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こぼれ話

お小遣いがないなら増やせばいいんだよ!

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「え、お兄ちゃんもうどっか行っちゃうの?」
「ああ、調査に行く父さんについて行くんだ」
「そうなの……」

 早い別れにしょんぼりするシロ。

「暫く会えないから、思い出作りに明日は一緒にお出かけしよう」
「おでかけ!」

 シオの言葉にシロはぱぁっと瞳を輝かせた。

「パパ、明日お出かけできる?」
「ああ。おめかししてこーなシロ」
「うん!」

 シロは喜びの余り、ぴょんと飛んでブレイクに抱き着いた。



***




「はい。これが今日のお小遣いね」

 博士からシロとシオにそれぞれ紙幣が二枚づつ渡された。

「今日のお買い物はこれで払える範囲で留めるんだよ」
「「はーい」」
 
 シロとシオは博士の言葉を素直に受け入れた。本日出かける面子で唯一ブレイクだけが難色を示した。

「シロが欲しいもんならなんでも買ってやるのに」
「ダメですよ隊長。小さい頃からなんでも買い与えてたら我儘な子に育ってしまいます。それで将来困るのはシロちゃんですよ」
「ふむ……」

 確かにな、とブレイクは博士の言葉に納得した。


 シロはちょこちょことシオに近付き、シオの耳元に囁きかける。

「お兄ちゃんお兄ちゃん」
「どうした?」
「シロの金銭的甘やかされ生活が終わった気がする」
「……ドンマイ」

 シオはシロの頭をよしよしと撫でた。

「じゃあ行くか」

 ブレイクと博士はそれぞれ自分の子どもと手を繋ぎ、歩き出した。本日の目的地は街だ。





「まずは腹ごしらえするか」
「そうですね。二人はお腹空いてるかい?」
「「すいてる!!」」

 シロとシオは元気良く答えた。どうやら二人とも腹ペコのようだ。

「ふふっ、かわいい」
「同感だ」

 ブレイクも博士も親バカだった。
 


 それぞれの希望のすり合わせをした結果、四人はハンバーガー屋に入った。
 シロはハンバーガーを一口食べるとむぅっと顔のパーツを中央に集める。

「……ぱぱ」
「ん? ……ああ、ピクルスか。ほれ、パパのとこに入れろ」
「あい」

 シロの子ども舌にピクルスはまだ早かったようだ。シロはちょいっと自分のハンバーガーに入っていたピクルスを摘まみ、ブレイクのパテの上にのせた。
 苦手なピクルスがなくなったシロは上機嫌でハンバーガーを頬張っていく。

「……父さん……」
「ん?」

 一口分欠けたハンバーガーを見て唇を尖らせるシオ。そんな息子を見て博士は微笑んだ。

「シオもピクルスは苦手だったね。ほら、父さんのに入れていいよ」
「……ありがとう」


 




 腹ごしらえをした後、シロ達はアイスをパクつきながら街を歩いていた。


「パパ! シロこれほしい!」

 シロが指差したのは巨大な狼のぬいぐるみだった。シロの三倍ほどの体積がある。

「エンペラーに似てるな」
「うん、エンペラーのお友達にするの。お嫁さんでもいい」

 キラキラした目でぬいぐるみを見るシロ。

 そんなシロを見て博士は呟いた。

「エンペラー君は無機物を友達か伴侶にするのか……」
「父さんシー!!」
「おっと」

 博士は慌てて口をつぐんだ。

 シロがそのぬいぐるみの値札を確認すると、そこには5000という数字が書かれていた。

「……」

 無言で財布の中身を確認するシロ。そこにはやはり1000と書かれた紙幣が二枚しか入っていない。

「たりない……」

 悲しそうに呟く娘に、ブレイクは自分が買ってやると言おうとしたが博士がそれを止めた。

「シロ、その大きいやつは諦めてこっちの小さいのにしないか?」
「……あ!」

 しょんぼりしたシロは、ある看板に目を惹かれた。シロはその店に駆け寄って行く。

「シロ?」

 ブレイク達もシロの後について行く。

「これください!」
「シロ……?」

 シロが目をつけたのは宝くじ屋だった。シロは持ち金で買えるだけ宝くじを買う。シールをはがして、3×3のマスの中に描いてある絵柄が縦横斜めのどれか一列でも揃えば当選金がもらえるという仕組みのクジである。

 店の人は、本当に買わせていいのか? と確認するようにブレイクを見る。

「ああ、好きにさせてやってくれ」

 どうせそんな簡単に当たりはしないだろうから、落ち込んだシロに小さいぬいぐるみを買ってやろうとブレイクは思っていた。

 そしてシロは二十枚のクジを手に入れた。

「いざ!」

 シロは夢中でシールをペリペリはがしていく。それを他の三人は温かい目で見守った。

「むぅ、あたらない……」
「宝くじはそう簡単に当たらないようにできてんだよ」
「……あ! 揃った!」
「え!?」

 最後の一枚、そのシールをめくったら王冠のマークがど真ん中の縦一列揃っていた。シロとシオは慌てて賞金額を確認する。

「いちじゅうひゃくせんまんじゅうまん……ひゃくまん」
「二百万!? すげー!!」

 シロとシオは手を繋いでキャッキャとはしゃぐ。

「……マジか」
「シロちゃんすごい強運ですね……」

 大人組は唖然だ。


 その後、シロは無事に二百万とぬいぐるみをゲットすることができ、買い物と遊びを終えた四人は隊舎に帰ってきた。





 

「今日使った分以外は貯金しといたからな」
「は~い」

 シロは目的のぬいぐるみを抱きしめてルンルンだ。シオも前々からほしがっていた本を買って満足そうにしている。

「シィィィロちゃ~ん!! おかえり~!!」
「アニただいま~」

 むぎゅっとぬいぐるみごとシロを抱きしめるアニ。

「おでかけ楽しかった?」
「うん! ―――あ、エンペラー! シロ、エンペラーのお友達買ってきたよ!」
「ガウ?」

 これが自分の友達? と言わんばかりに首を傾げるエンペラー。

「かわいいでしょ」
「ガウ!」

 大きいぬいぐるみをエンペラーに預けると、シロはブレイクが持っていた紙袋からシロの顔より少し大きいくらいの狼のぬいぐるみを取り出した。そしてそれをシオの前に差し出す。

「はいシオ」
「?」
「あげる。こっちはキングのお友達なの。小さめのを選んだから、持って行ってほしいの」
「シロ……」

 シオは嬉しそうにはにかんで狼のぬいぐるみを受け取った。そしてそのままシロを抱きしめる。

「ありがとうシロ、大事にするな」
「うん。お父さんと調査に行っちゃってもシロのこと忘れないでね」
「忘れるかよ。かわいい妹だぞ」

 シオはシロを抱きしめる腕にギュウと力を籠める。




「ほっこりする光景ですね」
「和むな」
「シロちゃんかわいい」

 大人達は子ども組を見て和んでいた。




***




 その日の夜。


「……重い」

 ベッドに横になっているブレイクのお腹の上には、巨大な狼のぬいぐるみを抱き枕にしたシロがスヤスヤと寝ていた。







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