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三章
学校に興味をもったようです
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朝起きて自分の魔道具の効果を実感する。
すっきりさっぱりパッチリ目が覚めました。すごく爽快な気分です。
いつもより夜更かしをしたので絶対に朝起きられないと思ったけれど微塵も眠気が残っていない。なるほど、研究者のみなさんがこぞって購入してくださったわけです。
思わぬ形で自分の魔道具の効果を実感しました。
みんなも、なんなら昨日より顔色がよくなっている。
「きゅ!」
「きゅきゅっ」
「きゅ~!!!」
「きゅ?(え?)」
元気いっぱいに目覚めた三頭は颯爽と駆け出していってしまった。あっさりと私の傍から離れて。
昨日はあんなにべったりだったのに……。
もう満足したんですかね。これはこれでなんか寂しい気もします……。
ああ、追いかけっこを始めちゃってこっちなんか見向きもしてくれない。まあ、埋め合わせに成功したと思えばいいんですかね。
……人型に戻りましょう。
私は片付けの手伝いをすべく人型に戻った。
「おはようリア」
「おはようございますヴォルフス様」
寝起きでセットされていないからか、サラリと前髪が目にかかっている姿が新鮮です。なんか、ドキドキする気がします……。
きゅっきゅと走り回る子竜達を見てヴォルフス様が目を細める。
「子竜達も満足してくれたみたいでよかったな」
「はい。寂しい思いをさせちゃったので満足してくれたならよかったです」
今度からは日を開けずに会いに来よう。
そして、楽しかったお泊り会を幕を閉じ、両親と私は家に帰ってきた。
帰る時もリューン達に引き止められなかったのはちょっと寂しかったです。チラチラと振り返ってみたりしたけどちっちゃなおててを振ってくれるだけで引き止められることはなかった。
そこは引き止めてくださいよ!
****
なんとなく悔しかったので、私は日を開けずに竜舎を訪ねた。
「こんにちは。……あれ? ノヴァ、何持ってるんですか?」
「きゅ!」
ノヴァが手に持っている冊子をズイっと差し出して私に見せてくれた。
その表紙に書いてある文字は――
「学校?」
「きゅ!」
そー! とノヴァコクコク頷く。
「そう言えば、お泊り会の時にヴォルフス様達の話で興味もってましたもんね。シアラさんに冊子を用意してもらったんですか?」
「きゅ!」
ノヴァは嬉しそうに冊子をパラパラとめくっている。リューンとカノンも興味深そうに後ろから覗き込んでいた。
「ノヴァは学校に行ってみたいんですか?」
「きゅ~!!」
ノヴァの瞳がキラキラと輝いている。
学校……。実は私も行ったことないんですよね。貴族が通う学園もあったことにはあったけれど通ってはいなかった。エルゼリアは行ってたんですかね? あの頃はあまり周りを見ている余裕がなかったから覚えていない。
必要な知識はほぼ独学で身に付けた。知識を身に付けるのに必要な教材や本は揃っていたので。今思えば、それはさり気なくエルゼリアが用意してくれていたのかもしれない。エルゼリアはきちんと自分専用のものを使っていたし。
「ノヴァ、申し訳ないんですけで私も学校には行ったことがないのでお話とかはしてあげられないんです……」
期待したような目をしているノヴァにそう言う。
すると、どうやら近くにいたシアラさんも今の会話を聞いていたようで私の言葉に反応した。
「え? 人王国には学校はなかったんですか?」
「いえ、ありましたけど義務ではないので。あと、まあ私の場合は保護者があれだったので……」
「ああ……」
色々と察してくれたようだ。私の叔父を思い浮かべたのか、シアラさんの眼光が鋭くなる。だけど、もちろん叔父はこの場にはいないので、一つ息を吐いて怒りを収めた。
「――まあ、楽しいだけの場所でもありませんでしたけれど。ノヴァは学校に行って何がしたいんですか?」
「きゅ~!!」
「授業を受けてみたいそうです」
「まあ」
シアラさんの顔が意外そうな表情になる。
「まさか一番最初に授業が出てくるとは思いませんでした。でも、たしかに普通に竜をしてたら一生授業を受けることなんてありませんもんね」
「シアラさんは授業は好きじゃなかったんですか?」
「う~ん、ものにもよりますけどやっぱり喜んで受けたい! って感じではなかったですわね」
やらなきゃいけないことはやりたくなくなるってやつですかね? たまに受けるならいいけれどほとんど毎日授業があるというのはやっぱりキツイのかもしれない。
そういえば前にハルトさんに魔術の使い方とかを教えてもらう機会があったけど、思えばあれが一番学校の授業に近かったかもしれない。……いえ、あれはどちらかというと家庭教師ですかね?
