天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの

文字の大きさ
上 下
36 / 104
こぼれ話

はろうぃん小話

しおりを挟む



「はろうぃん?」

「ああ。遠い異国では『お菓子をくれなきゃイタズラするぞトリックオアトリート』と言って、主に子どもが菓子を寄こさねばイタズラするぞと恐喝することが合法化する日らしい」
「こわいねぇ」
「多分そんな恐ろしい日じゃないってのはなんとなくわかる」

 エルヴィスがジトリとした目で説明したパパを見る。
 パパはそんなエルヴィスの視線をまるっと無視して話を進める。

「それでだな、今年からその催しをウチの国でもやるんだそうだ」
「おおっ! タダでお菓子もらえるの!?」
「ああ、シロは王城にいる数少ない子どもだからな。ぜひ参加してほしいと殿下に言われた」
「シロ参加する!!」

 他国にはそんなすばらしい日があるのか。





 当日。


「きーてない……」
「言ってない」

 はろうぃん当日の朝、私は問答無用でパパに仮装させられた。
 猫耳カチューシャに細長い尻尾のついた魔女っ子っぽいフリフリワンピース。

「かわいいかわいいかわいいかわいい」

 パパは私を抱き上げてずっと頬ずりしている。そろそろ擦り切れそう。


「あ、そうだ。パパ、とりっくおあとりーと」
「ん~? パパはシロのかわいいイタズラがいいなぁ」
「シロはお菓子がほしいの!!」

 そう言うと、パパは用意していたカボチャのタルトをくれた。

「おおおおお!」
「朝ごはんが食べられなくなるからそれは後でな」
「はーい」

 素直にお返事し、パパと一緒に食堂へと移動した。






「みんな~! とりっくおあとりーと!!」
「「「「イタズラ希望で」」」」

 元気よく食堂に入っていくと、アニを先頭にイタズラ希望者の列ができていた。引いた。

「シロちゃんっ! 今日は仮装してるんだね!! 俺はそんなシロちゃんにイタズラされたい!!」

「わぁ! クロありがと~!」
「ん……」
「無視!!」

 クロがお菓子の詰め合わせをくれた。

「クロだいすき!!」
「ん」

 クロに抱きつくと、クロもちょっと嬉しそうな顔をして抱き締め返してくれた。

 パパが床に崩れ落ちたアニに話し掛ける。

「いいのかアニ、お前たちが変態だからクロの株爆上がりだぞ。完全に引き立て役だな」
「そんなっ! シロちゃん俺たちだってお菓子用意してきてるよ!! ただイタズラもほしいだけで!!」
「欲望が漏れてるぞ」

 アニからはシュークリームをもらった。

「アニありがとう」

「俺は最初っからあげるつもりだったぞ?」
「ありがとうエルヴィス」

「はいシロ」
「爆弾はいらないよシリル」

 お菓子に紛れて危険物差し出してこないでよ。




 それから特殊部隊のみんなにお菓子をもらっていると、アニがおずおずと近付いてきた。

「あ……あの、シロちゃんっ……」
「なに?」

「やっぱりシロちゃんからのイタズラが諦めきれない!!! お願いします!!」
「うわ~」

 シロどんびき。
 でもお菓子くれたしな~。


「じゃあアニおでこ出して」
「? はい」

 アニは前髪を上げて屈んでくれた。



「よしっ、できた! 今日は一日それで過ごしてね」

 アニの額には、大きな『ロリコン』という文字。

「事実だけど中々の羞恥プレイだな……」
「クッ……思ってたイタズラとは違うけど、これはこれであり……!!!」
「ありなのか。お兄ちゃんはお前がわからないよ」

 エルヴィスが遠い目をしてる。


「羞恥プレイと聞いて!!!」

 ドMのエスが現れた。
 エスに両手をギュッと握られる。

「お菓子と引き換えに羞恥プレイが楽しめるイベントだと聞きました」
「ごかいですおひきとりください」
「アニだけずるいですよ」
「……」

 仕方なくエスの額にも油性ペンで『マゾ』と書いてあげた。





 この二人を皮切りに、イタズラをしてほしいとシロの周りに人が集まる。

 後からきた殿下がその光景を見て一言。



「ハロウィンは別に変態が市民権を得る日ではないんだがな……」





しおりを挟む
感想 356

あなたにおすすめの小説

生贄令嬢は怠惰に生きる~小動物好き竜王陛下に日々愛でられてます~

雪野ゆきの
恋愛
叔父一家に虐げられていた少女リアはついに竜王陛下への生贄として差し出されてしまう。どんな酷い扱いをされるかと思えば、体が小さかったことが幸いして竜王陛下からは小動物のように溺愛される。そして生贄として差し出されたはずが、リアにとっては怠惰で幸福な日々が始まった―――。 感想、誤字脱字報告、エール等ありがとうございます! 【書籍化しました!】 お祝いコメントありがとうございます!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる

佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます 「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」 なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。 彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。 私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。 それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。 そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。 ただ。 婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。 切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。 彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。 「どうか、私と結婚してください」 「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」 私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。 彼のことはよく知っている。 彼もまた、私のことをよく知っている。 でも彼は『それ』が私だとは知らない。 まったくの別人に見えているはずなのだから。 なのに、何故私にプロポーズを? しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。 どういうこと? ============ 「番外編 相変わらずな日常」 いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。   ※転載・複写はお断りいたします。

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。