生贄令嬢は怠惰に生きる~小動物好き竜王陛下に日々愛でられてます~

雪野ゆきの

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三章

【番外編】もしもこの世界にクリスマスがあったら

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今回はもしもこの世界にクリスマスがあったらという番外編IFです!

――――



 いつも通り家で両親とヴォルフス様とくつろぎながら雑談をしていると、聞き慣れない単語が出てきた。

「クリスマス? クリスマスってなんですか?」
「サンタという竜に乗った白髭のおじいさんが子どもにプレゼントを配ってくれるイベントだ」
「へぇ、竜王国にはそんな素敵なイベントがあるんですね。でも、私はもう小さな子どもでもないのでサンタさんは来てくれませんね」

 ちょっとションボリです。

「いや、リアはいい子だからきっとサンタも来てくれるさ。なにかほしいものはないのか?」
「ほしいもの……ほしいもの……?」

 はて、と首を傾げる。
 ……ほしいもの、特にないですね。
 左右にコテンコテンと首を傾げていると、お母さんが私の顔を覗き込んできた。

「あら、リアってばキョトンとした顔しちゃって。うちの子ってば物欲っって何? って顔してるわ」

 かわいいわぁ~とお母さんに抱き締められる。
 そして頬をほっそりとした両手で挟まれ、うりうりとされた。

「じゃあリアのプレゼントはサンタさんチョイスになるのかしらね」

 お母さんがそう言うと、なぜかお父さんとヴォルフス様がびくっとなった。どうしてですかね?

「サンタさんはどうやってプレゼントをくれるんですか?」

 その質問にはヴォルフス様が答えてくれる。

「煙突から入って、子どもが寝てる間に枕元にプレゼントを置いておいてくれるってのがよくある話だな」
「煙突……家にはないです……」
「安心しろ、最近は煙突がなくても大丈夫らしい」
「サンタさんも時代の流れに適応してくれるんですね」

 煙突がないのにどうやって家に入って来るのかは気になったけれど、なんだかそれを聞くのは野暮な気がしたので聞くのは止めておいた。

「でも、寝てる間ってことはサンタさんは深夜に来てくれるんですね。そんな遅くにわざわざ来て下さるならお礼を言いたいです。今日の夜は起きて待ってましょうか……」

 そう言うと、私以外の三人が一様に手で顔を覆った。

「いい子……!!!」
「いい子過ぎるがゆえにサンタ業がやりづらくなることはあるなんて……!!」
「しかもサンタの存在を信じて疑わないのがいい子すぎて辛い……!!」

 何か言ってるけどみんな口元まで手で覆っているからなんて言ってるのか分からない。

 するとお母さんがパッと顔から手を離し、私をヒョイっと抱き上げた。片腕に座らせる子ども抱きだ。

「リア、サンタさんはプレゼントを渡す子どもには姿を見せないものなのよ。それにサンタさんは夜更かしをしないいい子のところにしか来ないわ」
「そうなんですね」
「ええ、代わりにお母さんがサンタさん達にお礼を言っておくからリアは安心して寝なさい」
「達?」
「あ、いえ、サンタさんに、ね」
「?」

 なんか煮え切らないですね。
 ジッとお母さんを見てもフイッと視線を逸らされる。ならばとお父さんとヴォルフス様の方を見たけど、二人にもスッと視線を逸らされた。
 なんか、変な雰囲気ですね。






 そして夜、私はお母さんに寝かしつけられていた。
 ベッドに横になった私の頭をお母さんがサラサラと撫でる。

「お母さん、サンタさんにお礼を言っておいてもらえますか?」
「ええ、お母さんに任せてリアはいい子で寝なさい」
「はい、お母さんおやすみなさい」
「おやすみリア」

 おでこにちゅっとキスをされ、私は眠りについた。


***



 次の日の朝。

「わぁ」

 目を覚ましたら枕元がプレゼントで埋まっていた。
 しかも、ちゃんと箱がリボンでラッピングしてあるやつだ。すごい、プレゼントっぽいです。
 一つを手に取って感動に浸る。

 こんなに嬉しい朝は人生で初めてかもしれません。
 サンタさんはいつ来たんでしょう。知らない人が部屋に入ってきたら気付くと思うんですけど、全然気付きませんでした。

「……ん?」

 そこであることに気付き、私は子竜の姿になった。
 そしてプレゼントに残っている匂いをスンスンと嗅ぎ――




「きゅ~!!」
「あら、リアおはよう」
「おはようリア」

 朝だからさすがにヴォルフス様はいないけど、リビングに行くと両親が出迎えてくれた。

「きゅ~!!」

 私はお父さんの胸に飛び込んだ。
 そしてふわりと香るこの匂いは先程嗅いだ匂いと同じで――

 プレゼントに残っていた匂いは二つで、そのうちの一つの匂いはこの場所にはないけど、よく嗅ぎ慣れた匂いだった。
 つまりは、そういうことだ。
 でも、指摘するのは野暮だとさすが私でも分かる。

 だから、私のサンタさん達にはそれとなく感謝を伝えることにしよう。

 手始めに、私はぎゅ~っとお父さんに抱き着いておいた。

「はは、サンタさんからのプレゼントが嬉しかったのかな? よかったねリア」

「きゅ~!!」

 私は感謝の気持ちを込め、高らかに鳴いた。












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