心の交差。

ゆーり。

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結人の誕生日とクリアリーブル事件2。

結人の誕生日とクリアリーブル事件2⑱

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同時刻 クリアリーブルのアジト


―――未来が、危ない・・・?
―――どうして・・・クリーブルと何か、関係があるのか?
先程まで優と繋がっていた携帯電話を片手に、結人は俯きながら考える。 
彼は確かに『何かをしでかすかもしれない』と悠斗から聞いてはいたが、その日が今日と被ってしまったことは何か意味があるのだろうか。 だったらどうして、未来なのだろう。 
結黄賊に用があるとするならば、リーダーである結人か、または一度結黄賊を裏切った真宮を呼び出した方が筋が通る。
なのにどうして、何も関係のない未来なのだろうか。

―――つか・・・さっき優には『何とかここを抜け出す』って言っちまったけど・・・どうしよう。

結人は床に座り壁にもたれたまま、自分のいる周囲を見渡す。 どうやって抜け出そうかなんて考えてもいなかったため、優にあんなことを言ってしまったことに少し後悔していた。
―――んー・・・あ、やべッ!
―――キャッチが入っていたんだった。
優との話が一段落したことに安心していたのも束の間、すぐに通話ボタンを押す。
「もしもし?」
『もしもし、ユイか?』
「その声は・・・伊達か?」
相手が誰なのかを確かめず電話に出たため、通話してきた者は誰なのかを今確認した。
『あぁ、そうだよ。 つかユイ! どうしよう・・・ッ!』
「とりあえず落ち着け。 何があったんだよ?」
電話越しで焦っている彼に対し、結人は落ち着いた口調で返事をする。 その言葉を聞いた伊達は冷静になって、先刻起きた出来事を静かに語り出した。
『うん、あのさ・・・。 13時に、クリーブル集会が始まったんだ』
「そうだったな」
『それで13時になった瞬間、この集会の主催者みたいな男が・・・ここに集まっているクリーブルのみんなに向かって、言ったんだ』
「何て?」
『お前らは結黄賊にやられたこと、忘れていないよな・・・。 だから今から、結黄賊を潰しに行こうと思う。 人数が足りないからお前らも俺たちに協力してくれ。 
 もし協力しないって言った奴らは・・・全員潰していく、って・・・』

―――ッ、何なんだよ!
―――立川の一般の人も巻き込む気か!

その言葉を聞き少し感情的になってしまった結人は、壁に向かって勢いよく拳をぶつけるが、深呼吸をして何とか落ち着きを取り戻す。
『なぁユイ、俺たちはどうしたらいいんだよ! ここにいるみんなはもう既に混乱状態に陥っている。 このままだと、俺たち全員やられちまうよ!』
―――・・・逃げられない、状態なのかな。
そんなことを思いつつも、伊達の気持ちを理解した上で答えを出した。
「大丈夫だ、安心しろ。 それに今、伊達のいるクリーブル集会には夜月たちが向かっているはずだ」
そこで結人は、二つの出来事が一つの結論に結び付く。

―――そうか・・・。
―――クリーブルの連中は仲間を増やして、俺たちをハメようとしている・・・。
―――つまり御子紫たちに行かせた指定された場所に、増えた仲間を連れてこれから向かって、結黄賊を襲撃しようとしているのか。

結人が一人で解決し納得していると、電話越しからは怒鳴り声が聞こえてきた。
『クリーブル集会は夜月が来て何とかなっても、結黄賊が危ないんだぞ!』
「そりゃ、そうだけど・・・」
『ユイだけでもいいから、こっちには来れないのかよ!』
「それは無理だ」
『無理って、どうして!』
その言葉を聞いて結人は再び周囲を見渡し、溜め息交じりで言葉を吐き出す。
「・・・今俺、クリーブルに捕まっているから」
『は!?』
「・・・」
今すぐ集会へ行きたい気持ちはあるのだが、自分がこんなところにいて外へ出られないようでは何もすることができない。
そんな自分に不甲斐なさを感じていると、今度は電話越しから落ち着いた声が聞こえてくる。
『じゃあ・・・俺に何かできることは、ないのかよ』
「できること?」
そう尋ねられ、結人はしばし考える。 そして先刻優と話していた会話を思い出し、そのことを伊達に持ちかけた。
「そうだ。 じゃあ伊達に、頼みたいことがある」
『何だよ?』
「集会の方は夜月たちに任せて、伊達には未来を捜しに行ってほしい」
『未来を? どうして?』
「今どこにいるのか分かんねぇんだ。 それに悠斗いわく、未来が今から危険なことに巻き込まれるのかもしれないと言っていた。 だから未来のことが心配だ。 
 ・・・捜しに、行ってくれるか?」
『別に・・・いいけど』
―――でも、伊達一人で行かせるのも危険・・・か。
伊達の安全を第一に考え、もう一つの提案を伝える。
「それでもし未来を捜しに行くなら、椎野も連れていってくれ。 椎野なら今頃、まだ正彩公園にいるはずだから」
―――椎野なら鉄パイプが使えるし、十分な戦力になるだろ。
そう思った結人は椎野を連れて行くよう指示するが、彼は思ってもいなかった返事をしてきた。

『分かった。 未来のところへ行くには、椎野を連れて行けばいいんだな? じゃあ未来のことは、俺のクリーブルの友達に任せる。 
 俺は今からユイを助けに行くから、そのためには何をしたらいいんだ?』

「はッ!? 何を言ってんだよ、お前・・・」
『俺は本気だぞ!』
「無茶なことを言うな! そんなものは駄目に決まっている。 危険だから、伊達をこんなところへ呼べるわけがねぇだろ」
『でもユイは今、身動きが取れない状態なんだろ!』
「ッ・・・」
彼の言っていることは正しいため、結人は何も言えなくなり口を噤む。 そして電話越しから、再び伊達の熱い意志が伝わってきた。
『大切な友達が、今大変な目に遭っているんだ。 そんなもの、放っておけるわけがないだろ。 俺は行くよ、今すぐにユイのもとへ駆け付けて助けに行く!』
「・・・」
『確かに俺は喧嘩はできねぇしいい結果も出せないかもしれないけど、一つくらいは俺にできることあるだろ? なぁ・・・俺に命令をくれよ。 絶対、その命令に従うからさ』
「伊達・・・」
そう言われ、結人は嬉しいような悲しいような複雑な気持ちに陥った。

―――どうしてお前は・・・結黄賊でもないのに、そんなに俺の味方をするようになったんだろうな。
―――お前が俺の味方をしてくれるって言うんなら・・・俺も、伊達の味方でいなくちゃいけなくなるじゃんよ。

「分かった・・・。 じゃあ伊達に、一つだけ命令を下す」
『おう、何だ?』

―――ここへ来るまでが一番大変だと思うけど・・・もし俺のところまで無事に辿り着けたら、ちゃんと伊達のことを守ってやるよ。

そして結人は――――伊達に向かって、彼にとって初めての命令を下した。

「何でもいい。 鉄パイプやバール、何でもいいから・・・それらを二つ持って、俺んところまで来い」


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