前世は猫、今世は(文字通り)魔王の箱入り娘です!

雪野ゆきの

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邪神様参上!

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 あまりに眩しくて、わたしは目をギュッと瞑った。

 徐々に光が収まってきて、薄っすらと目を開けるとどこからか光の粒がパラパラと振っていた。

「きれい……」

 星の雨みたい……。

 すると光の中にふと影が現れる。
 影がこっちを認識した。


「あ! ミィ無事!? ずっと探してたんだよ!!」


「リーフェ兄さま!」
 魔法陣の上に現れた兄さまにぎゅむむっと抱き締められる。
「ミィに仕掛けてた監視魔道具もなんか作動しないし! どこのロリコンに攫われでもしたのかと心配したんだよ!?」
「ごめんなさいです?」
 ロリコンさんにではないけど誘拐されたのは事実のような……。

「り、リーフェ、なぜお主がその魔法陣から出てくるのだ!?」
「え? 俺ってば呼び出されたの? じゃあ誰かがミィに傷をつけたってこと!? 誰だそいつミンチにしてやる!!」
「それじゃあお主の妹がミンチになるぞ」
 モフ丸がチラッとミィを見る。
「こわわ」
 ミィひきにくにされちゃうんですか?
「……え? ミィ自分で傷つくっちゃったの?」
「手っ取り早く兄さまを呼び出そうとしたのです」
「いたいいたいしたねぇ」
 わたしの傷ついた指先を治癒してくれるリーフェ兄さま。
 簡単な治癒魔法ならほぼすべての魔族ができる。


「はぁ、とりあえずリーフェが召喚された理由を聞いてもいいか? あと、家族達に連絡を入れておけ」
 モフ丸がため息まじりにそう言った。







「え? 俺って人界で邪神って呼ばれてたの!? 失礼な」
「そんなことよりもお主がミィの兄をやってることの方が気になるがのう」
「そんなことって……。う~ん、どこから話せばいいのかな~」
 リーフェ兄さまは教会の人に入れてもらった紅茶で唇を濡らした。
「そうだなぁ、まあ簡単に言うと俺はミィに拾われたんだよね」
「え~、羨ましい」
 オズお兄さんがテーブルに両肘をつき、手の甲に自分の顎をのせる体勢でそう言った。
「てかなんでお前いんの? 勇者って暇なの? 変態なの?」
「比較的暇でも変態でもありますね。そんなことより続きをどうぞ」
「だから、死にかけてたらミィに拾われて助けられ、そんでもって父上と血の契約をしてミィのお兄ちゃんに就任したってわけ」
 リーフェ兄さまはあっけらかんと言う。

「ミィ、お主はなんてものを拾っておるのだ」
「えへへ、照れるのです」
「褒めてはおらぬ」
 ぺちんとモフ丸に肉球アタックされた。ごほうびです。

 おずおずとリーフェ兄さまに話し掛ける教会の人達。
「魔界の王子ってことは……」
「我らの神には……」
「ならないねぇ」
 スパっと断言する兄さま。
「「「そんなぁ」」」
「そんなぁ、じゃないよ君達。魔界の姫君の誘拐って結構なことだからね? 王には報告させてもらうよ」
 オズお兄さんは人界の王様とは知り合いなのかな?
 教会の人達は渋々だけど頷いてた。大人しく罰は受け入れるようだ。



「「「―――ミィ!!!!」」」


 すごい聞きなれた声が耳に飛び込んでくる。
「ふぉっ」
 そしてその一瞬後には三人の大人に抱き締められていた。
「ミィ、心配したのだぞ!!」
 おお、父さまが珍しく声を張ってる。しかもちょっと声が湿ってる。オルフェ兄さまとイルフェ兄さまは無言で抱き上げたわたしのお腹に顔を埋めてグリグリしてる。
 わたしも父さま達に抱っこされたらなんか肩の力が抜けてきた……。
 ポスンとオルフェ兄さまの頭の上に自分の頭をのせる。


「どうやらお迎えがきたみたいだね」
「お前が人界を囲む変な結界を張っていなければもっと早くミィを見つけられたのだ」
「いや、それも勇者のお仕事ですし」
 オズお兄さんに言いがかりをつけるオルフェ兄さま。
「とりあえず今日はもう帰ってミィを休ませてあげてください。きっと疲れてるでしょう。あと知らない人にほいほいついて行っちゃったお説教も」
「……分かった」
 オルフェ兄さまはわたしを抱えなおし、自分の方にわたしの顎をのせた。

「では我らは帰る。この者らの処分は後日話し合う場を作ってくれ。我らはまだ事の全容も分かっておらぬからな」
「分かりました」
 なんか、父さまとオズお兄さんの会話が遠くに聞こえる。

「おいミィ、大丈夫か!?」
 兄さまの足元にいるモフ丸が大丈夫かと聞いてきた。
 なにが?
 眠たいからか体が重いくらいだよ。そんなに慌てなくても……と思ってたらイルフェ兄さまが手をわたしのおでこに当ててきた。
「おいミィ、お前熱があるじゃねぇか!」
「ねつ?」
「もう疲れが出始めちゃったんだねぇ。ミィはまだ子どもだから安心して発熱しちゃったんだよ」
「すぐに帰るぞ」
「お説教はミィの熱が下がってからだな」


 ……お、おせっきょうはわすれてくれないんですね……きゅう……。


 ミィはしっかり気絶しました。





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