天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの

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二章

アニが風邪ひいた

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「―――あ、アニ……?」
「ん? どうしたのシロちゃん」
「お顔が真っ赤だよ?」

 アニの様子が明らかにおかしい。お酒を飲んだ時のように顔が真っ赤だし、なんだかフラフラしている。
 身長的に私じゃとどかないので、エルヴィスにアニのおでこを触って確認してもらった。
 ペタッとアニのおでこを触ったエルヴィスが驚いたように数歩後ずさる。そして、自分の口を片手で覆った。

「―――ば、」
「ば?」
「バカが風邪ひいたぞーーー!!!」

 エルヴィスが叫ぶと、そこかしこから「なんだって!?」という声が聞こえてくる。
 やっぱり、アニ熱出てたんだね。昨日のお花見でもくしゃみしてたもんな~。
 アニはエルヴィスの大声で頭痛までしてきたらしく、頭を押さえながら「兄さんうるさいよ」と、静かに返していた。すごい、態度がいつもと全然違う。
 エルヴィスも、アニのその態度で本当に具合が悪いと悟ったのか、「みんなー! アニを寝かせるぞ!!」と言って、数人掛かりでアニを担ぎ、部屋に運んで行った。
 大騒ぎだね。
 今まで全然体調を崩したことがないらしいアニが熱を出したってことで、特殊部隊は大騒ぎだ。パパもなんだかんだ心配そうにしてる。

 私はいつもとはちょっと様子の違うパパの手を掴んだ。

「パパ、アニの看病しよう!!」

 前に私が熱を出した時もアニはお見舞いにきてくれたし、今こそ恩を返すときだ!!
 私がそう言うと、パパも「そうだな」と言って看病の準備に取り掛かった。

 私に風邪がうつるといけないからって、問答無用でマスクを装着される。そしてパパもマスクを着けていた。

 風邪といえばまずは氷嚢とか氷枕だよね。とりあえずその二つを用意してパパとアニの部屋に向かう。
 パパがアニの部屋の扉を開けてくれたので、中に入る。

「アニ~」

「「「氷嚢と氷枕持ってきたよ(ぞ)!」」」

 ……ん?
 誰かとセリフが被ったな。それも複数人。

 見れば、窓からはシリルが、屋根裏からはイオくんが私達と同じように氷嚢と氷枕を持ってアニの部屋に入って来ていた。


「いやみんなどれだけこいつのことを冷やす気だよ。そんだけ氷があったらキンキンだよ。てかイオとシリルはどっから入って来てんだ」

 ありがたいけど氷が多すぎるとエルヴィス。

「いや~、隊舎の氷が切れてたからわざわざ外まで調達しに行ってたんだよ。シリルもそうでしょ?」
「そ~。僕ってばアニが体調を崩したことに動揺して、うっかり窓から入ってきちゃったよ」
「あ、俺も~。普段からネズミ達と交流する時はこっそり屋根裏を通ってるから、うっかり屋根裏の通路を使っちゃったよ」

 あはははと笑い合う二人。イオくん、動物好きなのは知ってたけど、ついにネズミと交流できるようになったんだ……。

 普段ならこの二人に混ざって奇行をするアニも今はダウン中。これはこれでちょっと寂しい気がするね。
 私はアニの眠っているベッドまでテコテコと歩いて行った。

「アニ、大丈夫?」
「うっ……! シロちゃんが心配してくれた! それだけで俺の風邪なんて吹っ飛ぶよ!! ―――ゴホッ! ゴホッ! グハァッ!!」
「あ、死んだ」
「流石のアニでもシロが看病に来ただけで風邪は治せなかったか」
「むしろ興奮して悪化したんじゃないか?」
「お前ら、病人にも容赦ないな……」

 いつもと変わらずわちゃわちゃと騒ぐみんな
を見て、エルヴィスがそう呟いた。







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