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三章

本格的に将来を考えよう

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 クロープ地方でのことが片付いて、私も竜舎でのお手伝いを再開した。

 食事を終えたリューン達子竜と一緒に横になり、私はある本のページをめくる。

「う~ん、やっぱり魔術を活かせる職がいいですよねぇ」

 竜王国の仕事図鑑をパラパラとめくる。
 力仕事は無理だし、料理も多分あんまり得意ではない。だけど魔術はハルトさんのお墨付きもあるし、結構自信がある。
 だから魔術を活かしてヴォルフス様のお役に立ちたいと思い、魔術関係の項目を見てるんですけど……。

「ぜんっぜん内容が分かりません……」

 魔術関係なんちゃらかんちゃら顧問とか、魔術を使う系の職業って名前が難しいんですよね。しかも仕事内容も他の職業に比べて全然詳しく書いてませんし。
 何をしているのかが全く分からない。採用方法とかも書いてませんし。どうやって志願すればいいんでしょう。
 う~んと首を傾げると、本を覗いてきていた子竜達も一緒に首を傾げた。かわいいです。

 一旦本を閉じてふぅと息を吐く。結構集中してたので疲れました。結局、あんまりよくは分からなかったんですけど。

 これは、もう誰かにお話しを聞いた方が早いですね。ハルトさんとかいいかもしれない。詳しそうだし。
 今度会った時に聞いてみよう……。

「きゅ~?」

 寝転がったまま脱力すると、カノンに顔を覗き込まれた。その目は爛々としている。
 全く眠くなさそうですね。

「遊びますか?」
「きゅ~!!」

 カノンが元気よく返事をした。
 すると私の隣で寝転がっていたリューンとノヴァも続々と起き出す。みんな遊ぶ気満々ですね。
 私もガバッと起き上がる。

「よしっ! 遊びましょう!!」
「「「きゅ~!!」」」

 私がそう言うと、三頭は喜びの鳴き声を上げた。




***



 ぐったりとクッションベッドにもたれかかる私の頭をヴォルフス様がさらりと撫でた。

「お疲れだな」
「つかれました……。子竜の体力無尽蔵すぎます」

 どうして鬼ごっこなんて挑んじゃったんだろう。

「歩いて帰る体力は残ってるか? 俺が抱っこして帰ってもいいが」
「……お願いします」

 ヴォルフス様に向けて両手を突き出す。もうへとへとです。
 すると、ヴォルフス様がぱっと口元を押さえた。

「グゥッ! 素直なリアかわいい!!」
「ぐえっ」

 ぎゅうううと抱きしめられる。そして流れるように片腕に座らされた。

「よし、帰るか」
「はい!」

 落ちないようにヴォルフス様の首に腕を回す。まあ、ヴォルフス様が私を落とすとは思ってないですけどね。バランスの問題です。


 帰路につくと、すれ違う人すれ違う人がこちらを振り向いてくる。見られるのは前からですけど、なんか今までとは振り向く人の表情が違うんですよね。

「――どこが違うんでしょう」
「はは、みんなリアに見とれてるんだよ。一気に綺麗になったからな。かわいさは全く損なってないが」

 見とれてる……。
 あまりに縁のない言葉に私は口をポカンと開けた。

「自覚のないリアもかわいいなぁ」
「……」

 ヴォルフス様はもうかわいいが口癖なんじゃないでしょうか。


「――そういえばリア、その本はなんだ?」
「職業図鑑です。将来は魔術を活かせる仕事に就けたらなって」
「そうか」

 ヴォルフス様が微笑まし気に私を見る。……なんだかちょっといたたまれないです。

「でも、この本を見ただけじゃよく分からなくて。だから、今度ハルトさんにお話しを聞こうかと」
「……なぜだ?」
「? 本にはあまり詳しく書いてなくて……」
「そうじゃなくて、なんでハルトなんだ。俺に聞けばいいだろ」

 ちょっと拗ねたようにヴォルフス様が言う。
 ――か、かわいいです――!!!
 
 不意に胸がときめきました。ヴォルフス様達はいつもこんな気持ちなんでしょうか。

「え、えっと、じゃあヴォルフス様にお聞きしてもいいですか?」
「ああ、もちろんだ。リアがよければ見学に連れて行ってやろう。リアの実力ならどこも歓迎してくれるからな」
「見学! 行きたいです!」

 とてもありがたい申し出だ。
 職場の雰囲気とかは見てみないと分かりませんからね。

「でも、見学に行く前にお話しを聞かせてください」
「ああ、もちろんだ。これでも王だからな、なんでも答えてやるぞ」
「お願いします」

 これでもって……ヴォルフス様はれっきとした王様なのに。謙遜ですね。

 今日も夕飯は家で一緒に食べてくれるらしいから、その時に色々お話を聞かせてもらおう。














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