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2章 婚約と新たな火種

王城内での戦闘

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「あぁん?」

 ピコラフは自分の振り上げてた腕が消えていることに気がついた。

 やばいと思ったピコラフはカナリア王妃を投げ捨て魔法が飛んできた方向とは真逆の方に飛んだ。

「カナリア王妃様! マリア王女様! ご無事ですか!」

「ガジル!」

 ガジルと呼ばれる人物はすぐに魔族からカナリア王妃とマリア王女を守るように前に出た。

「てめぇ……何者だ……!」

 ピコラフは自分の腕を消し飛ばしたやつを警戒していた。

「近衛騎士団団長ガジルだ。貴様がカナリア王妃様とマリア王女様にしたこと決して許されることではない。」

「へぇーまさかの団長様ですかーこれは大物を引いたかな」

 ピコラフは本来のアーマンの居場所を聞き出すという目的を既に忘れており、自分の腕を消し飛ばしたガジルを殺すことのみ考えていた。

「ちっ……再生も出来ないのか。ほんとにこの結界は厄介だな!」

「魔族が入ってくるとは思わなかったが、かなり弱体化してるらしいな。」

「ハンデに丁度いいじゃねーか。人間ごとき片手でぶっ殺してやる」

 ガジルは剣を抜き、ピコラフは残っている方の手の爪を伸ばし戦闘態勢に入った……

 お互いに火花を散らし合うくらいに睨み合っていた。

 先に動いたのはピコラフだった。

 ガジルの方に一直線に突っ込んでいった。

 弱体化しているとはいえ、その早さは弾速のように早く並の人間なら一瞬で串刺しになっている。

 ガジルはそれを見切って受け流した。

「まだまだぁ!」

 ピコラフは手を止める暇を与えないために連続で攻撃をした。

 カーン! キーン! ガーン!

 鉄と鉄が思いっきりぶつかっているような音が鳴り響いた。

「へぇ中々やるじゃん。ならこれならどうだ」

 そう言うとピコラフは追撃のできないところまで下がり魔術の呪文を発動した。

幻影ヴィジョン

 さっきまで一人しかいなかったピコラフが何故か3人に増えていた。

「闇魔術か……」

「「「俺たちは全員が本物であると同時に偽物」」」

 そう言うとピコラフ達?はガジルに向かって突っ込んできた。

 一人は通路、一人は左の壁を、一人は右の壁を走りながら……

 カン! カン! カン! キン! カン! キン! キン! ガン!

「「「どうした! さっきより反応遅いんじゃねーのかー。アハハハハハハハ」」」

「貴様こそ分裂したせいか力が弱いだろ! はぁ!」

 そこからさらに戦闘は激しくなった。

 3人は意思疎通が出来ているためか、コンビネーションがよく一人がトドメを刺されようとすると妨害してくる。

 それに対してガジルは後にいるカナリア王妃とマリア王女を守るためにそこから動けずにいるため、少しずつ押されていった。

(このままだと不味い……私が倒れれば後ろの御二方も死ぬ事になる。それだけはやらせてはならぬ。どうするべきか)

 だが、ピコラフの方も焦っていた。

 本来ならば王都を囲っている結界を壊せば体に問題はないと聴いていたはずなのに異常しかないのだから。

(なんでだ! ニコラスが言ってることと違うぞ!)

 魔族は知らなかったが、王都には魔族用に2重で結界が張ってあって、一枚目は物理的に防ぐため。

 二枚目は万が一入ってきた時に弱体化されるようにと結界が張ってある。

 ニコラスも例に埋もれずそのことを知らなかったが、アーマンを暗殺するためだけに捨て駒にされたのかと、ピコラフは思い始めた。

 不安は徐々に募っていきそれは戦闘にも影響し、切り傷が増えてきた。

「いい加減諦めたらどうだ! さっきより手応えがないぞ!」

「うるせぇ!」

 ピコラフは一旦冷静になるために後に下がったが、今度はガジルの方が追撃してきた。

 追撃してくると思わなかったピコラフ達は一瞬反応が遅れそれが致命傷となった。

 1人のピコラフが横に切断された。

 ニコラスに対する疑心が生まれ、1人のピコラフもやられた今これ以上戦うと死ぬと思ったピコラフは決断をした。

 残った二人のピコラフは魔術を解き一人に戻ると、ガジルをにらめつけながら何も言わずに逃げていった。

「なっ!」

 追いかけようとしたが、カナリア王妃様とマリア王女様を置いていけないため諦めることになった。

 結局アーマン暗殺は失敗し、ただ、王都の門の前で時間稼ぎをした魔族たちが死ぬだけだった。

 アルバーン国王陛下を始めとした貴族会議では、今回の襲撃は、創造神の加護を持ったアーマン暗殺を企てた魔族たちが攻撃してきたという結論になった。



 ###

「ニコラス! てめぇ、俺に何か言ってない情報を持ってんじゃねーのか!」

「何のことだ……それより創造神の加護を持った奴の暗殺はどうなった」

「話変えるんじゃねーよ。てめぇ、結界は壊せば問題ないって言ってたよなぁ? それでどうして俺が人間に負けることになるんだよ」

「あなたよりその人間が強かったってだけでしょ。何ニコラスのせいにしてるのよ。」

「切られた腕が再生出来なかったんだぞ! どう見ても小細工がしてあるに決まってる」

「それは初めて知った。なるほど、弱体化させられるような結界もあるのか」

「なにが「なるほど」だ! もうてめぇに付き合うのはうんざりだ! 俺は俺のやり方でやらせてもらう」

 そう言うとピコラフは、自分についてくる奴らをまとめて出ていった……

「いいの? あんなに自由にさせて。殺しちゃえばよかったのに」

「ほっとけ。どうせそのうち戻ってくる。それに邪魔になったらその時殺せばいい」

「そうね」

 結局王都に襲撃したのは無駄になり、ただ、魔族が死に仲間割れが起こっただけという何ともしょうもない結果になった。










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