心の交差。

ゆーり。

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校外学習と過去の因縁。

校外学習と過去の因縁①

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数日後 沙楽学園 1年5組


テストを終えた沙楽学園。 7月に入り中旬の今、夏休みに入る前に彼らは新たなイベントをこれから迎えようとしている。
「じゃあ今から班決めスタート! 男女混合で、5人か6人のグループなー。 喧嘩はすんなよー」
ホームルームの時間で、5組の担任の先生は生徒に向かってそう指示を出した。 これから1年生は、校外学習という学校行事が始まる。 行き先は神奈川県の鎌倉。
校外学習は3日間続けてあり、ちょっとした修学旅行といったところだ。 1日目はクラスごとの行動で、2日目は班別行動。 3日目は海での自由時間。 
という風に割り振られている。 そして今の授業では2日目に必要となる班決めと、ホテルに泊まる時の部屋分けを行っていた。
「藍梨! 藍梨は当然、俺と同じ班になるだろ?」
「もちろん!」
先生が指示を出した後、すぐに結人は隣の席にいる藍梨にそう尋ねる。 すると彼女は、笑顔で承諾してくれた。
「ユイー。 俺もいいかー?」
「おう。 もちろんだぜ」
二人で話をしていると、さり気なく割って入ってきた真宮。 その頼みに、結人は快く承諾した。 これで今決まったのは、男子2人で女子1人。 計3人。

―――まだ全然足りねぇな・・・。

「色折くーん、一緒の班になろー?」
「んー? 悪い。 俺の中でもう班は決まっているから、他をあたってくれ」
「えー? 何それ。 仕方ないなぁ」
折角女子からグループに誘われたが、軽い口調でさらりと断る。 そんな様子を藍梨と真宮が不思議そうな表情で見つめていると、結人は藍梨に向かって尋ねかけた。
「なぁ藍梨。 藍梨はよく、あの女子たちと一緒にいるだろ?」
そう言って、近くにいる女子二人のことを目で見て合図する。
「うん、よく一緒にいるよ」
「藍梨は校外学習の班、あの子たちと一緒のグループになりたいか?」
「え、どういう意味?」
「できたらさ。 今一人で席に座っている、愛ちゃんのことを誘ってほしいんだけど」
そう言って、藍梨とよく行動を共にしている女子らから、クラスで一番前の席に座っている愛の方へと視線を移した。 
結人は彼女が一人になってしまうと思い、気にかけて藍梨にそう口にしたのだ。
「私は愛ちゃんと一緒でも構わないよ」
「え、マジで?」
「うん。 じゃあ、誘ってみるね」
藍梨は結人の思いを察してくれたのか、笑顔でそう返し愛の席へと走っていく。

―――藍梨が優しい子でよかった。

彼女である藍梨の行動を見届けると、結人は席を立ち真宮に向かって声をかけた。
「真宮。 俺たちも行くぞ」
「行くってどこへ?」
「いいから」
そう言って同じ列にいる一人の少年の席まで行き、彼の目の前に立つ。
「え、っと・・・」
突然の結人の登場に動揺している彼に、優しく笑いかけた。
「櫻井。 俺たちと一緒の班になんねぇか?」
「え、でも・・・」
そう誘うが、櫻井はすぐに答えてはくれない。 すると彼は結人から、隣にいる真宮の方へ視線を移した。 
そこで目が合うと、真宮は櫻井に向かって優しく微笑む。
「・・・うん。 ありがとう」
その表情を見て安心したのか、彼は少しぎこちない笑顔を見せながらもその誘いに承諾してくれた。 
どうやらその間に藍梨も愛からOKを貰ったのか、二人は櫻井の席へ駆け寄ってくる。
「それじゃあ、あとは班長決めだなー」
「班長は真宮で決まりー!」
「は、何でだよ!? ちゃんと話し合おうぜ! つか、ユイの方が班長に向いているから!」
真宮はその言葉を聞くとすぐに反論してくるが、結人はそんな彼を細い目で見据えながら耳元で小さな声で囁く。

