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結人の誕生日とクリアリーブル事件2。
結人の誕生日とクリアリーブル事件2⑯
しおりを挟む12時55分 クリアリーブル集会
時は少し遡る。 結人が指定された場所へ向かい男たちと会い、未来はまだ行動を移していない頃――――クリアリーブル集会を行う広場では、たくさんの人で賑わっていた。
だがその中で、不安を抱えている少年が一人。
―――人・・・すげぇいるな。
伊達たちは集会が始まる15分前にこの広場へ着き、開始するまでこの場で待機していた。 だがそれから10分程経つも、更にここへ集まる人は増えていく。
「人めちゃくちゃ多くね!?」
「みんな、はぐれんなよ」
「可愛い子いないかなー」
伊達よりも活発である友達らは、こんな複雑な状況でも楽しんでいる様子。 その中で伊達は周囲を見渡し、状況を確認した。
丁度昼時のせいか、スーツを着たサラリーマンもちらほら見受け、または親子連れである人たちもいる。 小学生くらいの小さな子もいれば成人している大人もたくさん見て取れた。
本当に集まっている年齢層は広く、一体感が感じられない。 そんな彼らに囲まれ、伊達は不安な気持ちと共に人の多さに酔い気持ち悪くなってしまった。
「あ、彰・・・」
「ん?」
「人が、多過ぎる・・・。 端に、行かないか?」
「あぁ、いいぜ。 気分悪いのか?」
「一応、平気」
隣にいる彰に声をかけ、みんな揃って広場の一番後ろへと足を運ぶ。
どうやら伊達たちは、着いた時には端にいたのだが時間が経つにつれ人が増えたせいで、広場の真ん中まで自然と移動していたようだ。
「はぁ・・・」
人混みから何とか抜け出し、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。 そして時刻を確認しようと、ポケットから携帯を取り出した。
―――12時58分、か・・・。
―――あと2分だな。
「直樹!」
「え? あぁ、何?」
「直樹はこれから、クリーブル集会で何が起きると思う?」
「さ、さぁ・・・」
伊達が気持ちを落ち着かせている間に、友達らはこれから起きるクリアリーブル集会について、それぞれ予想を立てていた。
「やっぱりさ、運動会じゃね!?」
「え、何それ楽しそう!」
「初のクリーブル集会なんだ。 絶対、楽しいことに決まっている」
「・・・」
今の状況を楽しんでいる彼らを横目に、伊達は呆れ軽く溜め息をつく。 そんな時――――突然、伊達の携帯が鳴り響いた。
周りはざわついており着信音は聞こえなかったが、携帯のバイブによりすぐに気付く。
―――夜月・・・?
―――これからクリーブル集会が始まるというのに、こんな時に何の用だろう。
いいタイミングか悪いタイミングか分からない着信に、少し躊躇いつつも電話に出る。
「もしもし?」
『もしもし、伊達か? 今、そっちへ向かっているからッ!』
「は・・・?」
電話越しから聞こえる、夜月の慌てる荒い声。 それと同時に雑音も聞こえたため、今彼は走っているのだと想像がつく。
「夜月はクリーブルじゃねぇだろ、なのに何でこっちへ来る必要があるんだ?」
『伊達・・・ッ! 今そっちは、大丈夫か?』
「え?」
ふと集会の現場のことを尋ねられ、自然と周囲を見渡す。
「いや・・・。 特に、変化はないけど・・・」
そう口にした瞬間、伊達はある人物に目が留まった。
こんな大人数の中、たった一人の者に注目するはずはないのだが――――彼は壇上に立っているのか、ここにいるみんなよりも高い位置にいるため目に付いたのだ。
みんなとは違った光景にふと目が留まり、ずっと見続けていると――――その男はメガホンを手に取り、この広場にいる人々に向かって大きな声で言葉を放った。
「みんな、注目ー!」
―――あ・・・13時になったのか。
伊達は夜月と繋がった携帯を耳に当てながら、壇上に立っている男に注目する。 そして彼は人々が自分に注目したことを確認し、続けて言葉を放った。
「お前らは、結黄賊という凶悪なチームのこと・・・忘れてねぇよな?」
―――結黄賊・・・?
『ッ・・・』
電話越しから、夜月が僅かに反応したのが感じられた。 だがそんな彼には気にも留めず、伊達は男の次の言葉を待つ。
「結黄賊は、俺たちクリーブルにクリーブル事件を起こさせた・・・。 そうだよな?」
ここにいる人々はざわめき出す。
「結黄賊が『立川の人々を病院送りにさせろ』と俺たちクリーブルに言ってきた・・・。 そのせいでクリーブル事件という名が付き、俺たちは悪者になった・・・。 そうだよな?」
よりここにいる人々はざわめき出す。 伊達の周囲から聞こえる声は『そうだね』『そうだったな』というその言葉に頷く者ばかり。
だが伊達は結黄賊はそんなことをしていないと分かっているため“何を言っているんだ、コイツ”という不審な目で男を睨み付けていた。 続けて彼は――――力強く、言葉を放つ。
「俺たちはそんな結黄賊のことを、まだ許しちゃいねぇ。 だから今から、結黄賊の連中を襲撃しに行こうと思っている。 そこで、だ」
そして男は、今回クリアリーブル集会を開いた一番の目的である――――ある一言を、ニヤリと小さく笑ってから口にした。
「結黄賊を襲撃するには、たくさんの人数が必要だ。 だからここにいるクリーブルの全員・・・俺たちに、協力してくれないか?」
―――・・・は?
―――それって、つまり・・・。
伊達は男の言う次の言葉を聞いて、一瞬にして全身が震え出す。
「もしも協力してくれないってんなら・・・ソイツら全員、ぶっ潰す」
―――なッ・・・どうして!
『ッ、くそ!』
最後の一言に、ここにいるクリアリーブルのみんなは更にざわめき出す。
「どういうこと!?」 「今から俺たちも、結黄賊に喧嘩を売りに行くっていうことだろ?」 「もしそれに協力しなかったら、俺たちは今すぐコイツらにやられるのか!?」
「そんな無茶苦茶な!」 「俺たちの意見はどうなるんだよ!?」 「もう、どうしたらいいんだよ!」
周囲の彼らの声を聞きながら、伊達の心には様々な感情が生まれ出した。
―――何とか、何とか、しなきゃ・・・。
―――このままだと、結黄賊が・・・。
―――このままだと、クリーブルのみんなが・・・ッ!
『伊達!』
突然電話越しから響く夜月の声。
「夜月・・・」
「なぁ、どういうことだよ」 「意味分かんねぇ。 結黄賊はそんな命令、出していないんだよな?」 「あぁ。 俺はそう信じている」
不安な気持ちになっているのは伊達だけではない。 それは、伊達の友達である彼らもそうだった。 結黄賊の何人かと知り合っている彼らは、当然結黄賊の味方である。
『伊達! もうすぐその広場へ着く! だからお前はそこにいろ!』
そう言われ、強制的に切れる夜月との電話。 だが伊達は、正気ではいられなかった。
―――どうしよう、どうしようどうしよう・・・!
―――は、早くしないと、みんなが・・・ッ!
震える身体を何とか自力で抑え込み、頭を必死に働かせる。
―――そ、そうだ・・・!
―――ユイに、連絡しなきゃ・・・!
結黄賊がこれからハメられると思った伊達は、結人にそのことを早く伝えようと急いで携帯の画面へ目を移す。 そして――――震える指で、結人への着信ボタンを押した。
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