天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの

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こぼれ話

シロは女子会がしたい!

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 ちょいんちょいん。
 シロがアニの隊服の裾を引っ張った。

「ん? どうしたのシロちゃん」
「シロ、女子会がしてみたい」

 その時のシロのキラキラとした瞳に、誰が逆らえただろうか。



***



 可愛らしいテーブルクロス、そしてその上には想像の中の女子が好きそうなスイーツを集めた。

 女子会のメンバーが全員席に着いた。

「アニ子でぇす~☆」
「爆 弾子でぇ~す☆」
「……」
「ほら、兄……じゃなった、姉さんも名乗って! 女子会の基本だよ!!」
「お前合コンと勘違いしてないか?」

 アニとシリルに無理やり女装させられたエルヴィスは若干不機嫌だ。
 ノリノリ二人組ももちろん女装をしている。
 アニは元々の顔立ちが綺麗なこともあり、絶望的とまではいかないが絶妙に似合わない。
 シリルは元々線が細いこともあって長髪の鬘がよく似合っている。黙っていたら男だとは気付かれないだろう。

 そして問題なのはエルヴィスだ。三人の中で一番筋肉がついていることもあって、アニが用意したワンピースがパッツンパッツンだ。ザ・女装である。

 それでもエルヴィスが逃げ出さなかったのは、シロが本当に楽しそうにしているからだ。エルヴィスとてシロを妹同然に思っている。
 きゃっきゃっとはしゃぐシロのためなら女装もする男エルヴィス。彼も本質的には弟とそう変わらないのかもしれない。

「シロ楽しいか?」
「うん! パパ!!」
「こ~ら、違うだろ?」
「あ、ままぁ!」

 よくできたな、と膝に乗せたシロの頭を撫でたのは同じく女装したブレイクだ。
 元々が目を見張る色男なだけあって、女装してもその美貌は健在だ。見事な美女に様変わりしている。

「ママ美女ね~」
「ふふん、そうだろう」

 鬘で長くした髪をサラリとはらう。

「ほんとに隊長美人ですね~」
「当然だ」

「さて、そろそろ女子会を始めよっか……て、シロちゃんお菓子にがっつくのはちょっと待って?」
「う?」

 次々にお菓子を口に輸送する手をアニは優しく止めた。

「女子会といえばやっぱり恋バナでしょ!」
「却下だ」
「……え?」
「却下だ。シロに恋バナなどまだ早い」

 ブレイクはその整った顔を盛大に歪ませていた。親バカ的には恋バナですらも規制対象のようだ。

「え~それだと女子会のメインイベントが一瞬でなくなっちゃうんですけど」
「……むぅ」

 渋るブレイクにシリルが耳打ちする。

「大丈夫ですよ、僕らもシロに本気で恋バナさせる気はないです。適当にそれっぽい話しますって」
「……それならまぁ、いいだろう」

 ブレイクの許可がでたところで、いよいよ女子会のスタートだ。




***




「やっぱりワンコ系ってポイント高くな~い?」
「やだぁ弾子ってばぁ、あの子ってばワンコ”系”じゃなくてガチのワンコに近いじゃな~い」
「お前らノリノリだな」

 キャッキャウフフするアニとシリルをエルヴィスが何とも言えない目で見る。

「シロちゃんはどう思う?」
「クロはねぇ、ちょっと無気力なところがぼせいをくすぐるの」
「五歳児とは思えないコメント」
「隊長はどう思います?」

 ブレイクはなぜか真剣に考え始めた。

「そうだな、性格は悪くないが基本が無気力なだけに甲斐性が心配だな。シロを預けるには不安がある」
「そんなガチで考えないでくださいよ。お婿さん検討会じゃないんで」

 ブレイクとエルヴィスの会話をよそにノリノリ女装二人組は次の話題に移った。

「あ、じゃあ殿下なんてどうかしら。地位もお金もあるわよ~? 腹黒だけど」
「あら、権力がありすぎて自由がなさそうじゃない? 腹黒だし」

「あ」

 シロが声を上げた。


「地位も権力もお金もある腹黒で悪かったね」
「「!?」」

 そこにおわすは紛うことなき腹黒殿下。

「これ恋バナじゃなくて男性品評会だよね。シロに変な常識植え付けないでくれる?」
「いや、隊長がシロちゃんに恋バナはまだ早いって言うから……」
「男の品定めも早いよ。とりあえず二人はお説教だ。じゃあシロまた後でね」

 アニとシリルは笑顔の殿下に引きずられていった。

 ぽつんと三人が取り残される。

「……お開きですか?」
「お開きだな」
「おしまい?」

 首を傾げるシロの頭をブレイクが優しく撫でる。

「女子会は終わりだ。後はパパ達とおやつの時間にしよう」
「うん!」




***



 数時間後、アニとシリルが帰ってきた。

「あ、二人ともお帰り~」

 ガバッ!

「!?」

 唐突に、二人はシロに抱き着いた。二人のガクガクとした震えがシロにも伝わってくる。

「しいいいいろおおおおおちゃんんんんん!!!!」
「やっとかえってこれたああああああああああああ!!」

 ぎゅうぎゅう抱きしめられ、シロは首を傾げた。



「……殿下になにされたの?」


 半泣きの二人から、答えは返ってこなかった。





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