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二章

シリルの師匠に会いに行く!

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 今日はシリルの師匠に会いに行く日だ。
 小綺麗な服を着て暇つぶしの道具とお小遣いの入ったポシェットを斜めに掛ける。

「うん、今日もかわいいな。じゃあシリル、シロの事は頼んだぞ」
「任せてください」

 そう言ってシリルが私をヒョイっと抱き上げた。

「え? パパは一緒に行かないの?」
「俺は会議が入っちゃったんだ」
「え~」

 聞いてないよ。じゃあパパ一緒に行かないんだ。

「シリルの師匠にあったらちゃんとご挨拶するんだぞ。できるか?」
「できるよ!」

 はーいと右手を上げて答える。
 いい子いい子と頭を撫でられ、私はシリルに引き渡された。

「じゃあ行ってきますね隊長」
「いってきまーす!」
「ああ、行ってらっしゃい」




***



 まずシリルが向かったのはお菓子屋さんだった。

「ししょーのところに行くんじゃないの?」
「手土産を買ってくんだよ。あのオヤジ、顔に似合わず甘党だから。シロのお菓子も買ってこうね~」
「やったぁ!」

 棚から牡丹餅だね。にしても、シリルってちゃんと手土産とか持ってくんだ。なんとなく手ぶらでいきなり突撃するイメージだった。

「手土産持ってくとお説教の時間が短くて済むんだよ~」
「……」

 碌な理由じゃなかった。





 サクッと手土産を購入したシリルに連れられてきたのは、街からそこそこ離れた場所にある工房だった。そりゃあ爆発物を作るわけだから街中にはないよね。距離があるとはいえ、シリルが抱っこで連れてきてくれたから移動は楽チンだった。

「師匠ー! 来たよ~」

 シリルが外からそう声を掛けると、ガラガラと戸が開いた。そして中からヌッと人が出てくる。
 その人を見て私はポカンと口を開いた。

「あ゛あ゛ん? シリルおめぇ、随分顔出すのが遅かったじゃねぇか」

 工房から出てきたのは、般若のような顔をした巨人だった。入り口が狭いのか若干屈んで戸をくぐっている。
 これは―――

「クマだ!」

 でかくてもじゃもじゃしてるし、これはクマだね。パパよりも頭一つ分くらい大きそうだ。
 クマだ! と私が言った瞬間、シリルはお腹を押さえて笑い出した。

「ヒ―ッ、あっはっはっは! そうだよシロ、このクマさんが僕の師匠だ」
「シロ……? そうか、このちびっこが噂の子か。ちびっこ、儂はこやつの師匠のワルドだ。れっきとした人間じゃよ」
「ししょー人間なのね」

 規格外に大きな手が差し出されたので私も手を差し出す。握手。

「え~? なんか師匠シロに甘くない? 僕がクマなんて言ったら問答無用で殴るくせに」
「あたりめぇだ。お前には悪意があるだろうが」

 遠慮なく言い合う二人は話している内容とは裏腹に仲がよさそうだ。信頼し合ってるんだね。

「シリル、ししょーに手土産渡さなくていいの?」
「あ、そうだったね。ほら師匠、師匠の好きなお菓子買ってきてあげたよ」

 ズイっと紙袋を差し出すシリル。

「なんでそんなに偉そうなんじゃ……。まあありがたく受け取っておこう」

 ししょー、結構嬉しそう。そんなに好きなのかな。

「ほら、シロ、こんな巨人なかなかいないから登っていいよ。このオヤジ子供好きだから子供には怒らないし」
「は~い」

 ししょーの足は木の幹みたいに太かった。実は一目見た瞬間から登りたかったんだよね。肩車希望。
 シュルシュルとししょーを登る。うむ、中々登り甲斐のあるししょーだ。

「おおっ、ははは、元気なちびっこだな」
「うん、シロ元気」

 肩まで登った時点でかなり地面が遠かった。パパより身長高いもんね。

「どれ、爺が肩車をしてやろう」
「やった~!」

 ししょーが肩車をしてくれた。私の足を掴む手がすごく大きくてガッチリしてる。安心感がすごいね。

「ふおおおおおお!! ししょー高い! すごい!」

 今までで一番高い肩車だ。すごく見晴らしがいい。楽しい。

 その後、サービスのいいししょーは私を肩車したまま近くの森をお散歩してくれた。とっても楽しかったです。
 私達の後を機嫌よさげについて来ていたシリルは、「師匠の機嫌がいいから今日はお説教なしだな~」なんて小声で呟いてた。高性能なシロの耳にはバッチリ聞こえちゃってるよ。

 森をぐるっと一周して工房の前まで戻ってくると、ししょーは私を肩から下ろした。そして私の頭をワッシワッシと撫でる。

「どうだちびっこ、楽しかったか~?」
「うん! ししょーありがとう!!」
「お、この年できちんと礼が言えるなんて偉いな~。こんなちびっこでも例が尽くせるってのにシリル、お前ときたら……」

 ししょーがギュルンッとシリルの方を向いた。
 あ、なんか不穏な気配。

「し、師匠、せっかく師匠の好きなお菓子買ってきたんだからさ、お茶にしない?」
「―――シリル、お前の諸々のやらかしは耳に入ってる。まずはその説教からだ」

 説教が終わったらお茶にしよう、と師匠はシリルに向けてニッコリと笑った。











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