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三章
子竜の知らせ
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謎のダメージからヴォルフス様が回復したのでおやつの時間にする。
「あれ? みんな離れないんですか?」
「「「きゅ~」」」
いつもシアラさんとお茶をしている、カフェテラスにあるような椅子に座ろうとしたんですけど三頭が離れない。べったりと私にくっついたままだ。
普段ならもっとあっさり離れていくんですけど、どうしたんですかね?
三頭を抱えて途方に暮れる私をヴォルフス様が微笑まし気に見つめてくる。
「それじゃあこの椅子には座れないな」
「ですよね……」
「お前達、リアから離れる気はないのか?」
「「「きゅ~!!!」」」
三頭が揃って首を横に振る。激しいですね。
そして改めてぎゅむっと私にしがみつく三頭。か、かわいい……。
ヴォルフス様も三頭に萌えたのか、ニヤケる顔を隠すように手で口元を覆った。
私も三頭をぎゅっと抱きしめてヴォルフス様を見上げる。
「ヴォルフス様、みんなかわいいです」
「そうだな、みんなかわいい」
ヴォルフス様の頬が少し染まっている。ほんとに小動物好きですよね。
「仕方ない、少し行儀は悪いがベッドの方で食べるか。リューン、お前のベッドを使わせてもらっていいか?」
「きゅっ!」
いいぞ! と言うようにリューンが片手を挙げる。もう片方の手は私のワンピースを握りしめたままだ。
リューンの許可も取れたところで移動する。
ちなみに、私の力では三頭を抱えきることはできない。だからさっきからヴォルフス様が片腕で私を支えてくれる。もちろん、移動の時も支えてもらいました。
「リュズ、お邪魔しますね」
「クルルルルルル」
リューンのベッドということは、もちろんその母竜であるリュズもいる。クッションベッドの上で寛いでいたリュズは、快く私達の座る場所を空けてくれた。
その空けてくれた場所に三頭をくっつけたまま腰かける。お菓子や飲み物はヴォルフス様が籠に入れて持ってきてくれた。
「みんなもうちょっとだけ待ってくださいね」
座るや否やおやつの入った籠に群がる三頭を止める。準備しますからね。
「クルルルルル」
「ふふ、リュズも何か食べますか?」
リュズがスリスリと私の後頭部に鼻先を擦り付けてくるので、おやつのおねだりかと思ったらそうでもないようだ。なにか食べるか聞くとプイッと離れていってしまった。
なんでしょう、甘えたかったんですかね……?
「きゅ~」
ノヴァが私の腕をぺしぺし叩く。
「ああ、すみません。おやつにしましょうね」
「きゅ~!!」
そう言って頭を撫でると、ノヴァが嬉しそうに鳴き声を上げた。
「――困ったな……」
「困りましたね」
何が困ったかというと、三頭が離れてくれないのだ。ひしと私にしがみついて離れない。
「かわいいんですけど困っちゃいましたね。次の見学場所に三頭を連れて行くわけにはいきませんよね……?」
「連れて行くこと自体に問題はないが、リアが大変だろう。あまり遠くにいると母竜達も心配するしな」
「そうですよねぇ」
私にしがみついている三頭を見遣る。短い手足で必死に私にしがみつく三頭からは「絶対に離れないぞ!」という意思が感じられる。
本当に、今日はどうしたんですかね……?
「――あれ? 姫様だ。それに陛下も。こんな所でどうしたの? 今日は職場見学の日じゃなかったっけ」
「あ、ハルトさん。こんにちは」
この子達をどうしようかと悩んでいると、ハルトさんがひょっこり顔を出した。
不思議そうな顔をするハルトさんにヴォルフス様が経緯を説明してくれる。
「宰相室に顔を出したらリアのワーカーホリックが再発してな。落ち着くために一旦ここに来たんだ」
「それは……災難というかなんというか……姫様は落ち着いた?」
「はい、もうすっかり」
なんでここに来たのかも忘れてたレベルです。そういえばワーカーホリックが再発しかけたこともありましたね。子竜達の事で頭がいっぱいだったのですっかり忘れてました。
「それはよかった。で、その子竜ちゃん達はどうしたの? なんかいつもと様子違うよね」
ハルトさんの目がキラキラしている。話してる途中でこの子達の様子に気付いてうずうずしてたんでしょうね。ハルトさんは竜が大好きですから。
「ここに来てからくっついて離れないんですよね。どうしてか分かりますか?」
「いや、僕にも分からないよ。なにせ姫様関係のことはイレギュラーが多すぎて記録にないことばかり起こるからね。僕がせっせと記録を残しているくらいだよ」
「それは……ご迷惑をおかけしてます……?」
「いやいや、全然迷惑なんかじゃないよ。むしろ色んな事象を観測した第一人者になれて感謝してるくらいさ」
そう言ってハルトさんがさっぱりと笑う。心の底からそう思っているのが伝わってきます。
「――ハルト、すまないがリアを頼んでもいいか? 俺は少し遅れることを次の見学場所に伝えてくる」
「もちろんいいよ」
「ヴォルフス様、すみません」
「リアが謝ることじゃないさ」
ヴォルフス様は私の頭をさらりと撫で、出口の方に足を踏み出した。
その瞬間――
ドッカーーーンッッ!!!!!
