心の交差。

ゆーり。

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結人の誕生日とクリアリーブル事件2。

結人の誕生日とクリアリーブル事件2㉒

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数分前 路上


「くそッ、どうして距離が遠いんだよ!」
「さぁ・・・。 集会と俺たちが行くよう指示された場所って、結構離れているよね。 何か関係があるのかな?」
「そんなもの、わざと遠ざけたとしか考えられねぇだろ!」
夜月と北野は、結人に言われた通りクリアリーブル集会へと向かっていた。 
場所は遠く、簡単に言えば正彩公園を中心として考えて、公園を出て右へ曲がり2キロ進むと、結黄賊が集まるよう指定された空地がある。
その反対に公園を出て左へ曲がり2キロ進むと、クリアリーブル集会が行われている広場がある。 そんな感じだった。
正反対に指定された場所を不審に思いながらも、夜月たちは集会が行われている場所へと足を向かわせる。 が――――その時。
「ッ、ちょ、夜月!」
「あ? 何だよ」
強制的に足を止められた夜月は、後ろにいる北野の方へ少しの苛立ちの表情を見せながら振り返った。 そして、彼の先で見たものとは――――

「あれって、伊達だよね?」

「・・・」
―――確かに・・・アイツは、伊達かもな。
北野は走っている最中に伊達を発見したらしく、夜月を呼び止めた様子。 だがこちらも時間がないため、彼が本当に伊達なのか確かめる暇もなかった。
「どうして、伊達がこんなところに?」
「さぁな。 人違いかもしれねぇだろ。 とにかく今は13時過ぎて集会が始まっているんだ、アイツなんかに構っている時間はない。 行くぞ」
そして返事も聞かずに、夜月は再び集会へと走り出す。 

そして数分後、やっとの思いでクリアリーブル集会が行われている広場へ辿り着くことができた。
「人・・・多いな」
「何か騒がしいね。 何があったんだろう」
夜月よりも少し遅れてきた北野は、隣に並びながら小さく呟いた。 ここに集まっている人はとても多く、集会を開いた中心人物が誰なのかも分からない。
だけどこれだけ騒いでいるようでは、悪いことが起きているのは確かだった。
「しょうがねぇ、伊達に電話するか」
そう思い、夜月が携帯を手にした瞬間――――

「夜月!」

「?」
突然名を呼ばれ、手を休めて声のした方へ視線を移動させる。
「あ・・・。 お前ら」
「夜月、知り合い?」
どうやら声をかけてきたのは、伊達のクリアリーブルの仲間である少年二人だった。 夜月は彼らと文化祭で会ったことがあるため、違和感なく話かける。
一方北野は二人とは会ったことがないため、不安そうな面持ちで彼らの会話を黙って聞いていた。
「おい、他の奴らはどうした?」
「えっと、それは・・・」
少年二人は互いに顔を見合わせながら、同時に口を噤んだ。 そんな彼らを見て“何も言いたくないのか”と思い、夜月は少し後悔する。
―――伊達がこの場にいないっていうことは、さっきすれ違った奴は本当に伊達だったのかよ!
―――どうしてこんな大変な時に、アイツは勝手な行動をしちまうんだ・・・ッ!
だがここで伊達に対して怒っても何も事態は変わらないと思い、今すべきことを考えた。
「まぁいい。 それで、今はどういう状況なんだ?」
やっとここで、彼らから今起こっていることを聞く。 夜月は先刻伊達との電話で少しは事情を聞いていたため、あまり驚くようなことはなかった。
「まだ被害者は出ていないんだな?」
「多分」
「夜月・・・」
ふと小さな声で名を呼ぶ北野の声に、少し感情的になっていた夜月はふと我に返る。
「・・・あぁ、悪い。 この二人はクリーブルで、伊達のダチさ。 ユイとも文化祭で会ったことがある」
「え、そうなの?」
「そう。 だからコイツらに、不審を抱く必要はねぇよ」
それだけを言って、一人考え始めた。

