71 / 104
二章
雪かき!
しおりを挟む「!」
シロが朝起きたら足元にクロが出現していた。
シロは布団の上をモゾモゾと移動し、クロのもとへと移動する。
「クロがいる。なんで?」
「……しのび、こんだ……」
「エンペラーに嫉妬して昨日シロが寝た後潜り込んできたんだ」
クロの説明にブレイクが補足する。
「そーだったの」
「…………」
クロは無言でむぎゅっとシロを抱きしめた。そしてそのまま二度寝を始めてしまう。
シロの耳元でクロがスース―と寝息を立てている。
「クロ、寝ちゃった」
「寝ちゃったな」
「……シロ、もう眠くないんだけど」
温かいモフモフに包まれてぐっすり眠ったシロは完全に目が覚めていた。クロの二度寝に付き合ってあげたいところだが全く眠気がやってこない。
シロは父を見上げて助けを求める。
「パパどうすればいい?」
「まだエンペラーも寝てるから抱き着かせとけ。ワンコ同士仲良く寝るだろ」
「そうだね」
シロは自分を抱きしめている腕をそっと放し、クロを横たえるとエンペラーの胴体にその腕を巻きつけた。
そっと手を放しても、一人と一匹は穏やかに眠っている。
「よし!」
「シロこっちおいで。顔洗うぞ~」
「は~い」
***
シロとブレイクは身支度を整えて食堂になってきた。
「しぃちゃんおはよ~」
「おはようイオ君」
「昨日はチョコありがとね。おいしかったよ」
「えへへ」
イオはシロを抱き上げると、頬同士をスリスリと擦り寄せた。
「しぃちゃんのほっぺは大福みたいだねぇ」
「シロのほっぺもっちもちなの」
イオに向けてドヤ顔を披露するシロ。
「エンペラーはどうしたの?」
昨日一緒に寝たんだよね、とイオ。
「まだクロと一緒に寝てるよ」
「クロと?」
「うん、昨日こっそり忍び込んできてたの。みんなでいっしょに寝たんだよ」
「え~なにそのかわいい光景! 俺も見たかった~!!」
イオは抱き上げていたシロを床に下ろすと、「今からでも二匹の寝顔見てくる~」と駆けて行ってしまった。
「あ、おはようシロ~」
「おはようシリル」
「今日は雪かきがんばろーね。僕雪かき得意なんだよ」
「そうなんだ」
あまりシリルが力仕事が得意というイメージを持っていないシロとしては意外だ。
***
「パパ、雪かきってなんのためにするの?」
「雪の中に道を作ったり、建物の負荷を減らしたりとか、いろんな理由があるな」
「そうなの」
ドゴオオオオオオオン!!!
屋根の上で派手な爆発が起こり、積もっていた雪がはじけ飛ぶ。
「……雪、なくなったねぇ」
「なくなったなぁ」
シロ達は隊舎から離れた所でその光景を眺めていた。近くにいると落ちてくる雪や爆発に巻き込まれる可能性があるからだ。
「重たい雪が乗ってるのと爆破されるの、どっちが負担大きいんだろうね」
シロがポツリと呟いた。
「こらあああシリル~!! なにしてやがんだ~!!!!」
「え!? なにオッサン!! なんで怒ってんの!?」
豪快な雪かきを披露したシリルが怒ったオッサンに追いかけられている。
「お~、今年はオッサンが俺の代わりにシリルを止めてくれるから助かるな」
エルヴィスが追いかけっこをする二人をシロの横で楽しそうに眺める。
「今年は?」
「あいつ毎年同じことやらかすんだよ。なぜか雪かきに自信持ってるし。おかげで屋根を頑丈な素材で作りなおしたんだぞ?」
「大変だね」
「悪気がないから余計立ち悪いんだよなぁ……」
その後、シリルが爆弾を使うのを諦めるまで追いかけっこは行われた。だが、そのおかげで特殊部隊の隊舎の周りには雪が踏み固められた道ができたのだった。
13
お気に入りに追加
7,051
あなたにおすすめの小説
生贄令嬢は怠惰に生きる~小動物好き竜王陛下に日々愛でられてます~
雪野ゆきの
恋愛
叔父一家に虐げられていた少女リアはついに竜王陛下への生贄として差し出されてしまう。どんな酷い扱いをされるかと思えば、体が小さかったことが幸いして竜王陛下からは小動物のように溺愛される。そして生贄として差し出されたはずが、リアにとっては怠惰で幸福な日々が始まった―――。
感想、誤字脱字報告、エール等ありがとうございます!
【書籍化しました!】
お祝いコメントありがとうございます!
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。
亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません!
いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。
突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。
里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。
そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。
三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。
だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。
とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。
いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。
町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。
落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。
そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。
すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。
ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。
姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。
そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった……
これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。
※ざまぁまで時間かかります。
ファンタジー部門ランキング一位
HOTランキング 一位
総合ランキング一位
ありがとうございます!
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました
ひより のどか
ファンタジー
ただいま女神様に『行ってらっしゃ~い』と、突き落とされ空を落下中の幼女(2歳)です。お腹には可愛いピンクと水色の双子の赤ちゃんドラゴン抱えてます。どうしようと思っていたら妖精さんたちに助けてあげるから契約しようと誘われました。転生初日に一気に妖精さんと赤ちゃんドラゴンと家族になりました。これからまだまだ仲間を増やしてスローライフするぞー!もふもふとも仲良くなるぞー!
初めて小説書いてます。完全な見切り発進です。基本ほのぼのを目指してます。生暖かい目で見て貰えらると嬉しいです。
※主人公、赤ちゃん言葉強めです。通訳役が少ない初めの数話ですが、少しルビを振りました。
※なろう様と、ツギクル様でも投稿始めました。よろしくお願い致します。
※カクヨム様と、ノベルアップ様とでも、投稿始めました。よろしくお願いしますm(_ _)m
辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女ノヴァ ~魔力0の捨てられ少女はかわいいモフモフ聖獣とともにこの地では珍しい錬金術で幸せをつかみ取ります~
あきさけ
ファンタジー
とある平民の少女は四歳のときに受けた魔力検査で魔力なしと判定されてしまう。
その結果、森の奥深くに捨てられてしまった少女だが、獣に襲われる寸前、聖獣フラッシュリンクスに助けられ一命を取り留める。
その後、フラッシュリンクスに引き取られた少女はノヴァと名付けられた。
さらに、幼いフラッシュリンクスの子と従魔契約を果たし、その眠っていた才能を開花させた。
様々な属性の魔法が使えるようになったノヴァだったが、その中でもとりわけ珍しかったのが、素材の声を聞き取り、それに応えて別のものに作り替える〝錬金術〟の素養。
ノヴァを助けたフラッシュリンクスは母となり、その才能を育て上げ、人の社会でも一人前になれるようノヴァを導きともに暮らしていく。
そして、旅立ちの日。
母フラッシュリンクスから一人前と見なされたノヴァは、姉妹のように育った末っ子のフラッシュリンクス『シシ』とともに新米錬金術士として辺境の街へと足を踏み入れることとなる。
まだ六歳という幼さで。
※この小説はカクヨム様、アルファポリス様で連載中です。
上記サイト以外では連載しておりません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。