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こぼれ話
盗賊から盗みをしよう!
しおりを挟むその日、とある盗賊団の根城が大爆発により壊滅した。
「……秘密裏にって、何なんだろうな……」
燃え盛る廃墟を見て、ウイリアムはそう呟いた。
~半日前~
「シロ、パパは仕方がないからお仕事に行ってくる」
「なんでぇ?なんでシロは一緒じゃないの?」
一緒に連れて行ってもらえないことが不満で私はパパの周りをグルグルと周り取り囲む。
「シロは一人でおるすばんなんてできない悪い子だから連れてくのが吉って新聞の占いに書いてあったよ」
「確かにシロはパパが好きすぎて嘘を吐いちゃう悪い子だなぁ」
パパは目尻を下げて私を抱き上げた。
「危険かもしれないからシロはお留守番してて欲しいんだが」
「や、パパといく」
「っ、かんわいいな~シロは。パパから離れないと約束できるか?」
「あいっ!」
「いいお返事だ」
片手を挙げて返事をすると、ほっぺにちゅっとされた。
嬉しくてにやけると、パパが真顔に戻って何かを呟き出した。
「……こんなに可愛いとやはり心配だな。リードでも着けておくか」
「犬の散歩じゃないんだから」
すかさずエルヴィスのツッコミが入った。
「よし、全員いるな。あそこが盗賊団のアジトだ」
パパの視線の先には森の中にひっそりと建っている屋敷の廃墟がある。
「セバスとウイリアムはここで待機。それ以外のメンバーは俺と一緒に潜入だ」
「「「はいっ」」」
全員、返事をするのと同時に散って高速で廃墟に接近して行った。
シロとブレイクのペアは難なく廃墟に侵入した。
「おかしらっ!あっちから宝のにおいがしますぜ!!」
「シロ、お頭じゃなくてパパと呼べ」
「はいおかしらっ!!」
「いい返事だ」
どこまでも自然体な父娘である。
ちなみに、現在二人は微塵も隠れる気はなく、堂々と廊下のど真ん中を歩いている。
その状態で盗賊達に見つからないでいられるだろうか―――否、あっさり発見された。
「おいっ!お前達!どこの誰だっ……?」
初めは大声だった盗賊の勢いが徐々に弱まっていった。
「……何してるんだ?」
「娘の散歩だ」
盗賊の男の目の前には、幼女にリードを着けた色男が堂々と歩いている。
―――はたして娘の散歩にリードは必要だっただろうか。
男はリードを着けて散歩をする動物など犬くらいしか知らなかった。
「そうなのか。世の中は広いな……じゃなくて!!ここをどこだと思ってんだテメェら!」
「「盗賊のアジト」」
「ドッグランじゃないと分かっててくれてお兄さんちょっと安心したよ」
「どこにお兄さんがいるの?」
「シロ、彼はオッサンにしか見えなくても若作りしたいお年頃なんだ。分かってやれ」
「なるほど学習」
シロはインプットしたと言わんばかりに何度かコクコクと頷いていた。
オッサンは傷付いた。
その隙にブレイクが素早く動き、オッサンの背後に回る。そして短刀の先端を彼の首に押し当てた。
まるで人質を捕らえている犯人の様だ。
「おい、死にたくなきゃ宝のとこに案内しな」
「それ盗賊がやるやつ」
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