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天王さま登場なのです!
しおりを挟む天王さまに捕獲されたミィなのです。ただいま小脇に抱えられて運ばれておりますです。
「姫は軽いな。もっと食べて大きくなれ」
「はいです」
いくら軽くてもミィはサイドバッグじゃないのです。
「天王さまは父さまにご用事です?」
「ああ」
ご機嫌なのか、お城に向かう天王さまの足取りは軽い。今にも鼻歌を歌い出しそうな雰囲気なのです。
そして、ルンルンと歩く天王さまの斜め後ろをモフ丸がテトテトと脚を動かしてついてくる。今日もかわいいのです。
天王さまが片手で父さまの執務室の扉を開いた。
「久しいな魔王よ」
「…………言いたいことは山ほどあるが、まずはうちの娘を放してもらおう」
「ふむ。確かにそろそろ父親を恋しがって泣く頃合いやもしれんな」
そう言って天王さまは意外にもあっさりわたしを父さまに引き渡した。ミィのことをどんだけ幼い子だと思ってるんです?
なんだか釈然としない気持ちを抱えつつも大人しく父さまの腕の中に納まる。すると、父さまは大きな溜息を一つ吐いた。
「はぁ、とりあえず茶を用意させよう」
***
「毎回言うが、いきなり執務室に突撃してくるのを止めろ」
「いいじゃないか。仕事の話をするなら直接ここにきた方が早い」
どうやら父さまと天王さまは結構仲がいいみたいです。二人の話し方からなんだか気安いものを感じるのです。父さま、お友達いたのですか。
「大体、どうしてミィと一緒なんだ」
「財布を拾ってもらってな。よく覚えてないがこういう時は手持ちの何パーセントか渡すんだったか? はて、どれくらいだったか……十パーセント? 二百パーセントだったか?」
「大損じゃないか」
「ミィ、別にお礼はいらないのです」
おお! 今のセリフかっこよかったのです……! モフ丸、聞いてましたか!?
褒めてもらおうとモフ丸の方を向くと、そこには丸まってスヨスヨと寝息を立てる毛玉がいました。むぅ。
「おお、そうかそうか。ついこの間まで赤ん坊だったのに良い子に育ったものだ」
「ミィと会ったことあるんです?」
「姫が生まれたばかりの頃に一度会っているな」
ほうほう。それじゃあミィが覚えてないのも納得なのです。
「だが姫の話はよく耳にするぞ。姫の母からや、我が息子からも聞くな」
「コウ君です?」
「ああ。我が息子は大層姫のことを気に入っているようだ」
天王さまの言葉に、父さまがギュウウウとミィを抱きしめる手に力を籠める。
一瞬後、天王さまはいいことを思いついた、と言わんばかりに右手で拳をつくるとそれを左の手のひらに打ち付けた。
「そうだ! 我が息子と姫を婚約させよう!」「却下だ」
「……」
「却下だ」
天王さまに見られても頑として答えを変えない父さま。
天王さまの思いつきは、光の速さで却下されました。
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