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こぼれ話

どっちが盗賊?

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「あ、エス」

 人質おっさんを連れて歩いていると、前方からエスが現れた。
 手を振ると振り返してくれるが、どこか不満そうだ。

「どうしたのエス?」
「……探したのに、ないんです………」

 エスは悲しそうに俯いてしまった。

 まだ国宝が見つからなくて罪悪感を感じてるのかな――――――――とかは思わない。


「盗賊団のアジトというから人を痛めつけるあんな道具やこんな道具があると思ってたのに全然ないんです!!!!隠し扉まで探したのにっ!!」

「おい、不法侵入だぞ」
盗賊おまえらの生業だろ」

 おっさんの言葉にパパの冷静なツッコミが入る。

「盗賊ならではの道具があると期待していたのに、あるのは荒縄と手枷くらい。しかも僕が個人的に所持しているのよりも質が悪いです」
「なんで荒縄と手枷を個人的に所持してんだよ」
「これじゃあなんのためにこんな所まで来たのか……!!」
「仕事だろ」

 おっさんは案外常識人かもしれない。


 エスも連れてまた暫く歩いていると、こんどはエルヴィスが駆け寄って来た。

「あ!エス、こんな所にいたのか!!」
「こんな所にいました」
「急にどっか行くから探しただろ。あとくすねた荒縄と手枷は返しておきなさい」

 エス盗んじゃったか~。

「嫌です!これは今日の戦果として持って帰ります!」
「それじゃあ俺らとやってること変わんねぇじゃねぇか」

 おっさんやっぱり常識人だよ。

「それよりもエルヴィス、トイレは見つかったんですか?」
「まだだ。そろそろ漏れそう」
「なんでどいつもこいつも息をするように職務放棄してんの?」


 キンッ


 マトモなことを言ったおっさんにエルヴィスが刃を突き付ける。

「おい、死にたくなかったらトイレの場所おしえろや」
「脅されなくてもそれくらい教えてやるよ!!必死過ぎんだろ」



 おっさんに案内されたトイレは運悪く使用中のようだった。

 トンッ トトトン トトトトトン

 エルヴィスの代わりにシロがノックしてあげた。

「は~い、入ってま~す」

 中から呑気な声が返ってくる。
 それに苛ついたのか、そろそろ限界なのかは知らないがエルヴィスが激しく扉を叩いた。

「おい早くしろよ!!」

「……え?兄さん?」
「ん?」

 ガチャリと扉が開き、洗った手をハンカチで拭きながら出てきたのはアニだった。

「……シロ、初めてアニとエルヴィスを兄弟だなって思った」
「奇遇だな。パパもだ」

 エルヴィスはアニと入れ替わるようにお花を摘みに行った。
 アニは私達が捕らえているおっさんを見て顔をしかめる。

「うへぇ~何このおっさん。絶対ろくでもないロリコンだよ」
「え、自己紹介?」
「違うよシロちゃん!!」

 だって、ろくでもないロリコンって明らかにアニのことじゃん。異論は認めない。


 そうこうしていると、エルヴィスがお花摘みから帰ってきた。

「さて、そろそろ仕事に戻るか」

 やっぱりエルヴィスは常識人寄りだね。他の面子は任務のことなんてすっかり忘れてたよ。
 私も忘れかけてたことは言わないでおこう。




 この場の全員の準備が整ったところで、パパがパンッと手を叩く。







「よし、お前達。さっさと宝を探してこい」

「パパそれじゃあ本当の盗賊の台詞みたいだよ」






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