「俺は現在でもリーダーをやってんだぞ。 だから今くらい、リーダーという役を押し付けないでくれ」

「なッ・・・」

そう言い終えた結人は一度彼から離れ、続けて大きな声で口を開いた。
「まぁ、まず女子には班長という面倒な役は押し付けられないだろ。 そんで櫻井は、文化祭で主役を頑張った。 つーことは、残りは真宮だ!」
「ッ・・・。 ・・・分かったよ」
「よっしゃ!」
堂々とした態度でそう言い、最後は真宮に向かって人差し指を突き出す結人。 その理由に納得してしまい反論できなくなった彼は、渋々了解してくれた。
ホテルの部屋は班で男女に分かれるだけのため、結人たちの班決めはこれで終了する。





校外学習当日 1日目 朝 沙楽学園グラウンド前


「今日は待ちに待った、校外学習だぜー!」
「そうだなー。 折角授業がないんだし、楽しもうか」
集合場所は沙楽学園のグラウンド。 そこには5台のバスが到着しており、着いた生徒たちからバスの中へと乗り込んでいく。
そんな中御子紫、椎野、北野はいつものように3人で登校し、今日という日を早速楽しんでいた。
「今日が待ち遠しくて、昨日は6時に寝たぜ」
「は!? それは流石に早過ぎだろ!」
「凄いねー、御子紫」
御子紫が笑顔で昨日就寝した時刻を彼らに伝えると、遠くにいるある少年が目に入り、彼に向かって大きな声で名を叫ぶ。
「あ、コウー!」
「え、またコウかよ・・・」
御子紫はコウの姿を見るなり、椎野たちを放っておいて彼のもとへと走っていった。
「あぁ! また来たなー!」
コウの隣には当然優もいて、優も御子紫の姿を見るなり声を張り上げる。 この校外学習の間は私服でOKなため、他の生徒たちも普段と違いとても新鮮な感じがした。
「俺に対する第一声がそれかよ。 おはよ、優、コウ。 校外学習中は、二人のことを見つけ次第俺も交ざるつもりだから、そこら辺はよろしくー!」
「クラスが別だから会いにくいんじゃないの?」
「そうかもだけど、まぁ・・・頑張って二人を探すよ」
「2組、出席を取るからバスの中へ入ってー!」
御子紫と優がそのようなことを話していると、2組の担任がそう言葉を放つ。
「じゃあそろそろ行くよ。 また後でな、御子紫」
「おう」
コウがそう言って優と共にバスの中へ入っていくと、御子紫も自分のクラスのバスへと向かって歩き出した。





4組 バスの中


「未来、何してんの?」
伊達は自分の席の前にいる未来に向かって、その場に立ち後ろから彼のことを見下ろすような形でそう尋ねる。
「んー・・・。 見たら分かるだろー・・・。 書いてんの」
伊達の隣に座っていた夜月がその声を聞くと、同様にその場に立ち上がり未来のことを上から覗いた。
「・・・未来、寝ぼけてんのか? それ、今書くものじゃなくて夜に書くものなんだけど」
そう――――今彼が書いているのは、校外学習のしおりにある“今日一日の感想”というものだった。 
当然今日一日を終えてから書くものなのだが、未来は何故かそれを今やっている。
「寝ぼけてなんかねぇよー。 こういうのは早めに書いておいた方が、後が楽になるに決まってんだろ」
どこからどう見ても眠そうな表情をして、眠そうな声を出しながらも彼は書き続けた。
「先生に見つかっても知らないぞ」
「あー、もう! さっきからお前らうるさいな! 放っておけ!」
未来の隣に座っている悠斗が呆れながらそう言うと、未来は大声でそう言い放つ。 彼らも――――いつもと変わらない。


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