100 / 117
三章
【番外編】もしもこの世界にクリスマスがあったら
しおりを挟む
今回はもしもこの世界にクリスマスがあったらという番外編IFです!
――――
いつも通り家で両親とヴォルフス様とくつろぎながら雑談をしていると、聞き慣れない単語が出てきた。
「クリスマス? クリスマスってなんですか?」
「サンタという竜に乗った白髭のおじいさんが子どもにプレゼントを配ってくれるイベントだ」
「へぇ、竜王国にはそんな素敵なイベントがあるんですね。でも、私はもう小さな子どもでもないのでサンタさんは来てくれませんね」
ちょっとションボリです。
「いや、リアはいい子だからきっとサンタも来てくれるさ。なにかほしいものはないのか?」
「ほしいもの……ほしいもの……?」
はて、と首を傾げる。
……ほしいもの、特にないですね。
左右にコテンコテンと首を傾げていると、お母さんが私の顔を覗き込んできた。
「あら、リアってばキョトンとした顔しちゃって。うちの子ってば物欲っって何? って顔してるわ」
かわいいわぁ~とお母さんに抱き締められる。
そして頬をほっそりとした両手で挟まれ、うりうりとされた。
「じゃあリアのプレゼントはサンタさんチョイスになるのかしらね」
お母さんがそう言うと、なぜかお父さんとヴォルフス様がびくっとなった。どうしてですかね?
「サンタさんはどうやってプレゼントをくれるんですか?」
その質問にはヴォルフス様が答えてくれる。
「煙突から入って、子どもが寝てる間に枕元にプレゼントを置いておいてくれるってのがよくある話だな」
「煙突……家にはないです……」
「安心しろ、最近は煙突がなくても大丈夫らしい」
「サンタさんも時代の流れに適応してくれるんですね」
煙突がないのにどうやって家に入って来るのかは気になったけれど、なんだかそれを聞くのは野暮な気がしたので聞くのは止めておいた。
「でも、寝てる間ってことはサンタさんは深夜に来てくれるんですね。そんな遅くにわざわざ来て下さるならお礼を言いたいです。今日の夜は起きて待ってましょうか……」
そう言うと、私以外の三人が一様に手で顔を覆った。
「いい子……!!!」
「いい子過ぎるがゆえにサンタ業がやりづらくなることはあるなんて……!!」
「しかもサンタの存在を信じて疑わないのがいい子すぎて辛い……!!」
何か言ってるけどみんな口元まで手で覆っているからなんて言ってるのか分からない。
するとお母さんがパッと顔から手を離し、私をヒョイっと抱き上げた。片腕に座らせる子ども抱きだ。
「リア、サンタさんはプレゼントを渡す子どもには姿を見せないものなのよ。それにサンタさんは夜更かしをしないいい子のところにしか来ないわ」
「そうなんですね」
「ええ、代わりにお母さんがサンタさん達にお礼を言っておくからリアは安心して寝なさい」
「達?」
「あ、いえ、サンタさんに、ね」
「?」
なんか煮え切らないですね。
ジッとお母さんを見てもフイッと視線を逸らされる。ならばとお父さんとヴォルフス様の方を見たけど、二人にもスッと視線を逸らされた。
なんか、変な雰囲気ですね。
そして夜、私はお母さんに寝かしつけられていた。
ベッドに横になった私の頭をお母さんがサラサラと撫でる。
「お母さん、サンタさんにお礼を言っておいてもらえますか?」
「ええ、お母さんに任せてリアはいい子で寝なさい」
「はい、お母さんおやすみなさい」
「おやすみリア」
おでこにちゅっとキスをされ、私は眠りについた。
***
次の日の朝。
「わぁ」
目を覚ましたら枕元がプレゼントで埋まっていた。
しかも、ちゃんと箱がリボンでラッピングしてあるやつだ。すごい、プレゼントっぽいです。
一つを手に取って感動に浸る。
こんなに嬉しい朝は人生で初めてかもしれません。
サンタさんはいつ来たんでしょう。知らない人が部屋に入ってきたら気付くと思うんですけど、全然気付きませんでした。
「……ん?」
そこであることに気付き、私は子竜の姿になった。
そしてプレゼントに残っている匂いをスンスンと嗅ぎ――
「きゅ~!!」
「あら、リアおはよう」
「おはようリア」
朝だからさすがにヴォルフス様はいないけど、リビングに行くと両親が出迎えてくれた。
「きゅ~!!」
私はお父さんの胸に飛び込んだ。
そしてふわりと香るこの匂いは先程嗅いだ匂いと同じで――
プレゼントに残っていた匂いは二つで、そのうちの一つの匂いはこの場所にはないけど、よく嗅ぎ慣れた匂いだった。
つまりは、そういうことだ。
でも、指摘するのは野暮だとさすが私でも分かる。
だから、私のサンタさん達にはそれとなく感謝を伝えることにしよう。
手始めに、私はぎゅ~っとお父さんに抱き着いておいた。
「はは、サンタさんからのプレゼントが嬉しかったのかな? よかったねリア」
「きゅ~!!」
私は感謝の気持ちを込め、高らかに鳴いた。
****お知らせ****
この作品の電子書籍が発売しました!
電子書籍派の方はぜひどうぞ!
