上 下
19 / 117
二章

三人での暮らし

しおりを挟む




 一連の問題が片付き、人国から竜王国に帰ってきてすぐ、私達家族は三人でこの国に住むことにした。だけど、いざ住もうとなると一つ問題が生じる。
 子竜姿の私を抱き上げたお母さんが眉尻を下げた。

「でも、どうしようかしら。私達誰もお金を持ってないわ」

 そう、私達は誰もお金を持っていなかったのだ。私は無一文でこの国に来たし、両親の財産も叔父によって大分食い尽くされていた。
 きゅ~、と情けない鳴き声を上げる私を抱っこしたお母さんが頬に手を当てて言う。

「あとは私が独身時代に住んでいた洞窟しかないわね。私とリアは竜の姿をとれるから比較的快適に過ごせるけど……」
「俺は洞窟でも全然大丈夫だ。家族と暮らせるだけで嬉しいからな」

 そう言ってお父さんは私とお母さんを抱きしめた。

「ちょーっと待ったああああああああああ!!!」
「「「?」」」

 早速荷物を纏めようかという雰囲気になった所で、ハルトさんが乱入してきた。

「あらハルトさんどうしたの?」
「ナチュラルに出ていこうとしないでよ!家なんていくらでも建てるから側にいて!!」

 あまりにも必死なハルトさんに私達一家は疑問符を浮かべざるを得ない。
 
「なにもこれでお別れじゃなくて、またお礼も兼ねて会いに来るわよ? ……あ! もしかしてハルト君はリアが好きだから側にいてほしいのかしら。でもリアには陛下がいるし……」
「いや! 冗談でもそんな陛下に殺されるようなこと言わないで!!むしろ僕が興味あるのはオリビアさんの方だから!!」
「は?オリビアは俺の妻なんだが」

 お父さんの背後にズモモモモというオーラが見えます。お父さんはお母さんを溺愛してますからね。
 お父さんに睨まれたハルトさんは一瞬ビクンとした後、慌てて弁明をし出した。

「いやいやいや、興味てそういう意味じゃないから!研究対象って意味の興味だから!」
「俺の妻を研究対象だと?」
「う~っ! そうだけどそうじゃないよ!」

 ハルトさん墓穴しか掘りませんね。誤解を生む表現しかしてませんよ。

「きゅきゅきゅっ(ハルトさんおちついてください)」
「姫様……言葉は分からないけど多分優しい言葉をかけてくれてるのは分かるよ」
「きゅ!」

 伝わってなによりです!

「ええと、研究と言っても聖竜であるオリビアさんや姫様の観察とか、インタビューをさせてほしいだけなんだよ。もちろんプライベートとかには干渉しないし、非人道的なこともしないから。その代わりに家はこっちで建てさせてもらうし、協力してもらった分だけお礼金として対価を払わせてもらうから!!」
「……」

 私達家族は顔を見合わせた。
 最初に口を開いたのはお父さんだ。

「まあくれるって言うんならもらっとくか」
「そうねぇ。お城に近い方がエルゼリアちゃんにも会いやすいでしょうし。リアはどう思う?」
「きゅ! (賛成です!)」

 家をぽんっともらうのはやっぱりちょっと気が引けますが、頑張って研究に協力することで恩返ししようと思います。 それに、ルフス様やエルゼリアが気軽に遊びに来れる場所に住めた方が嬉しいですしね。

 こうして、私達家族はマイハウスを手に入れた。








しおりを挟む
感想 137

あなたにおすすめの小説

溺愛されたのは私の親友

hana
恋愛
結婚二年。 私と夫の仲は冷え切っていた。 頻発に外出する夫の後をつけてみると、そこには親友の姿があった。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。 スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。 ※誤字報告、感想などありがとうございます! 書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました! 電子書籍も出ました。 文庫版が2024年7月5日に発売されました!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… 6月8日、HOTランキング1位にランクインしました。たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。