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二章
心地よい疲労感に達成感、これが労働ですか!
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クロープ地方では五区が農作をしていて、次の日には他の三区を周り同じ作業を繰り返した。
一日で三区を周りきり、へとへとになった私をルフス様が甲斐甲斐しくお世話をしてくれる。昨日さすがにもうちょっと自立しなければと危機感を抱いたばかりだけど、疲労でそれどころではなかった。とりあえず自立をするのはこのアルバイトが終わってからにします。リアは先延ばしを覚えました。
もうちょっと自立は先延ばしにすることにしたとルフス様に伝えると、それはそれはいい笑顔を見せてくれた。
「それはいい心がけだ!!」
「……」
それ、普通は自立を決心した時に掛ける言葉じゃないですかね?
にしても、どうしてこんなに疲れるんでしょう。やっぱりこの前とは規模が段違いだからですかね? ただ、一日の仕事を終えると疲れるだけじゃなくて達成感がある。これは今までとは違うことだ。人国にいた頃も、ここに来たばかりでメイドさんの真似事をしていた時も達成感なんて感じたことはなかった。
労働の後に心がスッと明るくなるような、思わず高揚するような気分になるのは初めてだ。この疲労感もどこか心地いい。
「ハッ! これが本来の労働ですか!」
「何言ってるんだ?」
重大なことに気付いて思わず叫んでしまった私をルフス様がギョッとした目で見てきた。そして、「今日はもう寝ような~」とベッドに強制的に寝かされる。
別に疲労で頭がおかしくなったわけでも、初期の頃のように脅迫観念に駆られてるわけでもないんですけどね?
やけに優しい声で「ゆっくりお休み」と言われる。その眼差しもどこか生温かい。
「ルフス様、私、頭がおかしくなったわけじゃないですよ?」
「分かってる分かってる。ゆっくり寝るんだぞ」
絶対に分かってないルフス様は私の頭を一撫ですると、部屋を出て行った。
「……寝ますか」
聞き分けのいい私は、早々に寝ることにした。
その次の日には、また一区での作業だ。どうやら昨日のうちに種はまいておいてあるらしい。仕事が早いです。
滞在しているお屋敷のエントランスでそのことを聞いた私は、少しがっかりした。
「私も種まき手伝おうと思って、汚れてもいい服装で来たんですけど……」
「どうして今日はそんな格好してるのかと思えば、手作業で手伝う気だったのか?」
「……ちょっとくらいはできるかと思ってました……」
今日は、珍しくワンピースじゃなくてズボンを履いている。ズボンというか、オーバーオールだ。別段いい生地のものというわけでもなく、本当に作業をする時の格好です。
前に畑を作った時、種まきはすぐに飽きちゃったけど土いじり自体は楽しかったので、今回もできるかもと期待したんですけど……。
しょんぼりです。
あ、でもいけませんね、今回は遊びじゃなくてお仕事ですから。気を取り直してがんばらなければ。
「今度またリアの家の庭で何か作ろうな」
「! はい! 楽しみにしてますね!」
「ああ」
ルフス様が微笑む。
「にしても、今日のリアは格好が違うからか、なんだか新鮮だな……サイズ間違えたか?」
「間違えてないです。既製品だと、この国では私のサイズがなくて……」
あまりにダボダボだからルフス様も気になっちゃったんだろう。
子ども用ならサイズはあるんですけど、さすがにこの年齢で着るデザインじゃないんですよね。ダボダボでも袖と裾を捲ればなんとか形になるので、まあいっかと思って着ている。
少し落ちてきてしまった袖を捲り直す私をルフス様がまじまじと見る。
「……うん、この格好のリアもかわいいな」
「えへへ、ありがとうございます」
「……二人とも~そろそろ行くよ~」
「あ、はい! すみません!」
「分かった」
少し呆れた様子のハルトさんに呼ばれ、私達は屋敷を出た。
今日もがんばっちゃいますよ!
今日は私の負担を鑑みて、魔術で葉を茂らせるところまで種を育てることになった。
一ブロックずつ魔術を使う。すると、にょきにょきと茎が伸び、葉っぱが青々と茂る。
「―――姫様」
「あ、マルクさんこんにちは」
「ああ」
私に声を掛けてきたマルクさんの後ろにはこの前も見た数人の男性が立っていた。
「姫様、種まき楽しみにしてたんだってな。それ知ってたら少しは残しておいたんだが……悪かったな」
「え!? いえいえ、マルクさんが謝ることじゃないですよ!! ちょっと出来たらいいな~くらいに思ってただけなので!」
「そうか」
「はい! というか、まさか一日で種まきが終わっているとは思わなかったです。みなさんお疲れ様でした」
そう、予想以上にマルクさん達の作業が早かったのだ。一日だと絶対終わらないだろうから残っている分を少しお手伝いできたらな~くらいに思ってたのに。
「さすがプロのみなさんですね!」
「「「ぐぅっ!!!」」」
「?」
なぜかマルクさん達が示し合わせたようなタイミングで胸を押さえた。そしてボソボソと何か呟き出す。あえて私には聞こえないように話しているのか、内容は分からない。
「かわいい、かわいすぎる」
「なんでこんなちっこくてかわいいのに性格までいいんだ」
「こんなに外見がかわいいなら性格が悪いくらいじゃねーとバランスが取れねぇよな。こりゃ陛下も溺愛するわけだ」
うんうん、と円になるように頭を寄せ合って何かを納得しているみなさん。
仲いいですね。
一日で三区を周りきり、へとへとになった私をルフス様が甲斐甲斐しくお世話をしてくれる。昨日さすがにもうちょっと自立しなければと危機感を抱いたばかりだけど、疲労でそれどころではなかった。とりあえず自立をするのはこのアルバイトが終わってからにします。リアは先延ばしを覚えました。
もうちょっと自立は先延ばしにすることにしたとルフス様に伝えると、それはそれはいい笑顔を見せてくれた。
「それはいい心がけだ!!」
「……」
それ、普通は自立を決心した時に掛ける言葉じゃないですかね?
