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こぼれ話

自由すぎるのもこまりもの

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「あ、パパ、見つけたよ」

「おっ」

「お昼寝中のクロ」
「ちょっとオーダーとは違うもんが見つかったなぁ」

 私は通気孔からズルンッとクロを引っ張り出した。
 その拍子にクロが目を覚ます。

「……ん、……あ、しろ。あいたかった」
「シロも~」

 寝ぼけたクロはぎゅうぎゅう抱き着いてきて、私を懐に仕舞おうとしてくる。
 今まで寝ていたからなのか、クロはぬっくぬくだ。なごむねぇ。

 暫くの間くっつきあった後に、クロは自分のポケットをゴソゴソと漁り始めた。

「……あ、しろ、これあげる」
「ありがと~……うおおっ!何これ、おっきいねぇ」

 ゴロンとクロから差し出されたのは、私の両手を合わせたくらいの大きさの宝石だった。うっすらと蒼白い光を放つそれは、売ったらとんでもない値段がつきそうだ。

「クロ、これどうしたの?」
「ん……なんか台座のうえにおちてたの、ひろった……。きれいだったから、しろにあげようと思って」
「ありがと、クロ!」
「それは落ちてたんじゃなくて置いてあったんだよ!お前ら手癖悪すぎんだろ!!」
「……だれ、おっさん。うるさい……」

 クロが盗賊のおっさんを睨み付ける。睨まれたおっさんはちょっとビクッてなってた。
 おっさん正論言っただけなのにね。

「……あれ?これ俺達が探しに来た国宝じゃねぇか。よかったなシロ、もう帰れるぞ」
「うぉ?……やった~!クロすごいっ!おてがら!!」

 パパの台詞を聞いて私は再びクロに抱き着いた。
 私は定時に帰宅したい系幼女なので、仕事がはやめに終わりそうのはとても嬉しい。

「国宝が見つかったからこのオヤジはもういらんな。どうする?シロが気に入ったんなら持って帰ろうか?」
「え?俺今すっごい気軽に誘拐されそうになってる?俺の価値ってお土産売り場のやっすいぬいぐるみと同等なのか?」
「ん~特にシロはほしくない」
「じゃあ要らんな」

 パパはあっさりと拘束していたおっさんから手を放した。

「え、行き過ぎた親バカって子どもに人間まで与えようとすんのか?シンプルに怖い」

 おっさんは顔面蒼白になって震えている。正直……というか正直に言わなくても全然かわいくない。

 そして、せっかく解放したのにおっさんはなぜか全く逃げる気配がない。おっさん盗賊でしょ?大丈夫?ここいたら多分しょっぴかれると思うよ?
 普通に話し過ぎて自分が危険ってこと忘れてそう。

 ……危険?

「……あ、そうだパパ、めっちゃ笑顔のシリルに危ないから作戦開始から一時間半後には外に出ててね、って言われたんだけど……」

 私がそう言うと、パパは無言で時計を確認した。

「……もうすぐ一時間半経つじゃねぇか。シロ、そういうことはもっと早目に言おうな。反省だ」
「はんせいっ!」
「はい可愛い。可愛いから無罪」

 ピンッ、と全く痛くないデコピンをされた。


「みんな!!多分シリルの奴がまた勝手に爆弾仕掛けてやがる!もうすぐ爆発するぞ!建物の外に避難しろ!!!」

 パパは廃墟全体に響き渡るように大声で避難勧告をした。

「おいオッサン、あんたも避難した方がいいぞ」
「お、おう」 


 ドオオオン!!!


 私達が走り出そうとした瞬間、大きな爆発音が響き、建物が揺れた。


「あんのバカッ!」

 エルヴィスが毒づく。


 私達は全力で駆け出した。

「シロッ!!来いっ!!!」
「うんっ!」

 パパに腕を引かれると、懐に強く抱き留められた。

「おいお前達っ!ここから飛び下りるぞ!!」
「「「はいっ!」」」

 パパは体当たりで窓のガラスを突き破り、そのまま地面に飛び下りた。他の隊員やおっさんもそれに続く。
 幸い、まだ二階にいたのでみんな難なく着地できた。

「シロ、無事か?」
「うん」
「よかった」

 パパは安心したように肩を撫で下ろすと、私に降り掛かったガラスの破片を払ってくれた。

「よし、お前達。できるだけここから離れておくぞ。オッサン、他の仲間は?」
「今日は俺以外は外に出てる」
「そうか」

 パパはそれだけ確認するとオッサンとクロ達を伴って森の中へ走り出した。

 廃墟の爆発は段々と激しくなっている。

 セバスとウイリアムの所まで戻ると、私達以外の特殊部隊隊員とニッコニッコの笑顔を浮かべたシリルがいた。爆発している廃墟を見て満足気な様子だ。



「あ、みんな、遅かったね。ちょっと心配しちゃったよ」

「「「シリルブッ殺す」」」

 合図もなしにアニ、エルヴィス、エスが全く同時にシリルに殴りかかった。抵抗する暇もなくシリルはボコされている。





「もっとやれってちょっとだけ思ったのは内緒」

「口に出てるぞシロ」



 




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