前世は猫、今世は(文字通り)魔王の箱入り娘です!

雪野ゆきの

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モフ丸とお風呂!

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 収穫してきた野菜を料理長に預けてわたし達はお風呂にやってきた。料理長はガタイのいいおじいちゃんで、野菜を持ってきたわたしの頭を撫でて褒めてくれた。
「おいしくお料理してください」
「姫様が育ててくれた野菜ですからね。腕を振るいますよ」
「えへへ」
「姫様は本当にお可愛らしい。さあ、ジィに構ってないでお風呂に行ってきてください」
「は~い。モフ丸、行きますよ」
「キュ!」

 テトテトと、廊下の床を汚さないようにお風呂に向かう。お掃除する人が大変だからね。

 王族専用の大浴場に着くと、わたしはすぽぽんっと土で汚れた洋服を脱ぎモフ丸とお風呂場に入った。すでに湯船にはお湯が張られていて、真っ白い湯気がもわっとわたし達を包む。

「おいでモフ丸」
 シャワーの前にモフ丸を呼びつけた。モフ丸は素直にテトテトと歩いてきてわたしの前に座る。かわかわなのです。
 わたしはモフ丸のフサフサの尻尾を触る。
 さらばモフモフ、暫しの別れです……。
 わたしはモフ丸のモフ毛にお湯をかけていった。最初は毛がお湯を弾いちゃったけど次第にモフモフがぺっちょりしていく。


「お~、モフ丸あわあわ」
 毛の多いモフ丸はとても泡立ちがよかった。でもやっぱり普段のモフ丸の方が触り心地はいいですね。
 ちゃんと毛の隙間までかき分けて砂粒を落としていく。そしてついでにちゃちゃっと自分も洗う。
 ジャバババンとあわあわを流し、いよいよ湯船に入る。モフ丸は大きい湯船には入れちゃダメって言われたから犬用の大きい桶みたいなのを持ってきてもらった。そこにお湯をためてあげる。

 ちゃぽんとお湯につかったモフ丸の頭に長方形に折ったタオルをのせてあげる。
 うむ、これこそ様式美です。
 わたしも頭にタオルをのせて湯船に浸かる。
「ふぃぃぃぃ」
 あたたかしなのです。
「キュィ~」
 モフ丸も大分リラックスしてるみたい。大分しんなりしたモフ丸は桶のふちにちょこんと前足をのせているかわわわわ。
 前世のわたし(猫)も相当可愛かったけど、モフ丸は多分その次くらいにかわいい。つまり世界で二番目にかわいい。ちなみに前世のわたしが世界一だと思う根拠は前世のご主人様が散々そう言ってたからだよ。


 存分にお風呂を堪能して温まったので、そろそろ上がろう。
「モフ丸、出ますよ~」
「キュイ!」
 モフ丸は一鳴きして桶から出てくる。前々から思ってたけどモフ丸はわたし達の言葉を理解してると思う。だってちゃんと反応するし、本人……本狐も隠す気なさそうだから大したことじゃないのかな。モフ丸も呑気に体ブルブルして水気取ってるし。かわわわわ。

「モフ丸、ちょっと待っててね」
 モフ丸をバスタオルの上に置いて先に自分の体を拭いちゃう。角の隙間まで丁寧に拭っていく。髪の毛は後で兄さまか父さまに乾かしてもらおっと。
 次にわたしはバスタオルでモフ丸の体をざっと拭う。
「モフ丸も後で乾かしてもらいましょうね」
「キュ!」
 モフ丸はぺちゃんとした尻尾をユラユラと揺らす。……やっぱりちょっと物足りないモフ。


 肩にタオルをかけて廊下に出ると父さまに遭遇した。
「あ、父さま。髪の毛乾かしてください!」
 父さまに抱き着く。
「風呂に入っていたのか」
「はい、畑を作って汚れちゃったので」
「よい畑はできたか?」
「はい、野菜も収穫できたので夕食で食べてくださいね」
「?」
 今の会話の間に父さまはわたしとモフ丸の毛を乾かしてくれた。
「なんか気付いたらニョキニョキ育って野菜ができてました」
「……我の子は天才だな」
 父さまによしよしと頭を撫でられる。
 そして、そのまま父さまに抱き上げられて食堂に向かうことになった。もう夜ごはんの時間なのか。
 父さまのわたしを抱いてない方の腕、つまりわたしの向かい側にはモフ丸が抱っこされている。ちゃんと抱っこされるのが新鮮なのか心なしモフ丸が嬉しそうだ。

 食堂に着くと、お風呂上りのわたしに料理長が真っ先にお水をくれた。それもお腹を冷やさないようにキンキンに冷えた水じゃなくて程よく冷えたお水だ。さすが料理長。

 わたしの作ったお野菜は家族に大好評だった。
 曰く、元気がでる、癒される、回復する、とのことだ。わたしにあまあまな家族なのでちょっと大げさに言ってるんだろう。兄さまや父さま、そしてモフ丸もガツガツ食べていたのでおいしかったのは本当なんだと思う。料理長の腕がよかっただけかもしれないけどね。

 でもみんながおいしそうに食べてくれたからミィは大満足なのです!






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