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二章
雪かき!
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シロが朝起きたら足元にクロが出現していた。
シロは布団の上をモゾモゾと移動し、クロのもとへと移動する。
「クロがいる。なんで?」
「……しのび、こんだ……」
「エンペラーに嫉妬して昨日シロが寝た後潜り込んできたんだ」
クロの説明にブレイクが補足する。
「そーだったの」
「…………」
クロは無言でむぎゅっとシロを抱きしめた。そしてそのまま二度寝を始めてしまう。
シロの耳元でクロがスース―と寝息を立てている。
「クロ、寝ちゃった」
「寝ちゃったな」
「……シロ、もう眠くないんだけど」
温かいモフモフに包まれてぐっすり眠ったシロは完全に目が覚めていた。クロの二度寝に付き合ってあげたいところだが全く眠気がやってこない。
シロは父を見上げて助けを求める。
「パパどうすればいい?」
「まだエンペラーも寝てるから抱き着かせとけ。ワンコ同士仲良く寝るだろ」
「そうだね」
シロは自分を抱きしめている腕をそっと放し、クロを横たえるとエンペラーの胴体にその腕を巻きつけた。
そっと手を放しても、一人と一匹は穏やかに眠っている。
「よし!」
「シロこっちおいで。顔洗うぞ~」
「は~い」
***
シロとブレイクは身支度を整えて食堂になってきた。
「しぃちゃんおはよ~」
「おはようイオ君」
「昨日はチョコありがとね。おいしかったよ」
「えへへ」
イオはシロを抱き上げると、頬同士をスリスリと擦り寄せた。
「しぃちゃんのほっぺは大福みたいだねぇ」
「シロのほっぺもっちもちなの」
イオに向けてドヤ顔を披露するシロ。
「エンペラーはどうしたの?」
昨日一緒に寝たんだよね、とイオ。
「まだクロと一緒に寝てるよ」
「クロと?」
「うん、昨日こっそり忍び込んできてたの。みんなでいっしょに寝たんだよ」
「え~なにそのかわいい光景! 俺も見たかった~!!」
イオは抱き上げていたシロを床に下ろすと、「今からでも二匹の寝顔見てくる~」と駆けて行ってしまった。
「あ、おはようシロ~」
「おはようシリル」
「今日は雪かきがんばろーね。僕雪かき得意なんだよ」
「そうなんだ」
あまりシリルが力仕事が得意というイメージを持っていないシロとしては意外だ。
***
「パパ、雪かきってなんのためにするの?」
「雪の中に道を作ったり、建物の負荷を減らしたりとか、いろんな理由があるな」
「そうなの」
ドゴオオオオオオオン!!!
屋根の上で派手な爆発が起こり、積もっていた雪がはじけ飛ぶ。
「……雪、なくなったねぇ」
「なくなったなぁ」
シロ達は隊舎から離れた所でその光景を眺めていた。近くにいると落ちてくる雪や爆発に巻き込まれる可能性があるからだ。
「重たい雪が乗ってるのと爆破されるの、どっちが負担大きいんだろうね」
シロがポツリと呟いた。
「こらあああシリル~!! なにしてやがんだ~!!!!」
「え!? なにオッサン!! なんで怒ってんの!?」
豪快な雪かきを披露したシリルが怒ったオッサンに追いかけられている。
「お~、今年はオッサンが俺の代わりにシリルを止めてくれるから助かるな」
エルヴィスが追いかけっこをする二人をシロの横で楽しそうに眺める。
「今年は?」
「あいつ毎年同じことやらかすんだよ。なぜか雪かきに自信持ってるし。おかげで屋根を頑丈な素材で作りなおしたんだぞ?」
「大変だね」
「悪気がないから余計立ち悪いんだよなぁ……」
その後、シリルが爆弾を使うのを諦めるまで追いかけっこは行われた。だが、そのおかげで特殊部隊の隊舎の周りには雪が踏み固められた道ができたのだった。
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