生贄令嬢は怠惰に生きる~小動物好き竜王陛下に日々愛でられてます~

雪野ゆきの

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三章

竜舎で調査です!

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 次の日、私はいつもより早い時間に竜舎にやって来た。
 そして竜舎について早々、シアラさんに会う。

「あら? リアさん今日は早いですね」
「はい! 楽しみできちゃいました」

 時間があるそうなので、昨日あったことをシアラさんに話す。そして、何か入用のものはないかとも聞いてみた。

「――リアさんの興味のあることが見つかってよかったです。そうですね、パッと思いつくことは特に……あ、子竜が遊べるおもちゃとかはどうですか? 竜は人よりも娯楽が少ないですから」
「いいですね!」

 確かに、竜は本とかは読みませんし、これと言った娯楽はなさそう。リューン達はかけっことかして遊んでたりしますけど、それもいずれ飽きちゃいますよね。現に大人の竜はかけっこなんてしてませんし。

「今日一日子竜と接しながら遊べそうなものを考えてみようと思います」
「うふふ、頑張ってくださいね」
「はい」

 私、やる気満々です。


「きゅ~」
「あ、リューン。おはようございます」

 私が来ていることが分かったのか、リューンが駆け寄ってきた。
 四本脚でとっとことっとこやってきたリューンを抱き上げる。そして頬同士をスリスリ。今日もかわいいです。
 頬をスリスリするとリューンも嬉しそうに鳴く。

「きゅ~!」
「うふふ、昨日は来れませんでしたからね、私も会えて嬉しいです」
「きゅきゅっ」
「今日はリューン達にお願いがあるんです」
「きゅ?」

 なに? と言いたげに首を傾げるリューン。

「リューン達のおもちゃを作りたいのでどんなのがいいか教えてください」
「きゅるるる~」

 まかせろ! とリューンが小さいおててで自分の胸を叩く。

 そして、私は最近の子竜達の遊びを教えてもらうことにした。
 う~ん、これはやっぱり実際に自分で体験してみた方がいいですよね。よし、私も竜になりましょう。
 そう思い、私も子竜の姿に变化した。
 自分の体を見下ろせば、ぽてっとしたお腹と小さい手足が見える。
 うん、いつも通りですね。

「きゅ~」
「きゅ! (はい、いきましょう!)」

 リューンの後に続いてぽてぽてと歩く。

「きゅるきゅる~♪」

 ぽてぽて歩きながらリューンが歌い出した。
 そんなリューンを微笑ましく思いながら後ろをついて行く私。リューンかわいいです。

 すると、少し歩いたところでリューンがこちらを振り返ってきた。

「きゅ?」

 こちらを見て首を傾げるリューン。なんでお前は歌わないんだと言いたげです。

「きゅきゅ? (いっしょにうたってほしいんですか?)」
「きゅ~!!」

 当たりみたいです。


「「きゅきゅきゅきゅ~♪」」

 二頭で歌いながら竜舎の中を進む。それを大人の竜達が微笑まし気に見てます。

「きゅ?」
「きゅ~!!」

 そこに二頭の子竜が駆け寄ってきた。もちろんカノンとノヴァです。
 カノンとノヴァは自分達も私達の後ろに並ぶと、一緒に歌い始めた。そしてそのまま子竜の行進が始まる。

「「「「きゅ~♪ きゅ~♪」」」」

 楽しいです。私もやっぱり子竜の時は赤ちゃんなので。ただ歌って歩いてるだけでも楽しいんですよね。時々手拍子なんかしちゃったりして。


 そして私達は目的地に到着した。

「きゅ~!!」

 「あそぶぞ~!!」とリューンが鳴く。すると、リューンの母竜であるリュズがボールを咥えてこちらにやって来た。

「クルルルル」

 ニヤリとリュズが笑う。
 こうなればやることは一つだ。

「クルルルルル!!」

 リュズがブンッと首を振ってボールを投げた。

「「「「きゅるるるるるる」」」」

 私達はそのボールを追って一斉に駆け出す。それはもう、一目散に。
 最初にボールの元に辿り着いたのはノヴァだった。ノヴァがボールを持つと、私達は再びリュズの所に戻る。もう一度投げてもらうのだ。
 やってることはわんちゃんと一緒ですけど、れっきとした竜です。

 この四頭の中だと足が遅い方なので、私が一番にボールに辿り着けることはあんまりない。だけど一心不乱にボールを追いかけるだけで楽しい。


 そんなことを何度も繰り返していると、リュズが段々疲れた……というか飽きてきたようです。もう終わりにしようと私達に言ってくる。

「ぎゅ~!!」
「ぎゅーぎゅ~!!!」

 そんなリュズに対して子竜達から文句の大合唱が響き渡る。あ、私は鳴いてませんよ。ちょっと疲れちゃったので。むしろちょうどいい頃合いでした。

「きゅ~ (みんなお昼寝しましょ~。わたしつかれちゃいました)」
「きゅ?」

 私がそう言うと。子竜達の合唱が止んだ。そして渋々私と一緒にベッドの方に向かってくれる。

 ぴょこんとクッションベッドに乗り、仰向けで寝転がると、小さなおててが私のお腹に置かれる。リューンの手です。
 そのままリューンが私のお腹を叩く。まるで人の親が子どもを寝かしつける時みたいで思わ笑みが漏れちゃいました。
 そしてリューンの真似をしてカノンとノヴァも私のお腹をポンポンしてくる。

 ……あ、もしかして私を寝かせてからもう一度遊ぶつもりなんですかね? 
 割とお兄ちゃん、お姉ちゃん風邪を吹かせたがる三頭なのであり得るかもしれない。……まあ、後のことはリュズに任せましょう。
 私は眠くなっちゃったので一寝入りすることにします。


 ――あれ? そういえば今日は何しに来たんでしたっけ……?

 あいにく、それを思い出す前に私は睡魔に負けてしまった。











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