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二章
いってきます!
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ちょうど食事を終えた頃、お父さんとお母さんが二階から下りてきた。
「お母さん……!?」
急にお母さんが走って来て、私をガバッと抱き締めた。そのままギュウウウと腕に力を込められる。
「リア、あなたはいつの間にか大きく……はなってないわね」
「はい」
私の身長は未だ小さいままだ。
「でも、あなたはいつの間にか成長してたわ。少しずつ、大人に近付いているのね」
お母さんは私の頭に顔を埋めた。
「……」
「親である私がリアをの成長を妨げることはできないわ。だから、行ってきなさい」
「……お母さん」
私からもギュッとお母さんを抱きしめる。きっと、竜の本能では今の私を遠くにやることはあり得ないんだろう。お母さんは本能に逆らって苦しみつつも、私の背中を押そうとしてくれている。その気持ちに応えたいと思った。
「分かりました。行ってきますお母さん」
「ええ、でも体調が悪くなったりしたらすぐに帰って来るのよ。それだけはお母さんと約束してね」
「はい、約束します」
もう一度お母さんときつく抱きしめ合う。
「―――グスッ」
ん?
振り返ると、そこには涙を堪えるように顔を覆っているけど、全然涙が堪えられてないお父さんがいた。
「ううっ、お父さんは感動しちゃったよ」
「……アルフさん?」
ああ、お父さん、感極まって本性が出ちゃってます。
いつもと様子の違うお父さんにルフス様がギョッとした目を向けている。明らかにいつもと違いますもんね。
ルフス様の視線にも気付かず、お父さんは私とお母さんを纏めて抱きしめた。
「お父さんもリアの成長を応援してるよ」
「お父さん……ありがとうございます」
両親の思いにほっこりしたところで、若干居心地悪そうにしてるルフス様とハルトさんの二人に向き直る。
「お二人とも、ご心配おかけしてすみません。無事にアルバイトをさせていただくことで話が纏まりました」
「そ、そうか、よかった」
目の前でホームドラマを見せられたらそりゃ居心地悪くなりますよね。
「まあクロープ地方には俺もついて行くから、リアの体調管理は任せてほしい」
「「「え?」」」
ルフス様の発言に私達親子の目が点になる。
「ルフス様も一緒に行くんですか?」
「もちろんだ」
も、もちろん?
竜王様が私のバイトなんかについてきていいんですかね? 当然ついて行くぞみたいな顔してますけど。
「視察って名目で行くから大丈夫だ。実際そろそろ視察に行く時期だし」
「姫様と離れちゃうから行きたくないって駄々こねてたから丁度よかったね陛下」
「断じて駄々はこねてないが、確かにタイミングは丁度良かったな」
ルフス様が嫌そうにハルトさんに同意する。
「あ、ちなみに俺も一緒にいくよ~」
「ハルトさんも一緒でしたか」
お二人が一緒なのは心強いです。
やっぱりちょっと不安だった私の心が一気に上向きになった。両親も二人が一緒だと知って露骨に安堵している。
「陛下が一緒だと知ってたらあんなに悩まなかったのに。二人とも意地が悪いわ」
お母さんが頬に手を当ててムッとしてる。一児の母なのにかわいいです。まあ外見は二十代前半から変わってませんからね。
「ごめんオリビアさん。言うのを忘れてたよ」
飄々と謝るハルトさんは本当に忘れてたのか、あえて言わなかったのか読めない。
「まあいいわ。二人が一緒なら安心だものね」
そう言ってお母さんは微笑んだ。
「じゃあ出発は明後日でもいい?」
「ええ」
「私も大丈夫です」
明後日出発することになったので、荷造りは明日お母さんと一緒にすることになった。鞄はここに来る時に使ったのを引っ張り出してくればいっか。まだ一回しか使ったことなかったし。
そういえば、私旅行っぽいこと初めてかもしれません。いや、決して遊びじゃないですけど、泊りがけのお出かけって初めてなのでちょっとワクワクします。
トランプとか、持っていったら誰か教えてくれますかね? ……いや、やっぱりお仕事なのにこんな浮かれた気持ちじゃダメですね。トランプを買うのは止めよう。
ハッ!
