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三章

私はどんな危なっかしい子どもですか

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 魔道具はブレスレット型とアンクレット型のものを用意した。ちょっと邪魔かな? とも思ったけれど、常に携帯していないと意味がないので、ブレスレット・アンクレット型にすることに落ち着いたのだ。

 デザインはシンプルなのとオシャレで繊細な作りのものの二種類を用意した。ブレスレット型とアンクレット型、それぞれに二種類のデザインがあるので全部で四種類の中から選ぶことができる。全部できることは一緒なんですけどね。
 魔道具は二個でワンセットで、片方は位置を知らせる専用、片方は位置を知る専用になっている。デザインのベースは同じだけど、機能によって若干作りが違う。親御さんが持つ、位置を知る専用の魔道具には特殊な石から作られた小さな板がついているのだ。そこに魔法陣を組み込み、セットの魔道具までの距離と方向がそれぞれ数字と矢印で表示されるようになっている。
 あまり無骨にしたくなかったので、デザインの邪魔をしない程度の大きさの板にしたのがポイントです。

 今日はこの魔道具の発売日なので、包装された魔道具を運ぶために箱の中に詰めていく。
 前回の反省を踏まえ、今回はかなり余裕のあるスケジュールを組みまったりと作業した。両親やヴォルフス様にも大分心配をかけちゃいましたし、子竜達にも寂しい思いをさせちゃいましたからね。今回は子竜ズに会いに行くことも欠かしてませんし、適度に休憩を入れることも忘れてません。すごい進歩です。脱ワーカーホリックですね。
 また、前回は予想以上にお客さんがきたので、今回は事前に予約をしてもらうことで大体の数を把握し、それよりも少し多めに在庫を確保した。これでまた発売後に慌てて魔道具を作り足すようなことはないはずだ。


 全ての魔道具を箱に詰め終わったのでミカエルさんに声を掛ける。

「ミカエルさん、魔道具詰め終わりました」
「おっけ~、じゃあ販売所に移動しようか。姫様持てる?」
「はい」

 ミカエルさんに返事をし、魔道具が詰まった箱を持ち上げるとズシリとした重みが腕に加わった。
 う……、結構重たいですね。少し欲張って詰めすぎちゃったみたいです。
 かと言って自分よりもさらに沢山の荷物を担いでいるミカエルさんに弱音を吐くのはかっこ悪いので嫌だ。

 販売所に着くまでに落とさないよう、箱を持ち直す。
 魔道具は高価ですから、落とすわけにはいきません。
 幸いにも、ミカエルさんは前を歩いているから私のへっぴり腰具合は見ていない。

 腕をプルプルさせたまま廊下にでると、ふと腕が軽くなった。荷物を落としたわけではない。廊下にいたヴォルフス様が私の持っていた荷物をひょいっと取り上げたのだ。

「リ~ア、無理はするなって言ってるだろ?」
「あ、こんにちはヴォルフス様。すみません、このくらいならいける気がしたんです」
「この箱、結構大きいし重いぞ? 仔猫が一匹で親猫の首を咥えて運ぼうとするくらい無謀だから止めた方がいい」

 ヴォルフス様が真顔でなんともかわいらしい例えをする。
 私の頭の中に、仔猫がミィミィと鳴きながら親猫の体をよじ登って行く光景が浮かんだ。……運ぶどころか持ち上げられてすらいませんね。少なくとも私は持ち上げられはしましたし、そこまで無謀ではないはず……うん。

「そこまで無謀じゃないって思ってるな?」
「なんで分かったんですか?」
「かわいい顔に思考が全部出てたぞ。ほら、行こう」

 そう言うとヴォルフス様は私の荷物を持ったまま歩き出してしまった。

「あ、ヴォルフス様!」

 私も慌ててヴォルフス様の後を追いかけるけど、歩幅が違うので中々追いつけない。

「まあまあ姫様、ここは甘えておきなよ」
「ミカエルさん」

 大量の荷物を抱えすぎて、前すら見えていなさそうなミカエルさんが私と並んで歩きながら言う。
 箱がいくつも重なり、その天辺はミカエルさんの頭の上を優に越している。重さもかなりのもののはずなのにミカエルさんは表情一つ変わっていない。さすがは竜人さんですね。

「ごめんね姫様、姫様には文字通り荷が重かったのを気付いてあげられなくって」
「……いえ、お気になさらないでください。なんか、その状態のミカエルさんに気遣っていただくと複雑な気分ですね。なにか持ちましょうか?」
「まあまあ、俺達と姫様じゃあ基本的な構造が違うしね」

 「何か持ちましょうか?」と聞いたのは軽く聞き流されてしまった。

 そのままちょこちょこと足の回転を速め、ヴォルフス様を追いかけているとあっという間に販売所についてしまった。
 テーブルの上にヴォルフス様が荷物を置く。

「すみませんヴォルフス様、ありがとうございます」
「どういたしまして」

 ふわりと微笑んだヴォルフス様によしよしと頭を撫でられる。

「じゃあ、俺はもう行くな。また昼に会おう」
「はい、ありがとうございました!」

 ニコッと笑ってお礼を言う。

「あ~、リアかわいい。これで俺今日も仕事がんばれる」

 今度はわっしゃわっしゃと動物のように私の頭を撫でると、満足したのかヴォルフス様が仕事場に帰っていった。

 もうすぐお客さんが来るので、私達もすぐ準備にとりかかる。



***



 今回は予約制にしたので、前回のようにお客さんがなだれ込んでくることはなかった。予約したお客さんが各々、都合のいい時間に訪れてくる。

「あら、本当にちっちゃくてかわいらしいわ! 噂に勝るかわいらしさね。姫様もこの魔道具持った方がいいわよ?」
「はい」


「ひゃ~かわいすぎる!! うちの子のお人形さんよりもかわいらしいわ!! 攫われないか心配。ちゃんと陛下とペアでこの魔道具持つのよ?」
「はい」


「うっわ、ちっちぇ~! かわい~!! うちの五歳児よりも骨が細いんじゃねぇか? 姫様もちゃんとご両親とペアでこの魔道具持った方がいいぜ?」
「あ、はい……」


 なぜか魔道具を取りに来た人みんなが私にこの魔道具を持つことを勧めてくる。いや、この魔道具作ったの私なんですけどね……? 
 なんだか妙な気持ちです……。

「――ミカエルさん、私そんなに危なっかしく見えます?」
「姫様の存在が竜人の庇護欲を煽りすぎるんだろうね。彼らの気持ちはとてもよく分かるよ」


 あ、ミカエルさんもあちら側なんですね……。










*****************

紙書籍が来週、11/30頃、レジーナブックス様より発売予定です!(地域差あり)

本屋にお立ち寄りの際や通販などで是非お手に取っていただけると幸いです!!








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