受けてたし。

 にしても、おじいちゃんのお膝すごい座り心地いいな。座り慣れてるパパには負けるけど。太ももがガッチリしてるからかな。面積が広いから太ももの上で横になれちゃいそう。
 ごろんと横になると、おじいちゃんがソファーの上で胡坐をかいてくれた。胡坐の中に体がスッポリと納まる。なんたるフィット感。
 にょい~んと手足を伸ばしても全然余裕だ。

「ぐぅっ……!」
「かわいいでしょ」
「ああ」

 おじいちゃんのお膝で仰向けに寝っ転がってると、シリルがどこからかブランケットを持ってきて私の上にかけてくれた。

「シロそろそろお昼寝の時間でしょ? そのまま寝ちゃいな」
「まだ眠くないよ?」
「いっつもそんなこと言ってすぐ寝ちゃうだろ~」

 ぐりぐりと頭を撫でられる。

「シロはかわいいのう」

 おじいちゃんが私のお腹をポンポンする。
 むぅ、さすがシリルのししょー。なかなか熟練されたお腹ぽんぽんだ。年の功だね。


 おじいちゃんにお腹ぽんぽんされてたら、あっという間に睡魔が私を迎えに来た。









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