生贄令嬢は怠惰に生きる~小動物好き竜王陛下に日々愛でられてます~

雪野ゆきの

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二章

親の心子知らず

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 荷物を部屋に置いた後、リビングで家族とまったりする。

 随分と心配をかけたようで、子竜の私を膝に乗せたお父さんにはひたすら頭を撫でられた。お父さんが会いに来てくれたのは私が寝込んでいる真っ最中でしたからね。その後は文面での報告しか受けてないはずですし。
 お父さんに頬をスリスリされ、むぎゅ~っと抱きしめられる。

「うふふ、あなた、リアはお人形じゃないのよ?」
「分かってるさ。久々の愛娘を補給してるんだよ」
「親バカねぇ」
「きゅ~……」

 お母さんも人の事は言えないと思いますけど。似たもの夫婦ですね。
 私の胡乱な目にも気付かず、お母さんはほのぼのと微笑んでいる。久々の家族集合でお母さんも嬉しそうだ。

 エルゼリアも集まれれば尚いいんですけど、こちらに到着して早々にゼキさんに連行されていった。お仕事があるらしいです。
 相変わらず多忙ですね。その分お給料は多いらしいけれど、あまり使う暇もなさそうだ。

 一頻り頭をなでなでするとお父さんは満足したようだ。なでなでが止まり、赤ちゃんのようにくるんと丸まった状態で抱っこされる。尻尾もちゃんとくるんと丸まってて納まりがいいです。

「あらかわいい」
「本当にウチの子はかわいいね」

 両親に猫可愛がりされるこの感覚もどこか懐かしい。
 お父さんの腕の中が心地よくて、自然と甘えたような鳴き声が漏れる。

「きゅるるる~」

 そんな私を見てお母さんがさらに笑みを深めた。 

「あら、甘えてるわ」
「安心してるんだろうね。知らない土地で気を張ってただろうから疲れただろう。今日はゆっくりお休み」

 そうしてお父さんにゆらゆらとゆっくり揺らされると、体が重くなってきて、疲れと眠気が一気にやってきた。

「きゅ……」
「おやすみ、リア」

 意識が落ちる直前のお父さんの優しい声で、やっと帰ってきた実感が湧いた。



***



「―――きゅる?」

 気付いたら、竜用のベッドでお父さんと竜姿のお母さんに抱きこまれて寝ていた。ぬっくぬくです。
 二人はまだスース―と気持ちのよさそうな寝息を立てている。休みの日でもあまり昼寝しない二人だから珍しい姿です。
 心労を掛けちゃったのかな、と、ちょっとだけ申し訳なさを覚える。
 そんな二人のために私が今できることと言えば、大人しく抱き枕になってることだけ。正直、私の目はぱっちり覚めちゃいましたけど、今動いたら二人とも起きちゃいそうですし。
 だからお詫びとお礼の意味も込めてジッとしていることにします。


 暫く宙を見つめてボーっとしていると、二人が起き出した。

「……あれ? リア起きてるね。おはよう」
「クルルルルルル (おはようリア)」
「きゅ~ (おはようございます)」

 まだ昼ですけど。あ、もう夕方ですかね?
 眠気が抜けない様子の二人がのそのそと起き出す。

 あ、お父さんの後頭部に寝ぐせがついてます。髪の毛が重力に逆らうようにぴょこんとはねていてかわいい。
 お母さんもそれに気付いたのか、クルクルと笑っている。

「?」
「クルルル (なんでもないわ)」
 
 この後人に会う予定もないようなので、お母さんはお父さんの寝ぐせをそのままにしておくことにしたようだ。かわいいですもんね。

「クルルルルルル (あ、そうだリア、アルフに成長した人間の姿を見せてあげたらどう?)」
「ああ、それは見たいなあ」

 お母さんの提案にお父さんが同調する。

「きゅるるる~ (いいですよ~)」

 私はちゃちゃっと人間に変化する。
 私の姿を見てお父さんは目を輝かせた。

「わぁ! 随分美人さんになったねぇ。やっぱりリアはオリビア似だなぁ」
「似てますかね?」
「そっくりとまではいかないけど面影があるよ。二人ともとっても美人さんだし」

 自分では分からないけど成長してちょっとお母さんに似てきたようだ。素直に嬉しい。お母さんは娘の私から見ても絶世の美女ですし。
 ていうかお母さんよりも美人な人は見たことないかもしれないです。

 ―――う~ん、そう考えたら私がお母さんに似てるというのはお父さんの贔屓目なんじゃないかと思ってきました。親バカフィルターかかってますね。

「この姿で出歩いたらリアモテモテになっちゃうね。陛下はヤキモキするんだろうなぁ。俺もオリビアに寄って来る悪い虫を追い払うのに苦労したし」
「今まではただ愛でるって意味でモテモテだったけれど、こんな美人になったリアだと本気で恋しちゃう人も出てくるかもしれないわね。いくら陛下のご威光があるといっても、恋する気持ちってそんなことで抑えられるものではないし。でも、リアはぽやぽやしているから悪い虫に気付かなそうで心配だわ」

 私がお母さんのようにモテるわけがないんですけど、親バカフィルターにかかったら私もお母さんのような絶世の美人に見えるようだ。
 杞憂ってやつですね。

 二人とも過保護だなぁ、と笑っている私を、両親は何とも言えない顔で見詰めていた。











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