心の交差。

ゆーり。

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校外学習と過去の因縁。

校外学習と過去の因縁②

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日中 寺巡り 御子紫班


校外学習一日目は、クラスごとでの寺巡りが主だ。 一度に5クラス全てが同じところへ集まるととても混雑するため、それぞれバラバラな場所へ向かい寺をローテーションする。
だが一ヵ所だけ、全てのクラスが集合する場所があった。 その寺はとても広く、屋台などがたくさん並んでいるところだ。 
バスに戻る時間は決められているが、それまでは班で自由行動となる。

「人多いなー・・・」
そんな中1組の御子紫班は、屋台の通りには行かず寺の前でたたずんでいた。
「人が多いと屋台なんてまともに見れやしねぇ・・・」
目の前にはたくさんの屋台が広がっており、多くの一般客や生徒たちで賑わっている。 そんな人混みが嫌で、御子紫はその場から動けずにいた。
だがここで、あることを思い出す。

―――あ・・・そうだ。
―――コウのところへ行こう。

コウたちのところへ行くには今がチャンスだと思い、班の仲間に向かって声をかけた。
「悪い、俺ダチのところへ行ってくるわー」
「・・・また神崎のところか」
「お、正解」
この場から立ち去ろうとすると、突然日向にそう尋ねられる。 その問いに苦笑しながら答えると、彼は小さな声で呟いた。
「・・・最近御子紫は、神崎のところへ行くことが多いな。 俺への嫌がらせか」
目は見ずに少し視線をそらしながらそう呟いた日向に、御子紫は淡々とした口調で返していく。
「別に嫌がらせじゃないし、日向とコウを直接会わせたりはしていないだろ。 つか日向たちの班も、屋台でも回ってきたら? じゃあな」
そう言って、この場から立ち去り早速コウ探しを始めた。 だが運がいいのか、すぐに彼らを見つけ声を上げる。
「あ、いたいた。 コウー!」
「御子紫ぁー!」
コウのもとへ走って駆け寄ると何故か優が突然こちらへ向かって走ってきて、そのまま御子紫に軽く抱き着いた。
「!?」
「もう離さないぞ!」
あまりにもいきなり過ぎたこの行動に困惑するが、すぐ笑顔になって言葉を返す。
「そんなことを言ってくれるなんて嬉しいねぇ。 今朝まで、あれ程俺がコウのところへ行くと嫌がっていたのに」
「御子紫がコウのところへ来るたびに嫉妬するから、だったら最初からずっといてもらった方がマシだと思ったんだ!」
「なるほど」
その理由に苦笑しながら納得すると、優は御子紫から少し離れた。 そして周囲を見渡し、彼らに尋ねる。
「優たちの班は、女子が4人なのか? 珍しいな」
基本男女共に3人ずつ、または3対2になるのだが、女子が4人で男子が2人というグループは珍しいと思い素直にそう尋ねると、優が再び声を上げた。
「あ、そうなんだよ聞いてよ御子紫!」
「ん?」
「班決めの時、超大変だったんだ!」

そして優は、この班員になったまでの過程を簡単に説明し出す。 コウと優は当然二人で班を組むと決まっており、そこからが大変だったそうだ。
コウが人気者のせいで女子たちはコウ争奪戦になり、話し合っても決まらなかったため『じゃんけんで平等に決めたら?』と案を出したところ、
女子たちはその意見に賛成し、今の班員に決まったらしい。

「あはは、そっか。 コウも大変だな」
御子紫が苦笑しながらそう言うと、コウも苦笑を返した。 すると彼は、こう聞き返してくる。
「御子紫は、1組で人気者の高橋さんと一緒の班? その・・・日向も」
最後の少年の名を言いにくそうにそう口にすると、御子紫は少し呆れた口調で答えていった。
「二人共違うよ。 日向とは一緒の班になりたかったんだけど、そうすると日向のダチも含めて男子が5人になっちまうからさ。 高橋とは、一緒になれるわけがない。
 コウと同じで争奪戦だよ。 まぁ俺は高橋に興味なんてないし、そこら辺の女子を誘って適当に組んだ」
「そっか」
“日向とは同じ班ではない”と聞いて安心したのか、コウは少し微笑んだ。 そこで御子紫は、二人に尋ねる。
「そういや、他の仲間には会った?」
「まだみんなには会っていないなぁー」
「なら、探しに行こうぜ」
優からその答えを聞いた御子紫は、二人を連れて仲間を探し始める。





結人班


「人・・・多いな・・・」
御子紫の班と同様、屋台が並んでいる通りのど真ん中に立っている結人は、周りの道行く人を見ながら小さな声で同じことを呟く。
「そうだなー」
その声が聞こえたのか、真宮もそう返してきた。
「まぁ、このほとんどが俺たち学校の生徒なんだろうけど」
「いや、そうでもないみたいだぜ。 よく見てみろよ」
「?」
そう言われ、再びじっくりと周囲を観察し始める。

―――あー・・・他の学校の奴らもいんのか。

今ここにいるのは沙楽学園の生徒だけでなく、他の高校の生徒たちもいた。 彼らは結人たちとは違い皆制服なので、思えば結構目に付きやすい。 
校外学習の日が被ってしまったのだろうか。
「そりゃ多いわけだ」
苦笑しながらそう呟くと、隣にいた櫻井が口を開いた。
「その、色折くんは・・・神奈川から来たんだよね?」
「あぁ、そうだよ」
珍しく櫻井から話しかけてきたことに嬉しく思い、結人は笑顔で返す。
「ということは・・・この辺のことは、詳しいの?」
「いや、俺は横浜出身だから鎌倉のことはあまり。 来たことは、何度かあるけどな・・・。 櫻井は、鎌倉へ来たことあるのか?」
「俺は・・・今日が初めてだよ」
少しの間櫻井との会話を楽しんだ後、結人は屋台を見ている藍梨と愛のもとへ駆け寄った。 どうやら二人はお揃いで何かを買いたいらしく、何にしようかと迷っているみたいだ。
「まだ迷ってんのー? ・・・あ、これいいんじゃね? 可愛い二人にはピッタリだ」

彼女たちに交ざり買う物を決めていると、突然背後から声をかけられ結人は振り返る。 
そこには伊達が立っていて、その後ろの屋台には彼と同じ班員らしき生徒たちが何人かいた。 
偶然ここを通った時に見つけられたのだと分かると、そんな伊達に向かって口を開く。
「まさかこんな人が多いところで会うなんてなー。 他のみんなにはまだ会っていないから、伊達が初めてだぜ?」
「俺も、見つけたのはユイだけだよ。 てより、藍梨は?」
突然藍梨の居場所を聞かれ、結人は後ろへ振り返り彼女の後ろ姿を見つめた。
「・・・あぁ、目の前にいたのか。 私服だったから気付かなかったよ」
そう言うと、伊達は遠慮なしに藍梨と愛の間に割って入り、彼女たちと楽しそうに談笑し始める。 
自分の横を普通に通り過ぎ藍梨のもとへ駆け寄った伊達に、少し不機嫌そうな表情を見せた。

―――何だよ、藍梨目的だったのか。

「ユイー」
そんな二人のやり取りを何も言わずに見ていた真宮は、結人が一人になったところで声をかける。 その方へ目を向けると、彼はこちらへ向かってニヤリと笑った。
「藍梨さんをちゃんと見張っていないと、伊達に取られるかもな」
「なッ・・・!」
周りには聞こえないよう耳元でそう囁いてきた真宮に、一瞬にして結人は焦り出す。 そしてその言葉を聞くなり、急いで伊達と藍梨の間に割って入った。


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