天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

こぼれ話

遊び疲れて寝ちゃった

　一日目は滞在の準備と遊ぶだけで終わった。
　太陽は沈み、空には月が浮かんでいる。


「お～」

　シロは焚火の前に座り込んでひたすら火を見つめている。初めて見る焚火に興味津々らしい。
　シロは胡坐をかいて座っているシリルの上にちょこんと座った。

「シリル、シロも木入れていい？」
「ん？　いいよ。はい」

　シリルがシロに薪を手渡す。
　特殊部隊の火の番は大抵シリルの役目だ。
　シロはおそるおそる火の中に薪をくべた。そして新しい薪に火が燃え移っていくのをジーッと見つめる。

「シロ楽しい？」
「うん、楽しい」

　シリルの問いにシロはコクコクと頷いた。

「おーい、魚の準備できたぞ～」
「お～」

　竹串に刺した魚をエルヴィスが持ってきた。今からこの焚火で焼くのだ。
　エルヴィスは地面に竹串を刺していく。

「この火で焼くの？」
「そ～だよ～。焼けるまで待ってようね～」
「あい」

　シリルがプニプニとシロの頬をつつく。

　シロは魚が焼けるのをひたすら火を見ながら待っていた。





「あれ？　シロ寝ちゃったのか？」
「しー、ですよ隊長」

　自分とシロの分の食事を持ってきたブレイクに、シリルは自分の口の前に人差し指を立てるジャスチャーをする。
　シロはシリルの膝の上ですっぽりと丸くなっていた。
　シリルが目じりを下げ、小声で言う。

「かわかわですね～」
「そうだろうそうだろう」

　ブレイクはうんうんと頷く。

「まあでも夕飯は食べさせないとな……。シロ～」
「ん……」

　ブレイクが眠っているシロの頬をくすぐる。

「……起きないな」
「お昼からずっとはしゃいでましたもんね～」
「シロ～、ごはんだぞ～」

　ブレイクは眠っているシロの口元にほぐした焼き魚の身を近付けた。シロの鼻がぴくぴくと動く。

　ぱくんっ

「お、食べた」

　シロは眠ったまま口をむぐむぐと動かしている。しかし、起きる気配はない。

「え！　かわい～！　僕もやりたいです！」
「ほれ」
「えへへ、シロあ～ん」

　シリルもシロの口に魚の身を近付ける。

　ぱくんっ

「―――っ！　かわいい～！」

　シロは少量の身を飲み込むと、再びスヤスヤと寝息を立て始めた。
　シリルは砂浜に転がって悶えたかったが、シロが膝の上にいるので必死にその衝動を抑えた。

「シリルずり～！　俺もシロちゃんにあーんしたい！」

　羨ましい光景に、アニが走って近付いてきた。
　
「シロちゃんあーん」

　ぱくんっ

「かわい～！！」

　アニが悶え、ゴロゴロと砂浜を転がる。
　そして悶えるアニに誘われてワラワラと人が集まってきた。

「しろ……かわいい。おれもやる……」
「ボクもあげた～い」

　クロや殿下、特殊部隊隊員達が並んでシロへの餌付けを始める。
　そして、結局最後までシロは起きなかった。






　次の日の朝。
　シロはいつも通りブレイクのお腹の上で目が覚めた。
　目を擦り、一つ大きなあくびをする。

「にゅむ……くぁ～。……あれ？　昨日晩ごはん食べてないはずなのにあんまりお腹空いてない……」

　シロはお腹に手を当て、コテンと首を傾げた。