にしても、どうしてこんなに疲れるんでしょう。やっぱりこの前とは規模が段違いだからですかね? ただ、一日の仕事を終えると疲れるだけじゃなくて達成感がある。これは今までとは違うことだ。人国にいた頃も、ここに来たばかりでメイドさんの真似事をしていた時も達成感なんて感じたことはなかった。
労働の後に心がスッと明るくなるような、思わず高揚するような気分になるのは初めてだ。この疲労感もどこか心地いい。
「ハッ! これが本来の労働ですか!」
「何言ってるんだ?」
重大なことに気付いて思わず叫んでしまった私をルフス様がギョッとした目で見てきた。そして、「今日はもう寝ような~」とベッドに強制的に寝かされる。
別に疲労で頭がおかしくなったわけでも、初期の頃のように脅迫観念に駆られてるわけでもないんですけどね?
やけに優しい声で「ゆっくりお休み」と言われる。その眼差しもどこか生温かい。
「ルフス様、私、頭がおかしくなったわけじゃないですよ?」
「分かってる分かってる。ゆっくり寝るんだぞ」
絶対に分かってないルフス様は私の頭を一撫ですると、部屋を出て行った。
「……寝ますか」
聞き分けのいい私は、早々に寝ることにした。
その次の日には、また一区での作業だ。どうやら昨日のうちに種はまいておいてあるらしい。仕事が早いです。
滞在しているお屋敷のエントランスでそのことを聞いた私は、少しがっかりした。
「私も種まき手伝おうと思って、汚れてもいい服装で来たんですけど……」
「どうして今日はそんな格好してるのかと思えば、手作業で手伝う気だったのか?」
「……ちょっとくらいはできるかと思ってました……」
今日は、珍しくワンピースじゃなくてズボンを履いている。ズボンというか、オーバーオールだ。別段いい生地のものというわけでもなく、本当に作業をする時の格好です。
前に畑を作った時、種まきはすぐに飽きちゃったけど土いじり自体は楽しかったので、今回もできるかもと期待したんですけど……。
しょんぼりです。
あ、でもいけませんね、今回は遊びじゃなくてお仕事ですから。気を取り直してがんばらなければ。
「今度またリアの家の庭で何か作ろうな」
「! はい! 楽しみにしてますね!」
「ああ」
ルフス様が微笑む。
「にしても、今日のリアは格好が違うからか、なんだか新鮮だな……サイズ間違えたか?」
「間違えてないです。既製品だと、この国では私のサイズがなくて……」
あまりにダボダボだからルフス様も気になっちゃったんだろう。
子ども用ならサイズはあるんですけど、さすがにこの年齢で着るデザインじゃないんですよね。ダボダボでも袖と裾を捲ればなんとか形になるので、まあいっかと思って着ている。
少し落ちてきてしまった袖を捲り直す私をルフス様がまじまじと見る。
「……うん、この格好のリアもかわいいな」
「えへへ、ありがとうございます」
「……二人とも~そろそろ行くよ~」
「あ、はい! すみません!」
「分かった」
少し呆れた様子のハルトさんに呼ばれ、私達は屋敷を出た。
今日もがんばっちゃいますよ!
今日は私の負担を鑑みて、魔術で葉を茂らせるところまで種を育てることになった。
一ブロックずつ魔術を使う。すると、にょきにょきと茎が伸び、葉っぱが青々と茂る。
「―――姫様」
「あ、マルクさんこんにちは」
「ああ」
私に声を掛けてきたマルクさんの後ろにはこの前も見た数人の男性が立っていた。
「姫様、種まき楽しみにしてたんだってな。それ知ってたら少しは残しておいたんだが……悪かったな」
「え!? いえいえ、マルクさんが謝ることじゃないですよ!! ちょっと出来たらいいな~くらいに思ってただけなので!」
「そうか」
「はい! というか、まさか一日で種まきが終わっているとは思わなかったです。みなさんお疲れ様でした」
そう、予想以上にマルクさん達の作業が早かったのだ。一日だと絶対終わらないだろうから残っている分を少しお手伝いできたらな~くらいに思ってたのに。
「さすがプロのみなさんですね!」
「「「ぐぅっ!!!」」」
「?」
なぜかマルクさん達が示し合わせたようなタイミングで胸を押さえた。そしてボソボソと何か呟き出す。あえて私には聞こえないように話しているのか、内容は分からない。
「かわいい、かわいすぎる」
「なんでこんなちっこくてかわいいのに性格までいいんだ」
「こんなに外見がかわいいなら性格が悪いくらいじゃねーとバランスが取れねぇよな。こりゃ陛下も溺愛するわけだ」
うんうん、と円になるように頭を寄せ合って何かを納得しているみなさん。
仲いいですね。
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