上 下
51 / 117
二章

順調です!

しおりを挟む
 あれから一週間程が経ち、作業は順調に進んでいる。
 植えた種が芽吹き、今は葉が青々と茂っている状態だ。この分だともう少しで収穫できそうですね。

 きゅるるるるる~

 畑を歩いてると、私のお腹が元気に鳴き声を上げた。今日も今日とて私は腹ペコです。
 さり気なく周りと確認してお腹の音が聞かれてないことを確認する。うん、今回は誰もいないですね。
 お腹も空きましたし、そろそろ戻りましょうかね。
 踵を返し、軽食をもらいに向かう。
 ここ最近は魔術を使いすぎた影響か、かなり食べる量が増えた。そのおかげで胃袋も大分大きくなり、今では人間の同年代の女の子と同じくらいは食べられるようになった。かなりの進歩です。
 栄養状態がいいからか体調も頗るいいし、程よく疲れているから夜もぐっすりスヤスヤだ。

 シーナさんに駆け寄る。

「シーナさーん!」
「あら姫様お疲れ様です。軽食はもう用意してありますよ。お食べになりますか?」
「はい! いただきます!」

 そう言うと、シーナさんはすぐにサンドイッチを出してくれた。シーナさんのサンドイッチは具沢山でとってもおいしいから好きです。今度つくりかたを教えてもらおう。

 シーナさんが口の端に付いたパンくずを取ってくれる。

「うふふ、姫様にいっぱい食べていただけて嬉しいわ」
「私もシーナさんのごはんがいっぱい食べられるようになって嬉しいです」

 あ、胃が大きくなったのでお母さんのごはんもいっぱい食べられますね。社会勉強のためにアルバイトに来ましたけど、思わぬ副産物です。
 ただ、体調は万全ですけど、たまに体の節々が痛む時があるんですよね。筋肉痛とはまた違う感じの痛みだ。まあ、それほど激痛ではないし動けなくなるほど痛いというわけでもないので放置している。

「―――リア」
「あ、ルフス様」

 私がいたのとは別の方向からルフス様が歩いてきた。ルフス様は竜王陛下らしい綺麗な服を着ているので、畑を歩く時は服が汚れないかこちらがいつもヒヤヒヤする。でもルフス様は服が汚れることも厭わず、必要とあれば土の上に平然と膝をついたりする。かっこいいです。
 大きな手が私の頭を撫でた。

「今日もいっぱい食べられて偉いな」
「ありがとうございます。でもちょっと太らないか心配です。ここに来るまでの二倍くらいは食べちゃってますし」
「動く量も二倍だし、それくらい食べてやっと普通よりちょっと少ないくらいの量だからな?」

 まだまだ食べてほしそうなルフス様からそっと目を逸らす。

「―――あ、そういえば大分畑も完成してきましたね!」
「露骨に話を逸らしたな。まあいいが。あと一回ほどリアに成長促進の魔術をかけてもらえばなんとかなりそうだとのことだ。例年よりも少し遅れてはいるが、この分なら出荷先にも迷惑を掛けずに済むと皆が喜んでいたぞ」
「ほんとですか!? それはよかったです!」

 そっか、出荷が遅れたら野菜を買う人達にも迷惑がかかっちゃうんですよね。マルクさんはそれを心配してあんなにピリピリしてたのかもですね。

「収穫も皆で大急ぎでやると息巻いていたからな、取引先からも苦情はこないだろう」
「収穫も魔術でお手伝いしましょうか?」
「いや、それはしない方がいいな。説得力はないかもしれないがリアの力に頼り過ぎるのはよくない。彼らでできることは彼らに任せた方がいい。彼らも仕事でやってることだしな」
「そうですね。じゃあ、魔術なしで収穫を少しお手伝いするのはありですか? お野菜とか収穫するの楽しそうです」
「それはいいと思うぞ。じゃあ俺と一緒に邪魔にならない端っこで収穫を手伝わせてもらおう」
「はい!」

 とっても楽しみです。

 ただ、だとしたらここでのんびり軽食を楽しんでる場合じゃないかもしれない。幸い今日はまだ余力があるし、出荷が早いなら早い方がいいいですよね。魔術を使わないなら収穫にもそこそこ時間がかかるだろうし。

 よし! いっちょがんばりますか!

 
「? どうした?」

 急に立ち上がった私にルフス様が首を傾げる。だっこか? と両手を広げられるけど違いますよ?
 でも嫌じゃないのでだっこはまた後でお願いします。







しおりを挟む
感想 137

あなたにおすすめの小説

天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。 スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。 ※誤字報告、感想などありがとうございます! 書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました! 電子書籍も出ました。 文庫版が2024年7月5日に発売されました!

溺愛されたのは私の親友

hana
恋愛
結婚二年。 私と夫の仲は冷え切っていた。 頻発に外出する夫の後をつけてみると、そこには親友の姿があった。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。