心の交差。

ゆーり。

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結人の誕生日とクリアリーブル事件2。

結人の誕生日とクリアリーブル事件2⑮

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13時15分 路上


―――みんな・・・大丈夫かな。
結人はクリアリーブルの連中に監禁され、他の仲間はそれぞれの場所へ向かっている中――――たった一人の少年は、とあるところへと足を運んでいる。
足は休むことなく前へ進めているが、少年の心にはずっと不安な気持ちが残り続けていた。 
今はこんなに大事な時だというのに、他の用事と重なってしまったことに苛立ちと罪悪感を抱えながら――――

―――どうして・・・今日に限って・・・ッ!

~♪

少年の心を落ち着かせるように、タイミングよく鳴った携帯電話。 ポケットから取り出し、相手を確認する。
―――悠斗・・・か。
結黄賊のルールとして“結黄賊の仲間からの電話は必ず出るように”というものがあるため、しばし戸惑った。 
本当は出なければならないのだが、気付かなかったことにして携帯をポケットの中にそっとしまい込む。
そして――――悠斗からの電話を申し訳ない気持ちで無視をした少年――――未来は、力強く足を前へと進めた。 
だが――――電話は一度切れるものの、何度もかかってきて鳴り止む気配がない。
―――こんなに電話がかかってくるっていうことは・・・何か大切な用事でもあんのか?
―――・・・いや、悠斗自身に何かあったのなら、悠斗本人から電話がくるはずねぇか。
―――だったら、そんなに心配する必要はねぇかな。
一度は電話に出ようかと躊躇するが、冷静になって考えそう結論付けた後“やはり出なくていい”と自分に言い聞かせる。
―――まぁ、出なくていいよな。
―――今からの用事が終わったら、すぐにみんなのもとへ駆け付けよう。
そしてまたしばらく電話を放っておくと、今度は違う音が携帯から鳴り響いた。 その音がメールのものだと分かると、再び携帯を取り出し確認する。
―――また悠斗・・・か。
分かり切っていた相手に軽く溜め息をつき、内容を開いた。 『未来、電話に出て。 今はどこにいるの? 場所だけでもいいから、俺に教えて』
未来はメール画面を数秒見つめ、もう一度携帯をポケットの中にそっとしまい込む。

―――・・・ごめんな、悠斗。
―――ここで教えて悠斗がみんなに連絡でもしたら、みんなはユイの命令をすっぽかして、俺のところへ来ちまうかもだろ。

幼馴染からの心配してくれる優しい気持ちを受け取りながらも、未来は連絡を全て無視した。
それはもちろん結黄賊の仲間には今の件を優先させてほしいし、入院中である悠斗にも迷惑をかけたくなかったからだ。
だったら適当に嘘をついて返信してもよかったのだが、それだけは未来にとって許せなかった。 

そして――――指定された路地裏へと到着する。 そこには既に一人の男が立って待っており、思わず息を呑み身を構えた。 
人が通らず薄暗くて汚い路地にたたずんでいる男を、静かに見据える。 だが彼は――――その場には、とても似合わない男だった。 
身なりはちゃんと整っており、何と言ったって清潔そう。 とても危ない奴には見えない。
―――アイツが・・・おねーさんの言っていた、ライバル・・・なのか?
お姉さんのキャラとこの男からの見た目からして、ライバルに見えるとはとても言い難い。 明らかに、容姿としてはこの男の方がはるかに優れているが――――
「お前か? 俺を呼んだのは」
「・・・」
―――何だ? 
―――コイツ・・・。
軽薄そうな雰囲気を醸し出す男に、自然と違和感を覚える。
―――本当に、コイツに手を出してもいいのか?
―――喧嘩とかしなさそうな奴だし、あまりむやみに手出しはしたくないんだが・・・。
「そうだ、俺が呼んだ」
“どうして俺が呼んだことになっているんだ”と心の中で呟きつつも、男に向かって口にする。
「そうか。 で、俺に何の用だ?」
―――大事になる前に、とっとと終わらせちまうか。
そう思った未来は、前置きもなく突然話を切り出した。
「無茶なお願いだとは思うが、一発殴らせてくれ」
「あ?」

―ボゴッ。

相手の了解を得る前に、渾身の一撃を相手の頬に向かって食らわす。 が――――彼は、倒れていない。
―――なッ・・・どうしてだ!?
―――どうして倒れない!
―――今は確かに、かすってもねぇし頬に命中したはず・・・!
「いってぇ・・・」
男はその場に立ったまま、殴られたところを優しくさすりながら痛みに耐えている。
―――・・・くそ、こうなったら!
覚悟を決め、何度も何度も殴り男に食らい付いた。 だが――――相手には、無力化して倒れる気配は一切ない。 未来の攻撃は、全て当たっているのは確かなのに。
―――どうして・・・どうして効かないんだよ!
―――いや・・・それ以前に・・・。
そしてなおも攻撃を続けたまま、ふとあることに気付く。 それに気付いてしまったせいで――――未来は一瞬にして、とてつもない不安と恐怖に襲われた。

―――どうして・・・どうしてコイツは、俺にやり返してこないんだ!


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