―――さて・・・これからどうするかな。

「夜月、これから俺たちは何をしたらいい?」
伊達の友達である少年の言葉を聞き、夜月は二人に尋ねかける。
「お前らも協力してくれるのか?」
「当然! 結黄賊は悪いチームじゃないっていうことは俺らでも分かっているし、できる限りのことは協力する」
「あぁ。 俺たちは今危ない状態だけど、結黄賊も今危ないんだろ? だったら互いに、協力し合いたい」
思っていたよりも即答され少し驚いた表情を見せるが、すぐに彼らの意志を受け止めた。
「サンキューな。 ところで、この集会を開いたリーダー的な奴はどこにいる?」
「おそらく一番奥の真ん中にいる。 相手は男だったよ。 喧嘩も強そうだった」
「マジか・・・」
小さな声で呟いて、少年に言われた一番奥の真ん中周辺を睨み付ける。
―――あそこに、いるんだよな。
数秒間その場所を見据え頭に場所を憶えさせた後、夜月はここにいる北野と少年らに向かって力強く命令を下した。
「北野と二人は、ここにいるクリーブルのみんなを避難させるよう指示を出してくれ」
「「「分かった」」」
「そして北野、お前はもし被害者を発見したらすぐに手当てをするように。 避難させるよりも、手当てが先な。 怪我人が外で見つかったらマズいから」
「うん、了解。 あ、夜月は何をするの?」
了解したと同時に尋ねてきた北野に対し、夜月は真剣な眼差しでその問いに答える。
「俺は今からリーダーのところへ行く」
「ッ・・・。 そっか。 分かった、気を付けて」
最後の『気を付けて』という言葉をしっかりと胸に刻み付けながら、彼に力強く頷いてみせた。 そして彼らをこの場に残し、夜月は奥を目指して足を一歩踏み入れる。 
人を次々と掻き分け、前へ前へと進んでいった。 そんな中、夜月の耳にはクリアリーブルの人たちの叫ぶような声がいくつも届いてくる。

「怖いよー!」 「誰か助けて!」 「早く逃げよう」 「もうクリーブルなんて辞めてやる!」 「これも全部、結黄賊のせいなのか?」

―――ッ・・・。
―――何なんだよ・・・ッ!
人が多くて前へ進むことが困難な中、周囲から聞こえる声に精神的にもやられていく夜月。 だが自分に気合いを入れ続け、もがくように目的の場所を目指して進んでいく。

そして――――様々な障害に阻まれつつも、何とか無事にリーダーのいる場所へと辿り着くことができた。
「おい! 今すぐみんなを解散させろ!」
「あぁ?」
壇上に座り込んでいる男に向かって、そこへ手をつきながら声を張り上げる。
「早く解散させろっつってんだろ!」
「嫌だ」
無表情で即答するリーダーらしき男に、込み上げてくる怒りを歯を食いしばって何とか耐え切った。 
そして“この状態を早く何とかしなければならない”という焦りから、冷静さを失い思わず壇上に飛び乗る。 そしてその勢いで男を軽く突き飛ばし、相手からメガホンを奪った。
それを手に取った夜月は口元まで持っていき、壇上からここにいるクリアリーブルの人々へ向かって大きな声で言葉を放つ。

「おいみんな! 早く逃げろ! 後ろの方から早く逃げろ! ここにいるコイツらの話なんて聞くな!」

「ったく、しつけぇんだよッ!」
―ドス。
「ぐはッ・・・」
男に背中を思い切り蹴られ壇上から転倒し、夜月は正面から地面に叩き付けられた。 激しい衝撃を受けつつも、痛みに耐えながらその場に立ち上がり相手の方へ身体を向ける。
「くッ・・・」
そんな苦しそうな夜月の表情を見て、壇上に立っている男はニヤリと笑った。 そしてその表情のまま、楽しそうに次の一言を放つ。
「もう遅い」
「なッ・・・」
夜月がその一言に反応した、次の瞬間――――男は右手を勢いよく振り上げた。


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