心の交差。

ゆーり。

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校外学習と過去の因縁。

校外学習と過去の因縁⑥

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部屋から出た未来と悠斗は、一階にあるロビーへ向かっていた。 
そこは部屋へ行く前に一度通り過ぎたことがあるため場所は把握しており、自販機やソファーなどが置いてあって休憩所となっている。
そんな中、悠斗は隣にいる未来に向かって笑いかけた。
「未来は相変わらずだよな」
「ん? 何がだよ」
「俺と言い合いになったとしても、すぐに謝ってくれるし」
「そういう悠斗もな。 俺のことをすぐに許してくれるじゃんか」
「うん、まぁ。 ・・・でも未来は、それでいいよ」
最後の言葉を少し微笑みながらそう言うと、未来は一瞬驚いた表情をして彼のことを見る。 そしてすぐ目をそらし、苦笑しながら口を開いた。
「何だよ急に。 流石の悠斗でも、そんなことを言うと気持ち悪いぞ」
「はは、だよな。 あ、未来。 俺トイレに行ってくる」
廊下を歩いていると偶然お手洗いを見つけ、悠斗はそう言ってくる。
「あぁ、分かった」
「自販機のところまで、先に行っていていいよ。 すぐに行くから」
「了解」
そう言って、一度悠斗と別れた。 

そして未来はそのままロビーまで行き、自販機を見つける。
―――誰もいないんだな。
普段なら賑わっていそうなロビーだが、人がいないことに違和感を感じつつも自販機の前まで足を運んだ。 財布からお金を取り出し、中へ入れる。
―ピ。
―ガタン。
ほしい飲み物のボタンを押し、少しかがんで出口から取り出そうとした、その時――――

「おい」

「ッ!」

突然声をかけられ、未来は飲み物を手に取る直前に反射して後ろへ振り返る。 そこには――――日中に寺で会った、3人の高校生の姿があった。
―――何だよ・・・同じホテルだったのか。
挑発しないよう、相手のことは睨まずに肩を竦める。 だがそんな態度にはお構いなしに、相手は言葉を続けた。
「やっぱりお前、今日の昼間俺にぶつかってきたガキだよな?」
「・・・」
「丁度いい。 昼間の続きをしようじゃないか。 ここには人がいなくて邪魔が入らない。 売られた喧嘩は、買わないとだからな」
―――だから、喧嘩なんて売ってねぇのに・・・ッ!
本当はそう言い返したいのだが、夜月には『問題は起こすな』と忠告されているため、未来は反抗できずに歯を食いしばって、この場を何とかやり過ごす。
そして感情的になりつつある自分を制御しながら、冷静な口調で言葉を紡いだ。
「止めようぜ。 ここはホテルだし、互いに喧嘩をして問題でも起こしたら迷惑がかかるだろ」
その言葉を聞いて、少年は鼻で笑う。
「ふッ。 迷惑をかけるなんて、そんなのはいつものことだ・・・よッ!」
「ッ!」
そう言いながら、相手は未来に向かって拳を突き出してきた。 その攻撃をギリギリのところで避け、自販機の横へと移動する。
「おい、危ねぇな!」
つい大きな声でそう叫んでしまうと、少年3人も未来の目の前まで脚を動かした。 そして――――
「ほぉ。 今の攻撃、よく避けたな。 なら・・・楽しませてもらうぜ」
そう口にしてニヤリと笑った瞬間――――少年は未来に向かって、もう一度拳を突き出した。


その頃悠斗は、トイレを済ませロビーの自販機のところまで走って向かっていた。 だが未来の姿が見えた途端、足の動きが止まり思わず後ろへ下がってしまう。
そして角で身を隠すようにして、彼らの様子を窺いながら悠斗は考えた。
―――もしかしてアイツら、昼に会った・・・。
―――同じホテルだったのか。
そんなことに“運が悪いな”と思いつつ、なおも観察する。 未来は相手に一切手は出さず、一方的にやられ続けていた。
―――・・・今から助けに行くよ、未来。
意を決して足を踏み込み、未来のもとへと全力で走っていく。 それと同時に、顔だけを右側へ向け片手を上げた。
「先生! こっちです!」
その声に気付いた自販機付近にいる彼らは、同時にその方へ視線を移動させる。 そしてこちらへ向かって走ってくる悠斗を見ながら、一人の少年が呟いた。
「おい、俺たちの先生だったらいいけど相手の先生だったらマズくね?」
その言葉を聞いた真ん中にいる少年が、悠斗のことをキツく睨みながら返事をする。
「あぁ。 コイツらの先生に見つかったら厄介だ。 行くぞ」
そう言って舌打ちを最後に残し、彼らは走ってこの場から去っていった。 
未来が力なくその場に座り込んで、走り去っていく彼らの後ろ姿をぼんやりと見ていると、悠斗はそこへ駆け付けその場にしゃがみ込む。
「未来、大丈夫? 今すぐ北野のところへ行こう」
彼の顔に傷ができていることに気付き、続けてそう言った。 そして未来の腕を掴み立ち上がらせようとするが、彼はその手を振り払う。
「いや、いい。 こんな姿じゃホテルの中は歩けない。 それにみんなには迷惑をかけたくないから、このことは言わないでくれ。 俺の手当ては悠斗が頼む」
「え、でも」
「俺はここら辺で隠れて待っているから、一度部屋へ戻って救急セットを取ってきてくれ」
「・・・分かった」
真剣な表情をして落ち着いた口調で未来がそう言い放つと、悠斗はそれを素直に受け入れ部屋へと戻った。 

そして、数分後――――
「・・・あれ、意外と早かったな。 大丈夫だったのか?」
廊下で救急セットを持ち運んでいるところを誰かに見られてしまうのはもちろん、部屋へ戻るとそこには夜月がいるため、気付かれて何かを言われると思っていた未来はそう尋ねる。
そんな彼の問いに、悠斗は救急セットの中を漁りながら答えていった。
「まぁ、夜月には普通に気付かれて呆れられていたけど『未来が手を出していないなら何も言わない』って」
「・・・そっか」
そして続けて、傷の手当てをしながら言葉を紡いでいく。
「それと、未来はぶつかられても相手に挑発はしないこと」
「なッ、だからしてねぇ! ・・・いや、それはできねぇ」
悠斗の発言に反論しつつも、自分をなかなか制御できずにいる未来は小声で最後にそう付け足した。 そんな彼を見て、苦笑をこぼしながら言葉を返す。
「これだから、未来を放ってはおけないんだよ」
そして手当てを終えた二人は、自販機で飲み物を買い自分の部屋へと戻った。


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