「リアさんも学校に興味あるんですか?」
「は、はい」
そう言うと、シアラさんは少し考え込むような素振りを見せた。
「――私の一存では学校の見学を取り付けることはできないので、とりあえずそれっぽいことをしてみましょうか!」
「それっぽいこと?」
「きゅ?」
私とノヴァは揃って首を傾げた。
***
そして、シアラさんによって用意されたのは学校机とイスのセットが四つと黒板、そしてハルトさんだった。
急に連れてこられたハルトさんはいまいちよく状況がのみ込めていないようだ。
「え~っと、僕は何をすればいいの?」
「子竜達とリアさんに向けて授業をしてください」
「僕の専門分野は竜と魔術だけど? それを子竜ちゃん達と姫様に向けて授業しろっていうの?」
「はい」
シアラさん、意外とハルトさんには容赦ないですね。
え~、とでも言いたげなハルトさんの視線がこちらに向く。そして、その視線の先には期待に瞳を輝かせ、椅子に座って机の上でちょこんと両前脚を揃えている子竜ズ。
「……えっと、じゃあとりあえずやってみようか」
ハルトさんが折れる。
大好きな子竜達の視線を受け、それでも抗うことはできなかったようです。
すっきりさっぱりパッチリ目が覚めました。すごく爽快な気分です。
いつもより夜更かしをしたので絶対に朝起きられないと思ったけれど微塵も眠気が残っていない。なるほど、研究者のみなさんがこぞって購入してくださったわけです。
思わぬ形で自分の魔道具の効果を実感しました。
みんなも、なんなら昨日より顔色がよくなっている。
「きゅ!」
「きゅきゅっ」
「きゅ~!!!」
「きゅ?(え?)」
元気いっぱいに目覚めた三頭は颯爽と駆け出していってしまった。あっさりと私の傍から離れて。
昨日はあんなにべったりだったのに……。
もう満足したんですかね。これはこれでなんか寂しい気もします……。
ああ、追いかけっこを始めちゃってこっちなんか見向きもしてくれない。まあ、埋め合わせに成功したと思えばいいんですかね。
……人型に戻りましょう。
私は片付けの手伝いをすべく人型に戻った。
「おはようリア」
「おはようございますヴォルフス様」
寝起きでセットされていないからか、サラリと前髪が目にかかっている姿が新鮮です。なんか、ドキドキする気がします……。
きゅっきゅと走り回る子竜達を見てヴォルフス様が目を細める。
「子竜達も満足してくれたみたいでよかったな」
「はい。寂しい思いをさせちゃったので満足してくれたならよかったです」
今度からは日を開けずに会いに来よう。
そして、楽しかったお泊り会を幕を閉じ、両親と私は家に帰ってきた。
帰る時もリューン達に引き止められなかったのはちょっと寂しかったです。チラチラと振り返ってみたりしたけどちっちゃなおててを振ってくれるだけで引き止められることはなかった。
そこは引き止めてくださいよ!
