心の交差。

ゆーり。

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結人の誕生日とクリアリーブル事件2。

結人の誕生日とクリアリーブル事件2㊳

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クリアリーブル集会 広場


「夜月・・・。 お前は、本当にクリーブルへ入るのか?」
なおも壇上から夜月のことを見降ろし、低い声で尋ねてくるクリアリーブルの男。 その問いに対し、俯いたまま小さな声で返事をした。
「・・・あぁ」
それを聞くと少しの間黙り込み、再びメガホンを手に取って叫び出す。
「おいみんな! 攻撃を止めろ!」
彼が発したことにより、この集会からは人々の悲鳴が徐々に聞こえなくなっていく。 奴は言った通り、夜月がクリアリーブルに入ったから攻撃を中止したのだ。 
だが夜月には、まだ迷いがあった。 クリアリーブル内での抗争を止めさせるのが本望だったため、こういう結果になり満足するはずだったのだが――――

―――これで・・・本当に、よかったのか。

夜月は困惑していた。 自分の選んだ選択肢はこれで合っているのか――――どうしてクリアリーブルは、そこまでして結黄賊を嫌うのか――――
この時の夜月は、その理由がまだ分かっていない。


「もう痛いところはない?」
「うん、お兄ちゃんありがとう」
「どういたしまして」
北野は先刻夜月から連絡をもらった、怪我をした女の子の手当てをしてあげていた。
「お兄さん本当にごめんね。 ありがとう」
「いえ。 これが俺たちの役目ですから」
女の子のお父さんに向かって、優しく微笑みながらそう返した瞬間――――

「おいみんな! 攻撃を止めろ!」

「?」
突然この集会に響いた、男の低い声。 その声を聞いて、北野はあることを確信する。
―――夜月・・・クリーブルのリーダーと、交渉成立でもしたのかな。
そう思った北野は、自分がやるべきことの最終段階に入った。
「もう大丈夫だと思います。 早くここから避難してください」
「あぁ。 お兄さんも、気を付けてね」
「はい」
お父さんと女の子を見送り、自分も人混みの中へと入っていく。
「今のうちに早く避難してください! 怪我をしてしまった人は俺のところへ!」
クリアリーブルからの攻撃が終わった今、北野はここにいるみんなを避難させることに集中する。 そんな時――――
「皆さん早く逃げてー! 逃げるのはこっちですよー!」
ふいに聞こえた後輩のその声に、思わず微笑んだ。

―――後輩たちも、頑張っているんだな。

「北野先輩!」
「あれ、どうしたの?」
「この人怪我をしたみたいなんで、手当てをしてあげてください」
「了解」
後輩が怪我人を連れてきて、北野は早速手当てに取りかかった。 そして、それから数分後――――
「北野先輩!」
「どうしたの?」
「あの、ちょっと・・・」
「?」
言いにくそうな雰囲気を醸し出す一人の後輩に、目の前にいる人の手当てを素早く済ませこの場から避難させた。 二人きりになったことを確認し、再び口を開く。
「何かあった?」
「はい。 その・・・俺近くにいたんで、聞いてしまったんですけど・・・」
「?」
後輩は一度深呼吸し自分を落ち着かせ、意を決して北野に向かって言葉を紡いだ。

「クリーブルが喧嘩を止めたのは、夜月先輩がクリーブルに入ったからなんです」

「え・・・?」

―――どうして・・・どうして、夜月が!

「先輩!」
北野はその情報を聞いた瞬間、この場から走り去っていた。 当然向かう場所は――――夜月のところだ。
「夜月!」
壇上の近くにいる夜月の後ろ姿を発見し、すぐさま大きな声で名を呼ぶ。
「夜月・・・。 どうして、クリーブルに入ったんだよ」
「・・・」
そう問うが、彼は何も答えようとしない。

―――夜月・・・クリーブルに一度入って、後から裏切ろうとでも思ったのかな。
―――そんなこと、無理に決まっている。
―――クリーブルの前で裏切ったら、大勢の人に囲まれて・・・夜月はリンチに遭って・・・負けるかもしれないのに!

北野は悔しさのあまり、拳を強く握り締めた。
「先輩!」
どうやらこの広場にいたクリアリーブルのみんなは無事に避難したようで、やることを終えた後輩たちは北野のもとへやって来た。
後輩たちが夜月のことを心配そうな目で見つめている中、北野はもう一度彼に向かって言葉をぶつけ出す。
「どうしてクリーブルに入ったんだよ!」
「・・・」
「夜月、答えてよ!」
珍しく声を張り上げ怒鳴り付けるが、それでも彼はずっと黙ったままだった。 その様子を見かねたのか、クリアリーブルの男は北野の発言を遮って言葉を紡ぎ出す。
「まぁ、今日はこれから結黄賊のところへは行かねぇ。 
 本当はここにいるクリーブルのみんなを連れてお前らを襲撃する予定だったけど、結黄賊が自らこの集会へ足を運んでくれたからな」
そして夜月のことをもう一度見下ろして、言葉を放った。
「夜月。 早速だが、お前には今からクリーブルのアジトへ付いてきてもらう。 こっちだ」
「ッ・・・」
男はそう言いながら、壇上から降り始めた。 そんな中、北野は一人焦り出す。
―――どうしよう・・・早く、夜月を止めなきゃ・・・!
―――でも、どうやって・・・ッ!

「・・・待てよ」

「・・・?」
焦りながらも何もできずにいると――――ふいに、男を呼び止める声が聞こえてきた。 その声の主は――――夜月だ。


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