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二章
アニの看病をする
しおりを挟むとりあえず、氷枕と氷嚢は一つずつ使い、後は冷やしておくことになった。
アニの体を起こして氷枕を敷いてあげる。すると、顔がほんのりと赤いアニがむせび泣き始めた。
「うぅっ、シロちゃんが看病してくれる日が来るなんて。これなんて天国?」
「熱で情緒不安定になってるな」
「いや、これ割といつも通りじゃないですか?」
パパとシリルの会話を聞きながらむせび泣くアニの涙を拭いてあげる。そしたら余計に泣き始めた。拭いても拭いても涙が湧き出てくる。
「……シロ、そのままだとそいつはずっと泣き続けるぞ」
おろおろと涙を拭い続ける私にエルヴィスが若干呆れた声で言った。その間もアニは「おおぎくなっだねぇ~!」とか鼻声で言いながら泣き続けている。熱もあるのに疲れないのかな?
試しに涙を拭く係をイオくんに交代してみる。
「ほらアニ~泣き止みな~」
スンッ
イオくんがタオルでアニの頬を拭おうとした瞬間、アニが泣き止んだ。あげくの果てになんでお前なんだという内心をあからさまに顔に出している。
「うわ~、なにこいつ。屋根裏ネズミ達のエサにしてやろうか。シリル、なんか爆弾ない?」
「あるよ」
「ちょおおおおおおおおおっとまったああああああ!! イオ、こいつ一応病人だから! シリルも手榴弾渡さない!!」
ピキッと青筋を立てたイオくんをエルヴィスが宥める。そしてシリルが渡した手榴弾をイオくんから取り上げた。弟のためにがんばるね、お兄ちゃん。
弟のために体を張る兄弟愛にシロはホロリだよ。
「あれ? 今度はシロが泣きそうだよ?」
「なんでだ!?」
兄弟愛に感動してると、すぐパパに抱っこされた。泣きそうになってる理由を聞かれたから、兄弟愛に感動したことを伝えると困惑したように首を傾げられた。
「? シロは感性がちょっとズレてるかもしれないな」
パパは頭の上に疑問符を浮かべながらもよしよしと私のことをあやしてくれた。
「みてみて~おかゆ持ってきたよ~」
いつのまにかいなくなっていたシリルがおかゆを持って戻ってきた。今度はちゃんと入り口のドアから入ってくる。
「はいアニあ~ん」
「いやなんでお前なんだよ。シロちゃんがいいんですけど」
「え~、風邪の時くらいは優しくしてあげようとしたのに~」
シリルは口を尖らせつつもベッドの横にある椅子から腰を上げた。
「どうするシロ? あ~んしてあげる?」
「うん。してあげる」
椅子に座るのでは手が届かないので、ベッドの上に乗りあげる。
「はいアニあ~ん」
「グフッ」
興奮でアニは咳き込んだ。いつもならもうちょっと叫んだりするのに今日は咳き込むだけ。ほんとに具合悪いんだね。
優しくアニの背中をさすってあげる。
あーんでアニにおかゆを食べさせ終わると、アニは早々に寝てしまった。とっても安らかな寝顔だ。お腹の上で手間で組んじゃってる。
シリルがアニの頬をつついた。
「これ大丈夫? ほんとに寝てるだけ? シロのあーんが幸せすぎて召されちゃってない?」
「……息はしてるな」
パパがアニの口に手を当てて呼吸を確認した。冷静なのか動揺してるのか分かんないね。
イオくんがアニの寝顔を覗き込む。
「すっごい幸せそうに寝てるし、このままにしてあげようか」
「そうだね」
イオくんの言葉にみんなが頷く。そして静かにアニの部屋を後にした。
私を抱っこしてパパが廊下を歩く。
「アニ、早く元気になるといいね」
「まあそうだな、あいつが騒いでないと調子が狂うしな」
「……パパ、素直じゃないね」
素直に心配って言えばいいのに。イオくんとかもそうだけど、シロの家族はみんなどこか意地っ張りだ。
むすっとした顔になったパパが何かを言う前に、私はパパの肩に顔を埋めて寝たふりをした。
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