****
なんとなく悔しかったので、私は日を開けずに竜舎を訪ねた。
「こんにちは。……あれ? ノヴァ、何持ってるんですか?」
「きゅ!」
ノヴァが手に持っている冊子をズイっと差し出して私に見せてくれた。
その表紙に書いてある文字は――
「学校?」
「きゅ!」
そー! とノヴァコクコク頷く。
「そう言えば、お泊り会の時にヴォルフス様達の話で興味もってましたもんね。シアラさんに冊子を用意してもらったんですか?」
「きゅ!」
ノヴァは嬉しそうに冊子をパラパラとめくっている。リューンとカノンも興味深そうに後ろから覗き込んでいた。
「ノヴァは学校に行ってみたいんですか?」
「きゅ~!!」
ノヴァの瞳がキラキラと輝いている。
学校……。実は私も行ったことないんですよね。貴族が通う学園もあったことにはあったけれど通ってはいなかった。エルゼリアは行ってたんですかね? あの頃はあまり周りを見ている余裕がなかったから覚えていない。
必要な知識はほぼ独学で身に付けた。知識を身に付けるのに必要な教材や本は揃っていたので。今思えば、それはさり気なくエルゼリアが用意してくれていたのかもしれない。エルゼリアはきちんと自分専用のものを使っていたし。
「ノヴァ、申し訳ないんですけで私も学校には行ったことがないのでお話とかはしてあげられないんです……」
期待したような目をしているノヴァにそう言う。
すると、どうやら近くにいたシアラさんも今の会話を聞いていたようで私の言葉に反応した。
「え? 人王国には学校はなかったんですか?」
「いえ、ありましたけど義務ではないので。あと、まあ私の場合は保護者があれだったので……」
「ああ……」
色々と察してくれたようだ。私の叔父を思い浮かべたのか、シアラさんの眼光が鋭くなる。だけど、もちろん叔父はこの場にはいないので、一つ息を吐いて怒りを収めた。
「――まあ、楽しいだけの場所でもありませんでしたけれど。ノヴァは学校に行って何がしたいんですか?」
「きゅ~!!」
「授業を受けてみたいそうです」
「まあ」
シアラさんの顔が意外そうな表情になる。
「まさか一番最初に授業が出てくるとは思いませんでした。でも、たしかに普通に竜をしてたら一生授業を受けることなんてありませんもんね」
「シアラさんは授業は好きじゃなかったんですか?」
「う~ん、ものにもよりますけどやっぱり喜んで受けたい! って感じではなかったですわね」
やらなきゃいけないことはやりたくなくなるってやつですかね? たまに受けるならいいけれどほとんど毎日授業があるというのはやっぱりキツイのかもしれない。
そういえば前にハルトさんに魔術の使い方とかを教えてもらう機会があったけど、思えばあれが一番学校の授業に近かったかもしれない。……いえ、あれはどちらかというと家庭教師ですかね?
「リアさんも学校に興味あるんですか?」
「は、はい」
そう言うと、シアラさんは少し考え込むような素振りを見せた。
「――私の一存では学校の見学を取り付けることはできないので、とりあえずそれっぽいことをしてみましょうか!」
「それっぽいこと?」
「きゅ?」
私とノヴァは揃って首を傾げた。
***
そして、シアラさんによって用意されたのは学校机とイスのセットが四つと黒板、そしてハルトさんだった。
急に連れてこられたハルトさんはいまいちよく状況がのみ込めていないようだ。
「え~っと、僕は何をすればいいの?」
「子竜達とリアさんに向けて授業をしてください」
「僕の専門分野は竜と魔術だけど? それを子竜ちゃん達と姫様に向けて授業しろっていうの?」
「はい」
シアラさん、意外とハルトさんには容赦ないですね。
え~、とでも言いたげなハルトさんの視線がこちらに向く。そして、その視線の先には期待に瞳を輝かせ、椅子に座って机の上でちょこんと両前脚を揃えている子竜ズ。
「……えっと、じゃあとりあえずやってみようか」
ハルトさんが折れる。
大好きな子竜達の視線を受け、それでも抗うことはできなかったようです。
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