一人であたふたと色んなことを考えてると、いつの間にか生温かい四対の瞳がこちらに向けられていた。なんでみんなこんなに生温かい目をしてるんでしょう……?
「みなさんどうしたんですか?」
「なんでもないわ。私の娘がかわいいと思ってただけよ。ねえアルフ?」
「うん。リアは本当に愛くるしいね」
お父さんはルフス様とハルトさんの前なのに、いつの間にか演技を止めていた。さっきうっかり被った猫がどっかにいっちゃったからですかね?
「―――あ、そういえばクロープ地方までどのくらいかかるんですか? 私、到着するまで体力もつでしょうか……」
「ん? リア、体力がもつとは?」
ルフス様が珍しい表情をしてます。具体的には微笑みつつも困惑してる。
「? 飛んでいくんですよね? あんまり遠いと飛んでる途中に疲れちゃいそうだなと思いまして」
「リア、まさか自分で飛んでいくつもりだったの!?」
お母さんが驚愕してる。
「はい! 私も一応竜なので!」
半分だけだけど。
「子竜に長距離飛行は無理よ。リューン達も基本的に母竜の背中に乗ったり口に咥えられたりしてるでしょう?」
「あ、たしかに」
「でしょう? だからリアは大人しく成竜に乗せてもらいなさい……いえ、送り迎えは私がするわ」
私が余計なことを言っちゃったみたいで、クロープ地方まではお母さんが乗せていってくれることになった。
私の肩を抱いたお母さんがルフス様とハルトさんの方に向き直る。
「お二人とも、どうかこの子をよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
お母さんとお父さんが同時に頭を下げたのにつられて私も頭を下げる。どうか私のことをよろしくお願いします。
「ああ、こちらとしても意識を改めて監督しよう」
「そうだね」
二人は大真面目な顔でそう言った。
……私、そんなに問題児じゃないですよ……?
「お母さん……!?」
急にお母さんが走って来て、私をガバッと抱き締めた。そのままギュウウウと腕に力を込められる。
「リア、あなたはいつの間にか大きく……はなってないわね」
「はい」
私の身長は未だ小さいままだ。
「でも、あなたはいつの間にか成長してたわ。少しずつ、大人に近付いているのね」
お母さんは私の頭に顔を埋めた。
「……」
「親である私がリアをの成長を妨げることはできないわ。だから、行ってきなさい」
「……お母さん」
私からもギュッとお母さんを抱きしめる。きっと、竜の本能では今の私を遠くにやることはあり得ないんだろう。お母さんは本能に逆らって苦しみつつも、私の背中を押そうとしてくれている。その気持ちに応えたいと思った。
「分かりました。行ってきますお母さん」
「ええ、でも体調が悪くなったりしたらすぐに帰って来るのよ。それだけはお母さんと約束してね」
「はい、約束します」
もう一度お母さんときつく抱きしめ合う。
「―――グスッ」
ん?
振り返ると、そこには涙を堪えるように顔を覆っているけど、全然涙が堪えられてないお父さんがいた。
「ううっ、お父さんは感動しちゃったよ」
「……アルフさん?」
ああ、お父さん、感極まって本性が出ちゃってます。
いつもと様子の違うお父さんにルフス様がギョッとした目を向けている。明らかにいつもと違いますもんね。
ルフス様の視線にも気付かず、お父さんは私とお母さんを纏めて抱きしめた。
「お父さんもリアの成長を応援してるよ」
「お父さん……ありがとうございます」
両親の思いにほっこりしたところで、若干居心地悪そうにしてるルフス様とハルトさんの二人に向き直る。
「お二人とも、ご心配おかけしてすみません。無事にアルバイトをさせていただくことで話が纏まりました」
「そ、そうか、よかった」
目の前でホームドラマを見せられたらそりゃ居心地悪くなりますよね。
「まあクロープ地方には俺もついて行くから、リアの体調管理は任せてほしい」
「「「え?」」」
ルフス様の発言に私達親子の目が点になる。
「ルフス様も一緒に行くんですか?」
「もちろんだ」
も、もちろん?
