生贄令嬢は怠惰に生きる~小動物好き竜王陛下に日々愛でられてます~

雪野ゆきの

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二章

竜になれました!

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「きゅ!」

 体調がよくなった今、やってみたら問題なく子竜になることができた。そのことに心底ホッとする。
 これまで子竜になれない期間の方が長かったけど、やっぱりこっちも私の一部なんですよね。
 私が子竜に変化できなくなっていたことはみんな知ってたので、子竜になった瞬間揉みくちゃにされた。

「よかったわねぇ」
「きゅ! (はい!)」

 エルゼリアなんか半泣き状態で喜んでくれた。でも美人さんはそんな状態でも美人さんなんですね。ちっとも美貌が損なわれないのが不思議だ。
 ルフス様にもギュウウウウと苦しい程抱きしめられた。ご心配をおかけしました。

 子竜の方も大きくなっているかと思いきや、こちらには変わりなかった。そういえば、人間と竜の成長速度は違うからこちらは元々適正な大きさでしたね。
 うん、この姿だと素直に甘えられるので、こっちはもうちょっとこのままの大きさでいたいです。みんなに代わる代わる抱き締められながら、そんなことを思った。



「きゅきゅきゅっ!!」

 ルフス様に抱かれたまま久々に外に出ると竜達から大歓迎を受けた。竜達はルフス様ごと私を囲むとクンクンと匂いを嗅ぎベロンベロンとグルーミングを開始する。心配かけてたんですね。

「きゅるるるる(ごしんぱいおかけしました)」
「クルルル(本当に心配したのよ)」
「グルルルル(リアが無事でよかった)」

 竜のみんなにピッカピカになるまでグルーミングされると、漸く解放された。いかに心配をかけたかが伝わってきたので無抵抗でグルーミングを受け続けた私はちょっとぐったり。

「リア疲れただろう。もう戻ろうか?」
「きゅ! (いえ!)」

 ブルブルと首を横に振る。もうちょっとお散歩したいです。欲を言えば畑の様子を見たい。
 そんな私の意図を汲んでくれたのか、ルフス様は畑の方へ足を進めた。

「きゅ~ (あ~、もうしゅうかくはおわっちゃってますよね~)」

 野菜たちは既に収穫された後だった。
 収穫も少しは手伝いたかったのになぁ……。残念だけどこればっかりは仕方ないですね。とても外に出られる状況じゃなかったし。何なら今も人間の姿だと自分では歩けない。著しい筋力の低下と手足が急激に伸びたことで上手くバランスが取れないのだ。
 だから今は子竜の姿をとってるんですけど、ルフス様に抱っこされたまま自分では歩いてないのであんまり意味ないですね。こっちの方がルフス様の負担が小さいってだけだ。

「リアのおかげで大分早く出荷できたんだ。もちろん皆も頑張ってくれたが。おかげで大きな値段の変動もなく、我が国が食糧難に喘ぐこともなさそうだ」
「きゅ~(よかったです)」
「一つの地方だけで農業を担うのも問題だな。違う地方にも分散させねば……」

 為政者の顔になって何やら考え込むルフス様。かっこいいです。
 ―――私もいつか、ちゃんと竜王のルフス様の力になりたいな……。
 なんとなく、将来の指針が決まったような気がした。


「姫さま~!!」
「きゅ?」

 あ、マルクさんだ。他の人達もいる。

「姫様、もう大丈夫なのか?」
「きゅ! (はい! もうげんきです!)」
「元気そうだな、よかった」

 ホッと胸を撫でおろすマルクさん達。まだ会ってから日の浅いマルクさん達がこんなに心配してくれてたとは思わなかった。

「姫様に礼を言いたかったんだ。本当にありがとう」

 深々と頭を下げるマルクさん達。

「リア、どうかここは謙遜しないで礼を受け取ってやってくれ」

 ルフス様に優しく背中を撫でられる。
 あ、もしかしてマルクさん達は私が体調を崩しちゃったことに罪悪感を抱いてるんですかね。確かにきっかけは魔術の使いすぎですけど、それは別に不可抗力ですし。
 だから心配して駆けつけてくれのか。確かにこれでお礼を固辞するのはよくないですね。

「きゅ! (どういたしまして!)」

 元気よく鳴き返す。
 どうやら私の言ったことは伝わったようだ。マルクさん達がホッとしたような笑みを浮かべる。

「そうだ姫様、収穫は俺らでやっちまったけど、今日の夕飯はシーナが収穫した野菜を使って腕によりをかけて作りって言ってたぜ。味わって食べてくれよ」
「きゅ! (それはたのしみです!)」

 ここしばらくは消化がよくて味の薄いものしか食べてませんでしたからね。久々のまともなごはんです。

「嬉しそうだなリア」
「きゅ! (はい!)」

 鳴いて返事をすると、ルフス様が一層笑みを深めた。

「俺もリアが元気そうで嬉しい。早く人間の姿でも出歩けるようになるといいな」

 そうして優しく抱きしめられる。

「きゅる……」

 おお、なんか、ルフス様の様子がちょっといつもの感じと違って、なんか……照れちゃいます……。

「きゅっ」
「リア? ……フッ、かわいいな」
「きゅるるるる……」

 デレッとだらしない顔になってそうで、私はちっちゃな両手で一生懸命自分の顔を隠した。















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