「!?」
びっ……くりしました。
ヴォルフス様が出口の方に向かおうとした瞬間、何かが墜落したような凄まじい音がした。なんなら地面もちょっと揺れましたよ。
音の大きさからしてかなり近い場所みたいです。音の元を確かめるためにヴォルフス様が駆け出した。私とハルトさんも子竜を連れながらヨタヨタとその後をついて行く。
出口に差し掛かった瞬間、誰かの怒鳴り声が響き渡った。
「バッカモーン!!! そんな高度から荷物を落とす奴があるか!! 人が下にいたらどうするんだ!!!」
「す、すみません!!!」
竜舎で働いているおじいさんが竜に乗っている青年を叱りつけている。どうやら、竜に荷物を運んでもらっていたけど固定の仕方が甘くて落としてしまったらしい。
竜舎の出口の目の前では木でできたコンテナが盛大に壊れていて、中の荷物がそこかしこに散らばっていた。結構な高さから落としたのか、地面も盛大に抉れている。
幸いにもその時周囲に人はおらず、死傷者はいないようです。
よかった……。
木の破片が結構飛んでますから、直撃は免れても大怪我をしていたかもしれません。
ホッと胸を撫でおろす。
「きゅ」
すると、私にしがみついて離れなかった三頭がスルスルと降りて行き、着地していく。
まるで、自分達の役目は終えたと言わんばかりに。
……この子達に引き止められていなかったらどうなっていたでしょうか……。考えてみれば、あのまま戻っていたら丁度出口に差し掛かるくらいの時間に落下音が聞こえた気がする。
でも、今日のあの時間に荷物が落下するなんてこの子達が知っていた筈もない。だって故意ではないわけですし。荷物を落としてしまった青年も竜も、この上なく申し訳なさそうに肩を落としている。
私はもう一度三頭を見遣った。
「――何か予感でもしたんですか?」
そう問いかけると、三頭は一度顔を見合わせた後に私を見上げる。そしてとってもかわいらしく胸を張った。
「「「きゅ!!」」」
「ふふふ」
胸を張ったことでよりぽこんと出たお腹が愛らしくて、ついつい微笑みが漏れる。
どうやら、私は虫の知らせならぬ子竜の知らせに助けられたようです。
「あれ? みんな離れないんですか?」
「「「きゅ~」」」
いつもシアラさんとお茶をしている、カフェテラスにあるような椅子に座ろうとしたんですけど三頭が離れない。べったりと私にくっついたままだ。
普段ならもっとあっさり離れていくんですけど、どうしたんですかね?
三頭を抱えて途方に暮れる私をヴォルフス様が微笑まし気に見つめてくる。
「それじゃあこの椅子には座れないな」
「ですよね……」
「お前達、リアから離れる気はないのか?」
「「「きゅ~!!!」」」
三頭が揃って首を横に振る。激しいですね。
そして改めてぎゅむっと私にしがみつく三頭。か、かわいい……。
ヴォルフス様も三頭に萌えたのか、ニヤケる顔を隠すように手で口元を覆った。
私も三頭をぎゅっと抱きしめてヴォルフス様を見上げる。
「ヴォルフス様、みんなかわいいです」
「そうだな、みんなかわいい」
ヴォルフス様の頬が少し染まっている。ほんとに小動物好きですよね。
「仕方ない、少し行儀は悪いがベッドの方で食べるか。リューン、お前のベッドを使わせてもらっていいか?」
「きゅっ!」
いいぞ! と言うようにリューンが片手を挙げる。もう片方の手は私のワンピースを握りしめたままだ。
リューンの許可も取れたところで移動する。
ちなみに、私の力では三頭を抱えきることはできない。だからさっきからヴォルフス様が片腕で私を支えてくれる。もちろん、移動の時も支えてもらいました。
「リュズ、お邪魔しますね」
「クルルルルルル」
リューンのベッドということは、もちろんその母竜であるリュズもいる。クッションベッドの上で寛いでいたリュズは、快く私達の座る場所を空けてくれた。
その空けてくれた場所に三頭をくっつけたまま腰かける。お菓子や飲み物はヴォルフス様が籠に入れて持ってきてくれた。
「みんなもうちょっとだけ待ってくださいね」
座るや否やおやつの入った籠に群がる三頭を止める。準備しますからね。
「クルルルルル」
「ふふ、リュズも何か食べますか?」
リュズがスリスリと私の後頭部に鼻先を擦り付けてくるので、おやつのおねだりかと思ったらそうでもないようだ。なにか食べるか聞くとプイッと離れていってしまった。
なんでしょう、甘えたかったんですかね……?