竜王様が私のバイトなんかについてきていいんですかね? 当然ついて行くぞみたいな顔してますけど。
「視察って名目で行くから大丈夫だ。実際そろそろ視察に行く時期だし」
「姫様と離れちゃうから行きたくないって駄々こねてたから丁度よかったね陛下」
「断じて駄々はこねてないが、確かにタイミングは丁度良かったな」
ルフス様が嫌そうにハルトさんに同意する。
「あ、ちなみに俺も一緒にいくよ~」
「ハルトさんも一緒でしたか」
お二人が一緒なのは心強いです。
やっぱりちょっと不安だった私の心が一気に上向きになった。両親も二人が一緒だと知って露骨に安堵している。
「陛下が一緒だと知ってたらあんなに悩まなかったのに。二人とも意地が悪いわ」
お母さんが頬に手を当ててムッとしてる。一児の母なのにかわいいです。まあ外見は二十代前半から変わってませんからね。
「ごめんオリビアさん。言うのを忘れてたよ」
飄々と謝るハルトさんは本当に忘れてたのか、あえて言わなかったのか読めない。
「まあいいわ。二人が一緒なら安心だものね」
そう言ってお母さんは微笑んだ。
「じゃあ出発は明後日でもいい?」
「ええ」
「私も大丈夫です」
明後日出発することになったので、荷造りは明日お母さんと一緒にすることになった。鞄はここに来る時に使ったのを引っ張り出してくればいっか。まだ一回しか使ったことなかったし。
そういえば、私旅行っぽいこと初めてかもしれません。いや、決して遊びじゃないですけど、泊りがけのお出かけって初めてなのでちょっとワクワクします。
トランプとか、持っていったら誰か教えてくれますかね? ……いや、やっぱりお仕事なのにこんな浮かれた気持ちじゃダメですね。トランプを買うのは止めよう。
ハッ!
一人であたふたと色んなことを考えてると、いつの間にか生温かい四対の瞳がこちらに向けられていた。なんでみんなこんなに生温かい目をしてるんでしょう……?
「みなさんどうしたんですか?」
「なんでもないわ。私の娘がかわいいと思ってただけよ。ねえアルフ?」
「うん。リアは本当に愛くるしいね」
お父さんはルフス様とハルトさんの前なのに、いつの間にか演技を止めていた。さっきうっかり被った猫がどっかにいっちゃったからですかね?
「―――あ、そういえばクロープ地方までどのくらいかかるんですか? 私、到着するまで体力もつでしょうか……」
「ん? リア、体力がもつとは?」
ルフス様が珍しい表情をしてます。具体的には微笑みつつも困惑してる。
「? 飛んでいくんですよね? あんまり遠いと飛んでる途中に疲れちゃいそうだなと思いまして」
「リア、まさか自分で飛んでいくつもりだったの!?」
お母さんが驚愕してる。
「はい! 私も一応竜なので!」
半分だけだけど。
「子竜に長距離飛行は無理よ。リューン達も基本的に母竜の背中に乗ったり口に咥えられたりしてるでしょう?」
「あ、たしかに」
「でしょう? だからリアは大人しく成竜に乗せてもらいなさい……いえ、送り迎えは私がするわ」
私が余計なことを言っちゃったみたいで、クロープ地方まではお母さんが乗せていってくれることになった。
私の肩を抱いたお母さんがルフス様とハルトさんの方に向き直る。
「お二人とも、どうかこの子をよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
お母さんとお父さんが同時に頭を下げたのにつられて私も頭を下げる。どうか私のことをよろしくお願いします。
「ああ、こちらとしても意識を改めて監督しよう」
「そうだね」
二人は大真面目な顔でそう言った。
……私、そんなに問題児じゃないですよ……?
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