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御子柴からユイへの想い。
御子柴からユイへの想い⑮
しおりを挟む数分前 都内某所
時は少しだけ遡る。 結人が真宮と話をしていた時のことだ。 その間、事は既に前へと進んでいた。 先に目的である場所へ着いたのは――――未来と悠斗だ。
「あっれー? おかしいなぁ。 ユイから噂を聞いてここへ来たけど・・・。 誰もいねぇじゃん」
目的地を前にしてつまらなさそうにする未来。 辺りを見渡しながら悠斗も続けて言葉を放つ。
「ユイが嘘を言うはずはないんだけどね」
だがこのまま簡単に引き下がるのも気が引けるため、ここで何か事態が起きないかと期待を少し持ち合わせながら、数分の間待ってみることにした。
すると突然――――ある一人の少年が、二人の前に姿を現す。 その彼の登場にいち早く気付いた悠斗は、未来の制服の袖を引っ張った。
「ッ、未来! あれ日向じゃない?」
未来たちは目立たないところで身を潜め隠れていたため、少年には気付かれていないようだ。 未来もあの少年が本当に日向だと確認すると、小さな声で呟いた。
「・・・本当だな。 でも、どうしてアイツがこんなところに・・・?」
しばらく日向の様子を見ていると、彼の後ろから数人の男が現れた。 その中心にいる男が、日向に向かって声を張り上げる。
「あぁ? お前誰だよ。 何度も言うが、ここは俺たちの溜まり場だっつってんだろ? お前みてぇなガキは邪魔だから、とっととここから出てってくんねーかなーぁ?」
男の声は大きかったため、二人の耳にも届いていた。 その発言に対し日向は何かを言って抵抗しているようだが、それは小さく二人の耳には届いてこない。
「大丈夫かな・・・」
「相手は5人か。 まぁ、大丈夫っしょ」
しばらく彼らのやり取りを遠くから観察していると――――突然日向が、その場にいる男に一発殴られた。 一発だけでなく、それからは何度も何度も暴力を振るわれ――――
「ちょッ、未来! 早くアイツらを止めに行かないと!」
その光景を見て少し青ざめた表情をする悠斗に、未来は嫌そうにそっぽを向く。
「はぁ? 何でだよ。 アイツはあのくらいの罰を受けても、おかしくはねーぞ」
「今そんなことを言っている場合!? 一応日向も俺らと同じで、ただの高校生なんだ!」
「だから何だよ」
「同級生がやられているのを、このまま放っておいてもいいのか!?」
そしてしばらく、日向たちを横目に未来と悠斗が言い合っていると――――今度は二人にとって聞き慣れた声が近くから聞こえてきた。
「ねぇ早く! 早く日向たちを止めないと!」
「落ち着けよ優。 ユイからは『喧嘩をしていたら止めろ』なんて言われていない」
優と――――コウだ。
「でも! このままだと日向はやられるんだよ!? あんな強そうな男たちに勝てるわけがないじゃん! コウだって本当は、今すぐ日向を助けに行きたいんでしょ!?」
「それは、そうだけど・・・。 でもユイからは『学校で日向をいじめている奴の妨害をしろ』っていうことしか言われていないんだ。 だからあの男たちは、今は関係ない」
「嫌だ! それでも俺は行く! 離してよコウ!」
「ユイからの命令もなしに行かせるかよ!」
優はコウに言われても流石に納得はいかないようで、日向たちの間に割り込み早く喧嘩を止めたいらしい。 互いに言い合っていると、未来が先に優たちの存在に気付いた。
「コウ! 優!」
突然聞こえたその声に、コウと優は少しだけ身体をビクリ、と震わせる。
「ッ、未来、悠斗・・・。 どうしてここに?」
不審気に尋ねるコウに対し未来は怒鳴った口調で言葉を返した。
「それはこっちの台詞だ! さっきの発言は本当なのかよ!?」
「さっきの発言?」
「『学校で日向をいじめている奴の妨害をしろ』っていう発言だよ! お前らだったのか、俺たちの妨害をしていたのは!」
「え!? ちょ、ま、未来どういうこと!? 未来たちが日向にいたずらをしていたの?」
その発言を聞いた優が話に割って入っていく。
「どうして俺たちの邪魔をしたんだ! お前らのせいで、俺たちの計画は全て台無しに終わったんだぞ!」
「未来、コウたちを相手に怒鳴るのは止めようよ・・・」
怒り狂っている未来を何とか落ち着かせようと、悠斗も彼らの会話に交じる。 ここにいる四人は皆混乱していた。 どうしてここに未来、悠斗、コウ、優が集まったのか、誰一人理由が分かっていない。
そして――――更にもう二人の登場で、彼らはますます混乱の中へと陥っていった。
「あれ、みんなここに集まって何をしてんの?」
未来たちを見つけた真宮が、不思議そうな面持ちをして後ろに立っていた。 隣には北野もいる。
「真宮・・・。 どうしてお前らもここへ来たんだよ」
未来は二人の姿を見て、もうお手上げ状態といったように呆れた様子を見せる。 その言葉に真宮はポケットからをあるモノを取り出した。
「ユイに言われたから来たんだよ。 ほら」
そう言われ、未来たちは一斉にそのメモを覗き込む。 彼から見せられたメモには――――こう書かれてあった。
『沙楽から一番近くのゲーセンの裏へ行ってほしい』
四人は一様に顔をしかめる。
「どういう意味なんだ、それ・・・。 つか、どうしてメモに?」
「さぁ? 別に口で言われてもよかったんだけどな」
そう――――ここにいるみんなは、今ゲームセンターの裏に集合していた。 みんなが互いに顔を見合わせ混乱していると、再び低い怒鳴り声が彼らの耳に届いてくる。
「まだ懲りねぇのかよー。 さっさと去れよなー?」
そして不良は日向を殴り、蹴り飛ばす。 何度も何度も何度も何度も――――
日向は諦めず必死に抵抗し相手に何度も殴りかかっていたが、成人している男たちよりも体格が小さい彼は流石にやられボロボロになっていた。 そんな残酷な光景を再び目にした優はより一層顔色を変える。
「コウ! 早くアイツらを止めなきゃ!」
コウではなく、その発言には真宮が返した。
「あー、待てよ優。 止めには行くな」
「どうして!? 真宮は副リーダーなんだから、喧嘩の許可を俺にちょうだいよ!」
「いや、そのー・・・。 これは、ユイからの命令だ」
苦笑を浮かべながら発されたその言葉に、優は一瞬呆気に取られた。
「・・・ユイ?」
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