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二章

吹雪の日

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 次の日は吹雪になったので外で遊ぶことは断念された。

 シロはエンペラーと並んで窓から外を見る。
 外では雪と共に激しい横殴りの風が吹いている。視界不良で前日に作った滑り台やかまくらは見えない。

「残念。エンペラーもお散歩できないねぇ」
「クゥ~ン」
「シロのかまくら無事かなぁ……」

 ションボリと窓枠に顎をのせていたシロをブレイクが抱き上げた。

「危ないから今日は外に出ちゃダメだぞシロ。小っちゃいシロなんてすぐに飛ばされちゃうからな」
「は~い」
「エンペラーもいいな?」
「ガウッ!」

 話の分かる狼さんは元気よく返事をする。

「あ、ほら、見てみろ。アレが吹雪の日に軽々しく外に出た者の末路だ」

 シロとエンペラーが再び窓から外を見ると、隊舎の玄関から外に出る人影があった。視界が全体的に薄暗いので顔までは分からない。

「誰だと思う?」
「エスに一票」
「ガウ」

 こんな日に進んで外に出るのはエスしかいないという考えは皆同じだった。そして答えはすぐに判明する。

「やめろー! エス~! 死ぬ気か~!!!」
「ほらエス~、こっちには鞭があるぞ~。戻ってこ~い!!」
「あったかい毛布と暖炉もあるよ~」
「おいシリル余計なこと言うな」
「僕の方が常識的なこと言ってると思うんだけど……」

 アニの言葉にピクリと反応したエスはその後に続いたシリルの言葉ですっかり興味をなくしたように再び吹雪の中へ歩き出した。

「あ、飛ばされた」
「おい誰か回収してこいよ」
「え~寒いからやだよ」

 エルヴィス、アニ、シリルは玄関まで来たはいいものの、冷気に怖気づいてそれ以上進めないでいる。というか暖房のない玄関でも相当寒いのだ。

「……てかイオは何してたんだ?」

 エルヴィスに名前を呼ばれ、一瞬外に出た後に帰ってきたイオはニコッと笑う。

「見て見て、外に置いておいたバナナ、本当に凍っちゃったよ。今はジローに頼まれて胸の形のプリンを外に置いてきたんだよ。バカだよねぇ、あれは柔らかいからいいのに。カチコチになったら意味ないのにねぇ」

 そう言ってイオはケラケラ笑う。

「じゃあイオ外行ってエス回収してきてくれよ」
「やだよ。寒いもん。もう割と遠くまで行っちゃってるし。……あ、行き倒れた」
「エスウウウウウウウウウウ!!!」

「あ、そうだ、クロはどう?身体能力高いし、ちゃちゃと行って……無理そうだね」

 シリルはクロの姿を見て頼むのを諦めた。

「……さ、むい……」

 クロは暖炉の前で毛布に包まり、凍えていた。

「クロ、寒いの苦手だもんね……」
「昨日はシロのために頑張って外出たもんな……うん、よくあったまって風邪ひかないようにしろよ」
「……うん……」

 エルヴィス、アニ、シリルの三人は誰かに押し付けるのを諦めて玄関まで戻ってきた。

「どうする?行き倒れてるエスに爆弾投げる?そしたらあったまりそうだよね」
「あったまるで済んだらいいな。……仕方ない、俺達でエスを回収しよう」
「……気が乗らねぇ~」
「同じく」
「いいから! 行くぞ」
「「は~い」」

 そして三人が一歩玄関から出た瞬間、一層強い風が吹き荒れた。

「さっむ!!!」
「やばくない!? 大丈夫!? 僕凍ってない!?」
「元気に話せてるうちは大丈夫だ!!」

 三人は全速力で凍えているエスに駆け寄り、それぞれエスの体の一部を掴むと引きずって隊舎の中に戻った。

「さっむ」
「そりゃバナナも凍るわ」
「お~いエス、大丈夫か?」

 エルヴィスがエスの頬をペチペチと叩く。

「……外は……さむ……かった……」

 ガクッ

「何当たり前のこと言ってんだ」
「これ意識失ってない?」
「とりあえず解凍しよう解凍」

 そしてエスは暖炉の方に運ばれていった。
 その後ろ姿をブレイク、シロ、エンペラーは見送る。

「いいか二人とも、吹雪の日に軽々しく外に出るとああいうことになるんだ。分かったか?」
「は~い」
「ガウッ」








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