生贄令嬢は怠惰に生きる~小動物好き竜王陛下に日々愛でられてます~

雪野ゆきの

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二章

一先ず住む場所が決まりました

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「家ができるまでは城に住むといい」

 子竜姿になった膝上の私を撫でながらルフス様はそう言った。
 私達の家はなんと、既にあるものをくれるのではなく新しく建ててくれるそうなので、家ができるまではお城に住んでもいいとルフス様は言ってくれたのだ。
 ルフス様の言葉にお母さんがパァッと明るい顔になる。

「あら、いいんですか?」
「もちろんだ。俺としてはむしろ家を作らないでずっと城に住んでほしいくらいだからな」
「きゅ~」
「うんうん、リアは鳴き声までかわいいな~」

 蕩けるような笑みを浮かべたルフス様は私の小さな手をにぎにぎしてきた。……嫌ではないですけど、一体なにがしたいんでしょう。

「おててが小さくてかわいい」

 ルフス様はどうやら癒されているようです。あ、そういえばルフス様は小動物が好きでしたね。確か子竜もお好きだったはずです。
 なるほど、どうりで挙動が少しおかしかったわけですね。

「じゃあお言葉に甘えて暫くお城でお世話になりましょうか」

 お母さんがお父さんにそう言うと、お父さんはコクリと頷いた。

「そうだな。よろしく頼む」
「了解した」

 お父さんがルフス様に頭を下げ、ルフス様が了解の意を示すように頷く。どうやら話は纏まったようです。

「きゅ~?(今私が借りてる部屋をお父さんとお母さんと一緒に使ってもいいですか?)」
「ん? リアはなんて言っているんだ?」

 あ、そっか、竜姿で発した言葉はお母さん意外には通じないんでした。
 お母さんが私の言葉を通訳してくれる。

「今リアがお借りしている部屋を私達と一緒に使ってもいいかと言っているわ」
「それはもちろん構わないが、またご両親には別に部屋を用意することもできるぞ」
「ありがたいがそれは遠慮しておく」

 ルフス様の申し出をお父さんが断った。

「なぜだ?」
「……」

 ルフス様の質問に、お父さんが話してもいいか? というように無言でお母さんの方を見た。お母さんはお父さんにコクリと頷いて見せる。

「本来、竜は子どもが出来たら数年は付きっ切りで過ごすものだ。だが陛下も知っての通り、俺達は封印されていてリアと共にいることができなかった。だからオリビアは今精神的に少し不安定になっていてな、リアが視界内にいないとオリビアが落ち着かないんだ」

 そうなんです。お母さんは私を一人っきりにした罪悪感や、私の成長が遅いことで過保護になっているのだ。だから再会してからは常に一緒にいるし、基本的には子竜の姿でお母さんに抱っこされている。今はお母さんの視界内に入っているからルフス様のお膝で抱っこされてますけど。
 
「そうだったのか。じゃあリアの部屋でいいな。あと、希望があれば竜舎の方にも寝床を用意しようと思っていたんだが、この分だと不要か?」
「いや、それは用意してくれると助かる。リアはともかく、オリビアは竜の方が本来の姿だからな」
「あ、そうか」
「きゅ……(たしかに……)」

 忘れてましたけど、そういえばお母さんは私と違って混じりけのない竜なんでした。私は人間の姿も竜の姿も本体ですが、お母さんは人間の姿でいるのはやっぱり少し違和感があるのかもしれません。どちらにせよ、本来の姿の方が居心地がいいのは間違いないと思います。

「確かに竜の姿に戻れる場所は必要だな。では用意させよう」
「感謝する」
「ありがとうございます陛下」
「きゅ! (ありがとうございますルフス様!)」

 私達が口々に感謝の言葉を発すると、ルフス様は微笑んだ。ルフス様の笑顔を見ると心がぽかぽかして、自然に尻尾がゆらゆらと揺れる。

「どうした?」
「きゅっ」

 私は頭を撫でてくれるルフス様の手に頭をぐりぐりと擦り付けた。これは照れ隠しです。

「――――ぐぅ! かわいい!!!」
「きゅ?」

 ルフス様が急に顔を覆って仰け反りました。
 なにがルフス様のツボに刺さったんでしょう……?
 私が頭をコテンと傾げると、ルフス様は再び「グッ……!」と唸るような声を上げました。







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