「きゅ~」
ノヴァが私の腕をぺしぺし叩く。
「ああ、すみません。おやつにしましょうね」
「きゅ~!!」
そう言って頭を撫でると、ノヴァが嬉しそうに鳴き声を上げた。
「――困ったな……」
「困りましたね」
何が困ったかというと、三頭が離れてくれないのだ。ひしと私にしがみついて離れない。
「かわいいんですけど困っちゃいましたね。次の見学場所に三頭を連れて行くわけにはいきませんよね……?」
「連れて行くこと自体に問題はないが、リアが大変だろう。あまり遠くにいると母竜達も心配するしな」
「そうですよねぇ」
私にしがみついている三頭を見遣る。短い手足で必死に私にしがみつく三頭からは「絶対に離れないぞ!」という意思が感じられる。
本当に、今日はどうしたんですかね……?
「――あれ? 姫様だ。それに陛下も。こんな所でどうしたの? 今日は職場見学の日じゃなかったっけ」
「あ、ハルトさん。こんにちは」
この子達をどうしようかと悩んでいると、ハルトさんがひょっこり顔を出した。
不思議そうな顔をするハルトさんにヴォルフス様が経緯を説明してくれる。
「宰相室に顔を出したらリアのワーカーホリックが再発してな。落ち着くために一旦ここに来たんだ」
「それは……災難というかなんというか……姫様は落ち着いた?」
「はい、もうすっかり」
なんでここに来たのかも忘れてたレベルです。そういえばワーカーホリックが再発しかけたこともありましたね。子竜達の事で頭がいっぱいだったのですっかり忘れてました。
「それはよかった。で、その子竜ちゃん達はどうしたの? なんかいつもと様子違うよね」
ハルトさんの目がキラキラしている。話してる途中でこの子達の様子に気付いてうずうずしてたんでしょうね。ハルトさんは竜が大好きですから。
「ここに来てからくっついて離れないんですよね。どうしてか分かりますか?」
「いや、僕にも分からないよ。なにせ姫様関係のことはイレギュラーが多すぎて記録にないことばかり起こるからね。僕がせっせと記録を残しているくらいだよ」
「それは……ご迷惑をおかけしてます……?」
「いやいや、全然迷惑なんかじゃないよ。むしろ色んな事象を観測した第一人者になれて感謝してるくらいさ」
そう言ってハルトさんがさっぱりと笑う。心の底からそう思っているのが伝わってきます。
「――ハルト、すまないがリアを頼んでもいいか? 俺は少し遅れることを次の見学場所に伝えてくる」
「もちろんいいよ」
「ヴォルフス様、すみません」
「リアが謝ることじゃないさ」
ヴォルフス様は私の頭をさらりと撫で、出口の方に足を踏み出した。
その瞬間――
ドッカーーーンッッ!!!!!
「!?」
びっ……くりしました。
ヴォルフス様が出口の方に向かおうとした瞬間、何かが墜落したような凄まじい音がした。なんなら地面もちょっと揺れましたよ。
音の大きさからしてかなり近い場所みたいです。音の元を確かめるためにヴォルフス様が駆け出した。私とハルトさんも子竜を連れながらヨタヨタとその後をついて行く。
出口に差し掛かった瞬間、誰かの怒鳴り声が響き渡った。
「バッカモーン!!! そんな高度から荷物を落とす奴があるか!! 人が下にいたらどうするんだ!!!」
「す、すみません!!!」
竜舎で働いているおじいさんが竜に乗っている青年を叱りつけている。どうやら、竜に荷物を運んでもらっていたけど固定の仕方が甘くて落としてしまったらしい。
竜舎の出口の目の前では木でできたコンテナが盛大に壊れていて、中の荷物がそこかしこに散らばっていた。結構な高さから落としたのか、地面も盛大に抉れている。
幸いにもその時周囲に人はおらず、死傷者はいないようです。
よかった……。
木の破片が結構飛んでますから、直撃は免れても大怪我をしていたかもしれません。
ホッと胸を撫でおろす。
「きゅ」
すると、私にしがみついて離れなかった三頭がスルスルと降りて行き、着地していく。
まるで、自分達の役目は終えたと言わんばかりに。
……この子達に引き止められていなかったらどうなっていたでしょうか……。考えてみれば、あのまま戻っていたら丁度出口に差し掛かるくらいの時間に落下音が聞こえた気がする。
でも、今日のあの時間に荷物が落下するなんてこの子達が知っていた筈もない。だって故意ではないわけですし。荷物を落としてしまった青年も竜も、この上なく申し訳なさそうに肩を落としている。
私はもう一度三頭を見遣った。
「――何か予感でもしたんですか?」
そう問いかけると、三頭は一度顔を見合わせた後に私を見上げる。そしてとってもかわいらしく胸を張った。
「「「きゅ!!」」」
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胸を張ったことでよりぽこんと出たお腹が愛らしくて、ついつい微笑みが漏れる。
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