――――
いつも通り家で両親とヴォルフス様とくつろぎながら雑談をしていると、聞き慣れない単語が出てきた。
「クリスマス? クリスマスってなんですか?」
「サンタという竜に乗った白髭のおじいさんが子どもにプレゼントを配ってくれるイベントだ」
「へぇ、竜王国にはそんな素敵なイベントがあるんですね。でも、私はもう小さな子どもでもないのでサンタさんは来てくれませんね」
ちょっとションボリです。
「いや、リアはいい子だからきっとサンタも来てくれるさ。なにかほしいものはないのか?」
「ほしいもの……ほしいもの……?」
はて、と首を傾げる。
……ほしいもの、特にないですね。
左右にコテンコテンと首を傾げていると、お母さんが私の顔を覗き込んできた。
「あら、リアってばキョトンとした顔しちゃって。うちの子ってば物欲っって何? って顔してるわ」
かわいいわぁ~とお母さんに抱き締められる。
そして頬をほっそりとした両手で挟まれ、うりうりとされた。
「じゃあリアのプレゼントはサンタさんチョイスになるのかしらね」
お母さんがそう言うと、なぜかお父さんとヴォルフス様がびくっとなった。どうしてですかね?
「サンタさんはどうやってプレゼントをくれるんですか?」
その質問にはヴォルフス様が答えてくれる。
「煙突から入って、子どもが寝てる間に枕元にプレゼントを置いておいてくれるってのがよくある話だな」
「煙突……家にはないです……」
「安心しろ、最近は煙突がなくても大丈夫らしい」
「サンタさんも時代の流れに適応してくれるんですね」
煙突がないのにどうやって家に入って来るのかは気になったけれど、なんだかそれを聞くのは野暮な気がしたので聞くのは止めておいた。
「でも、寝てる間ってことはサンタさんは深夜に来てくれるんですね。そんな遅くにわざわざ来て下さるならお礼を言いたいです。今日の夜は起きて待ってましょうか……」
そう言うと、私以外の三人が一様に手で顔を覆った。
「いい子……!!!」
「いい子過ぎるがゆえにサンタ業がやりづらくなることはあるなんて……!!」
「しかもサンタの存在を信じて疑わないのがいい子すぎて辛い……!!」
何か言ってるけどみんな口元まで手で覆っているからなんて言ってるのか分からない。
するとお母さんがパッと顔から手を離し、私をヒョイっと抱き上げた。片腕に座らせる子ども抱きだ。
「リア、サンタさんはプレゼントを渡す子どもには姿を見せないものなのよ。それにサンタさんは夜更かしをしないいい子のところにしか来ないわ」
「そうなんですね」
「ええ、代わりにお母さんがサンタさん達にお礼を言っておくからリアは安心して寝なさい」
「達?」
「あ、いえ、サンタさんに、ね」
「?」
なんか煮え切らないですね。
ジッとお母さんを見てもフイッと視線を逸らされる。ならばとお父さんとヴォルフス様の方を見たけど、二人にもスッと視線を逸らされた。
なんか、変な雰囲気ですね。
そして夜、私はお母さんに寝かしつけられていた。
ベッドに横になった私の頭をお母さんがサラサラと撫でる。
「お母さん、サンタさんにお礼を言っておいてもらえますか?」
「ええ、お母さんに任せてリアはいい子で寝なさい」
「はい、お母さんおやすみなさい」
「おやすみリア」
おでこにちゅっとキスをされ、私は眠りについた。
***
次の日の朝。
「わぁ」
目を覚ましたら枕元がプレゼントで埋まっていた。
しかも、ちゃんと箱がリボンでラッピングしてあるやつだ。すごい、プレゼントっぽいです。
一つを手に取って感動に浸る。
こんなに嬉しい朝は人生で初めてかもしれません。
サンタさんはいつ来たんでしょう。知らない人が部屋に入ってきたら気付くと思うんですけど、全然気付きませんでした。
「……ん?」
そこであることに気付き、私は子竜の姿になった。
そしてプレゼントに残っている匂いをスンスンと嗅ぎ――
「きゅ~!!」
「あら、リアおはよう」
「おはようリア」
朝だからさすがにヴォルフス様はいないけど、リビングに行くと両親が出迎えてくれた。
「きゅ~!!」
私はお父さんの胸に飛び込んだ。
そしてふわりと香るこの匂いは先程嗅いだ匂いと同じで――
プレゼントに残っていた匂いは二つで、そのうちの一つの匂いはこの場所にはないけど、よく嗅ぎ慣れた匂いだった。
つまりは、そういうことだ。
でも、指摘するのは野暮だとさすが私でも分かる。
だから、私のサンタさん達にはそれとなく感謝を伝えることにしよう。
手始めに、私はぎゅ~っとお父さんに抱き着いておいた。
「はは、サンタさんからのプレゼントが嬉しかったのかな? よかったねリア」
「きゅ~!!」
私は感謝の気持ちを込め、高らかに鳴いた。
****お知らせ****
この作品の電子書籍が発売しました!
電子書籍派の方はぜひどうぞ!
20
お気に入りに追加
5,212
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
魅了が解けた元王太子と結婚させられてしまいました。 なんで私なの!? 勘弁してほしいわ!
金峯蓮華
恋愛
*第16回恋愛小説大賞で優秀賞をいただきました。
これも皆様の応援のお陰だと感謝の気持ちでいっぱいです。
これからも頑張りますのでよろしくお願いします。
ありがとうございました。
昔、私がまだ子供だった頃、我が国では国家を揺るがす大事件があったそうだ。
王太子や側近達が魅了の魔法にかかり、おかしくなってしまった。
悪事は暴かれ、魅了の魔法は解かれたが、王太子も側近たちも約束されていた輝かしい未来を失った。
「なんで、私がそんな人と結婚しなきゃならないのですか?」
「仕方ないのだ。国王に頭を下げられたら断れない」
気の弱い父のせいで年の離れた元王太子に嫁がされることになった。
も〜、勘弁してほしいわ。
私の未来はどうなるのよ〜
*ざまぁのあとの緩いご都合主義なお話です*

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。